碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドラマ「M」 田中みな実の確信犯的キワモノぶり

2020年06月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

M 愛すべき人がいて

確信犯的 田中みな実の怪演

 

第3話で止まっていた「M 愛すべき人がいて」が先週、ようやく再開された。原作は浜崎あゆみのデビューから成功までの軌跡と、プロデューサーだったエイベックスの松浦勝人との恋愛模様を描いた、小松成美の同名小説。脚本を手掛けるのは鈴木おさむだ。

ヒロインのアユ(安斉かれん)とマサ(三浦翔平)を、そのまま浜崎と松浦だと思っている視聴者はいないだろう。しかし他の女性アーティストとのライバル関係やいじめ、社内の覇権争いなど、「それに近いことはあったかもね」と見る側が想像するのは自由だ。このドラマ、「確信犯的キワモノ」なのである。

そのキワモノ感を一身に背負うのがマサの秘書、姫野礼香(田中みな実)だ。「あしたのジョー」の丹下段平や、「宇宙海賊キャプテンハーロック」の主人公のように、男性の眼帯キャラは珍しくない。だが礼香の「右目の眼帯」には意表を突かれ、笑ってしまった。

しかも田中みな実の異様な存在感。「悪いクスリでもやってるんじゃないか」と心配したくなるトンデモ演技だが、そこは元アナウンサー、やけにセリフがはっきり聞き取れるのが悲しい。

先週、眼帯の秘密が明かされたが、マサへの執着が本格的に爆発するのはこれからだ。リアル浜崎もドラマのアユも吹き飛ばす「女優・田中みな実」。その怪演は誰も止められないか……。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2020.06.17)