碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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“大人のニュアンス”満載のドラマ「深夜食堂」

2011年12月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV 見るべきものは!!」。

今回、取り上げたのはTBS系のドラマ「深夜食堂」です。


一本の映画を見たような充実感がある
TBSのドラマ「深夜食堂」


大化けした「家政婦のミタ」(日テレ)も、若い衆が見ている「私が恋愛できない理由」(フジ)も結構だけど、大人のオトコが通う“お店”ではない。

そんな迷える者たちを温かく迎えてくれるのが「深夜食堂」(TBS系)だ。昨年に続く新シリーズは、より熟成された大人の味になっている。

先週の「白菜漬け」は店の常連である女性シナリオライター(市川実和子)のお話だ。ドラマプロデューサーとの不倫愛、スキャンダル化、そして別れと再出発が描かれる。

しかし主な舞台はあくまでもマスター(小林薫)がいる店の中である。

小林は原作漫画に出てくる主人公より少し硬派な雰囲気。凄みとやさしさが共存する中年男を、抑制の効いた芝居で見せている。NHK「カーネーション」の父親役と併せて目下絶好調だ。

そこにゲイのおじさま・綾田俊樹(上手い)やタクシー運転手の蛍雪次朗(好演)なども加わり、“大人のニュアンス”満載のドラマとなっている。

脚本は映画「マイ・バック・ページ」の向井康介。「変わらないことは変わることより難しい」なんてセリフが憎い。

演出は小泉今日子が主演した映画「毎日かあさん」の小林聖太郎監督だ。男女の腕だけで見せるベッドシーンなど映像にも工夫がある。

30分とはいえ1本の映画を見たような充実感。つい白菜漬けで一杯飲みたくなった。

(日刊ゲンダイ 2011.12.05)


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