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ハワイ島 2013
「日刊ゲンダイ」に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」で
振り返る2013年のテレビ。
こちらも何とか10月まで来ましたが、もう大晦日ですね(笑)。
2013年 テレビは何を映してきたか (10月編)
「ボクらの時代」 フジテレビ
映画「そして父になる」の是枝裕和監督と主演の福山雅治、そして共演のリリー・フランキーが、フジテレビのトーク番組「ボクらの時代」(日曜朝7時)に登場した。
映画の公開前後に、出演者や監督がメディアに露出するのは当たり前になっている。しかし、視聴者はゲストと称する彼らを見ても、「ああ、またか」としか思わない。それは「宣伝だから出てやった」という傲慢さや、「観客動員につながる」というソロバン勘定が透けて見えるからだ。
その意味で今回の番組は異色だった。PRうんぬんを超えて彼らの話が興味深かったのだ。まず、無類の清潔・整理好きの福山が可笑しい。居酒屋では飲みながらテーブルをおしぼりで拭いている。自分の部屋ではテレビのリモコンの定位置も守る。仕事以外でストレスを溜めないための努力だが、神経質に聞こえないところが実に福山らしい。
また是枝監督の少年時代。働く母親の姿を見て、「グレてなんかいられない」と思ったという話も、リリー言うところの「おだやかな映画監督」らしいエピソードだった。
この番組の良さは、あえて司会者を置かずに、出演者たちの自然な会話を大事にしていることだ。それに、うるさい「話し言葉のテロップ表示」もない。トーク番組のキモはテーマとキャスティング。中身のある人間の話には誰もが耳を傾ける。
(2013.10.01)
「ファミリーヒストリー」 NHK
俳優やタレントの家族の歴史をさかのぼるドキュメンタリー番組「ファミリーヒストリー」。昨年の「浅野忠信編」などが評判を呼んだこともあり、この秋、レギュラー(金曜夜10時)となった。
先週は今田耕司編だ。母方と父方、それぞれの曾祖父までリサーチが行われていく。軸となっているのは今田の母・良子さんのヒストリーだ。パラオで育ち、戦争で引き揚げてきた経験をもつ。では、なぜ祖父母はパラオにいたのか。それを探っていくと、戦前の庶民の生き方が見えてきた。
戦況の悪化でパラオから引き揚げることになった幼い良子さん。母親と2人で乗るはずだった貨客船は米軍の攻撃で沈没。自分たちの船は奇跡的に横浜へたどり着く。後年、必死で自分を守ってくれた母親が、実は「育ての母」だったことを知る。
今田の父方の曾祖父は大阪で炭屋を営んでいた。だが、その息子である祖父は東京で僧侶となる。ここにもまた今田本人が驚くようなエピソードがあった。自分の存在自体が、人の意思だけでなく様々な偶然で成り立っていることがわかる。
思えば、私たちは自分の両親の生い立ちや子ども時代のことを知らなかったりする。ましてや祖父母となると・・。この番組をきっかけに、家族の話に耳を傾けてみるのもいいかもしれない。それは自分自身を知ることにつながるからだ。
(2013.10.08)
「独身貴族」 フジテレビ
最初にタイトルを知った時、「まずいなあ」と思った。フジテレビの新ドラマ「独身貴族」(木曜夜10時)である。独身貴族って半分もう死語じゃないのか。もっと言えば、時代とズレているような気がしたのだ。
主演はSMAPの草剛。映画製作会社の社長で経済的にも恵まれており、結婚には否定的だ。一緒に暮らすのは弟の伊藤英明。同じ会社の専務だが、こちらは相当な女好きで現在離婚調停中だ。
このドラマが彼らのバブリーな独身貴族ぶりを描くだけなら、大人が見る必要はない。しかし、思わぬ伏兵がいた。北川景子である。脚本家を目指す彼女の作品を巨匠の名前で映画会社に提出したことで物語が動き出す。
脚本は「アンフェア」の佐藤嗣麻子。映画「ALLWAYS・三丁目の夕日」の山崎貴監督は夫だ。デフォルメされてはいるが、フジテレビが得意とする映画製作の一端を垣間見せている。今後、恋愛が物語の主軸になるにせよ、“お仕事ドラマ”としても楽しめそうだ。
そして何より北川景子のコメディエンヌぶりは一見の価値がある。お嬢様系の役柄もいいが、初主演ドラマだった「モップガール」や本作のような、ちょっとドジだが一生懸命なキャラクターがよく似合う。今回はそこに“メガネっ娘”としての魅力も加わった。同世代の綾瀬はるか、堀北真希を追撃するチャンスか。
(2013.10.15)
「ドクターX~外科医・大門未知子~」 テレビ朝日
この秋のドラマレースで目を引くのが、テレビ朝日“シリーズ軍団”の活躍だ。初回が19・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の「相棒」。今期最高の22・8%を記録した「ドクターX~外科医・大門未知子~」。さらに23時台の「都市伝説の女」も8・4%の高視聴率で始まった。
この3本に共通するキーワードは「進化」だ。前シリーズのいいところを継承しながら、視聴者を飽きさせない工夫を忘れない。その好例が米倉涼子主演の「ドクターX」である。
まず新たな舞台の設定だ。前回の帝都医大付属病院の分院から本院へ。これは「半沢直樹」が大阪西支店から東京本部に異動したようなものだ。これにより大学病院“本店”ならではの権力闘争も描けるようになった。
次に新キャラクターの投入だ。外科統括部長に西田敏行。映画「釣りバカ日誌」の浜ちゃんもいいが、西田はアクの強いヒール役も実に上手い。そして内科統括部長は三田佳子だ。現在72歳の三田が58歳の敏腕女医を堂々と演じている。出てくるだけで画面が豪華に見えるのはさすが大女優だ。
次期院長の座をめぐって対立するこの2人。いわばハブとマングースの戦いだが、その暗闘が激しいほど、「私、失敗しないので」とマイペースで患者の命を救っていく米倉が際立つ仕掛けだ。まさに座長芝居である。
(2013.10.22)
「サンデースクランブル」 テレビ朝日
27日のテレビ朝日「サンデースクランブル」に出演した。テーマは、みのもんた問題。前日の土曜に行われた記者会見を踏まえ、この件を多角的に考えてみたいということで呼ばれたのだ。
冒頭、会見の印象を聞かれた武田鉄矢さんは「痛々しくてお気の毒」と金八先生の優しさでコメント。私は70分の映像を全部見ていたので、「見事な座長芝居、ワンマンショー。ここ一番の大勝負での言葉の使い方を含め、うまかった。これでミソギを終えたと思っているのでは」と答えた。
次に番組の降板に関して、テリー伊藤さんは以前から降板不要とおっしゃっていたが、私はそうは思えない。「自らの名前を冠した番組で、事件や不祥事に対して白黒つけてきた。その影響力を考えると、やはり公人。一般のおとうさんとは違う責任がある」と述べた。
実は、会見での発言でとても気になる部分があった。報道番組は降りるがバラエティーは続ける。その理由は「政治や年金問題を斬ることはないから」と言うのだ。これはおかしい。政治や年金をバラエティーならではのアプローチで問うことは可能だし、行われている。発言はバラエティー全体を見下したものではないのかと指摘した。
今回の降板、息子の問題はきっかけである。長年の“負の蓄積”を清算する時がきたのだと視聴者にはわかっている。
(2013.10.29)