碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「MIU404」アンナチュラルの 最強トリオが放つ剛速変化球

2020年07月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「MIU404」

アンナチュラルの

“最強トリオ”が放つ剛速変化球

 

タイトルの「ミュウ・ヨンマルヨン」は、第4機動捜査隊に所属する伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)のチームを指すコールサイン。事件発覚後、すぐに展開される「初動捜査」という短期決戦が彼らの任務だ。

野性のカンと体力の伊吹。理性と頭脳の志摩。対照的でありながら、内部に葛藤を抱えることでは共通している、魅力的なキャラクターだ。

扱われる事件はさまざまだが、このドラマのキモは、いわゆる謎解きやサスペンスだけではない。事件を通じて2人が遭遇する、一種の「社会病理」を描くことにある。

たとえば、警察への「イタズラ通報事件」。駆けつけた警察官を相手にリレー形式で競走していたのは、廃部になった陸上部の高校生たちだった。背後にあるのは若者の薬物問題と、ひたすら組織(ここでは学校)を守ろうとする隠蔽体質だ。

また外国人による「コンビニ強盗事件」では、外国人留学生や研修生を安価な労働力として使い捨てにする、この国の闇に迫っていた。「みんな、どうして平気なんだろう」と言う伊吹。「見ないほうが楽だからだ。見てしまったら、世界がわずかにズレる」と志摩。綾野と星野のマッチングが生きている。

脚本・野木亜紀子、プロデューサー・新井順子、そして演出が塚原あゆ子という「アンナチュラル」の最強トリオが放つ、剛速の変化球だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2020.07.28)


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