碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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大和ハウスCM「ここで、一緒に」2020篇の批評性

2020年01月14日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

大和ハウス工業「ここで、一緒に」2020篇

 祭りのあと語る、上質な批評性

 

東京オリンピックの年になった。10年近く続いている、深津絵里さんとリリー・フランキーさんの「夫婦物語」も、今回はこの話題を扱っている。

夫は記者としてオリンピックやパラリンピックの競技を体験取材し、妻もプールで泳ぎはじめた。それでいて、「がんばれニッポン!」「私たちも応援してます!」みたいな力の入れ方をしないのが、このシリーズCMの素敵なところだ。

2人が静かに語るのは、「祭りのあとの寂しさ」であり、「終りから始まる何か」である。世の中の動きを知りながらも、流行に踊らされたり、狂騒に巻き込まれたりはしない。大切なのは、「その後」も続いていく日常なのだ。

もちろん、オリンピックはまだ始まってもいない。しかし間もなく、この国はワンチームならぬ、ワンカラ―に染まっていくはずだ。そう思った時、一見ソフトな内容のCMに込められた、上質な批評性がじわりと効いてくる。

(日経МJ「CM裏表」2020.01.13)