碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「パンドラの果実」新機軸のサイエンスミステリー

2022年04月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

ディーン・フジオカ主演

「パンドラの果実」

ありがちな設定の一作と思っていたら…

 

科学捜査物と聞き、ありがちな一作と思っていたので驚いた。「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」(日本テレビ系)は、新機軸のサイエンスミステリーだ。

第1話。ロボット開発会社の経営者が社内の密室で殺害される。死因は呼吸困難だった。被疑者は介護ロボット、LEO(レオ)。何と「私が殺しました」と自白したのだ。

捜査を担当するのは、新設された「科学犯罪対策室」。メンバーは警視正の小比類巻(ディーン・フジオカ)、ベテラン刑事の長谷部(ユースケ・サンタマリア)、そして協力者の天才科学者・最上(岸井ゆきの)だ。

まず、介護ロボットの犯罪というSFチックな設定を、現実にあり得る出来事として物語化していく手腕が見事だった。最先端の科学技術はどこまで進んでいるのか。それを応用した犯罪に、従来の捜査システムで対応できるのか。いわば、このドラマの世界観を視聴者に知らしめた形だ。

次に、「科学に対する認識」という深いテーマにも注目だ。小比類巻は、亡くなった妻(本仮屋ユイカ)の遺体を密かに海外で冷凍保存し、未来に運命を委ねている。そんな彼にとって科学は「希望の光」だ。

一方、科学が人類に対する最大の脅威であることを知る最上は、科学を「絶望の闇」と考えている。この2人の対比が、今後の物語展開に奥行きを与えていくはずだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.04.27)