M ずっと続けてるっていうのが、
いちばんいいことですよ。
L こないだカメラマンの立木義浩さんも
言ってました。
長く続けるのがいいことだって。
M 長く続けないとわからないことがあるからね。
みうらじゅん×リリー・フランキー「グラビアン魂」
『週刊SPA!』2022.04.19/26号
M ずっと続けてるっていうのが、
いちばんいいことですよ。
L こないだカメラマンの立木義浩さんも
言ってました。
長く続けるのがいいことだって。
M 長く続けないとわからないことがあるからね。
みうらじゅん×リリー・フランキー「グラビアン魂」
『週刊SPA!』2022.04.19/26号
「メンタル強め美女白川さん」
ストレスとは「闘う」のではなく「かわす」
昨年夏に放送された、伊藤万理華主演の深夜ドラマ「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)。その主人公の同僚を演じたのが井桁弘恵だ。さっぱりした性格の美人OLがよく似合っていた。
先週から始まった「メンタル強め美女白川さん」(同)は、井桁の民放連ドラ初主演作だ。コメディータッチでありながら働く女性に有効な「ストレスと向き合うためのヒント」が満載のドラマになっている。
思えば、職場の人間関係こそ最大のストレスかもしれない。特に若い女性たちは大変だ。日々、同性の妬みや嫌み、マウントと向き合っている。
いつも笑顔の営業事務、白川桃乃(井桁)も例外ではない。挨拶を無視されたり、悪口を言われたり、いただき物のお菓子が配られない「お菓子外し」に遭ったりもする。
だが、白川さんは動じない。「受け取る必要のないストレスは、受け取らない」からだ。モットーは「私は私、可愛く強く!」。アッパレな自己肯定感だ。初回で最高のセリフは「失礼な人間の美意識とか信用するに値しなくないですか?」だった。
うーん、これってなかなか見事な思考法ではないか。白川さんの強さの秘密は、ストレスと正面から「闘う」のではなく、ストレスを柔軟に「かわす」ことにある。
初主演でも力まない井桁だけでなく、同僚役の野呂佳代が抜群にいい。深夜の助演女優賞だ。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.04.13)
2022.04.12
大丈夫、
心配するな、
なんとかなる
伝・一休禅師の言葉
NHK BSプレミアム
『傑作か、それとも・・・京都大徳寺・真珠庵での格闘』より
読んでも忘れる。
忘れるがゆえにもう一回読むことができる。
そのように再読できるというのが、
本のもっているちからです。
長田 弘 『読書からはじまる』
『カムカムエヴリバディ』が、ついに幕を閉じました。
「ああ、本当に終わっちゃったんだなあ」という寂しさを抱える人は少なくないと思います。
また、その「不在」は、これからじわじわと効いてくるのかもしれません。
それくらい、今回の朝ドラには見る側を惹きつけるものがあり、特に最終週は見事でした。
最たるものが、15分間の「構成」です。
最終週では、月曜から木曜まで、AI(あい)さんが歌うオープニングの前と後で、2つの「別の時代」の物語が同時進行していったのです。
逆転したのは、金曜の最終回だけでした。
オープニング前の部分は、2022年から25年。そして、後の部分は2004年。
20年近い「時差」のある話が、何の違和感もなく共存していました。
しかも、どちらも「奇跡」と呼びたくなるような展開でした。
2004年のほうは、これまでの流れの「最前線」であり、岡山でジャズフェスティバルが開催された、クリスマスの出来事です。
この日に起きたことは、どれも「奇跡」と呼びたくなるようなものばかりでした。
しかし最終週は、アニー・ヒラカワこと安子・ローズウッド(森山良子)と、娘のるい(深津絵里)の再会に尽きます。
ラジオの生番組に出演していたアニーが、自分の過去を問われる中で、るいに対する思いを日本語で語りはじめたのです。
アニーは、やはり安子でした。
「若かった私は自分の気持ちばかりで、大切なことを見失っていました。幼い娘の胸の内を、本当はわかっていませんでした」
やがて岡山弁になっていく安子。
「るい! るい! お母さん、あれからなんべんも考えたんよ。なんでこげなことになってしもたんじゃろて。わたしゃ、ただ、るいと2人、あたりめえの暮らしがしたかっただけじゃのに」
自分には、娘の前から姿を消すことしか出来なかった。それが唯一の「詫び方」であり、「祈り方」だったのだと。
「おいしゅうなれ、おいしゅうなれ、おいしゅう(絶句)……るい!」
ここまでの安子の言葉を聴いていた、るい。
黙ったまま、その表情だけで、驚きから母に対する揺れる思いまでを表現する、深津さんが素晴らしい。
そして、ついに立ち上がり、声をあげます。
「お母さん、お母さん、お母さん」
その一方で、ひなたの「アニー追跡劇」が続きました。関空まで行きながら会えず。落胆して岡山に戻る、ひなた。
そして、フェスティバル会場の前に立つ、アニーを発見。逃げるアニー。追う、ひなた。
アニー、いえ安子にとって思い出深い「神社」まで来て、つまずき、崩れ落ちてしまいます。
遥か昔、「稔さん!」と呼びかけた場所で、「るい!」と娘の名を呼ぶ安子。
ひなたは、足を痛めた安子を背負って会場へ。安子はついに、るいとの再会を果たします。
るいは、歌っている途中でステージを降り、ゆっくりと安子に近づき、抱きしめます。
「お母さん……」
「るい……」
「I Love You」
母と娘は互いに許し合います。
瞬間、一度は閉ざされた扉が開き、少女時代のるいに笑顔が戻ったイメージ。
安達もじりさんによる、このシーンの演出も見事でした。
無駄な動きや言葉を排し、2人の気持ちだけに寄り添うものでした。
翌年、再び来日した安子は、勇にアメリカに渡ってからの話を聞かせます。
そして、映画『サムライ・ベースボール』は、稔さんの夢の実現だと言い、その言葉を思い浮かべました。
「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる。僕らの子どもには、そげな世界を生きてほしい」
安子にとって、ようやく、そんな時代が来たんですね。
一方、2022年。なんと、ひなたは海外で活躍するキャスティング・ディレクターになっていました。祖母・安子の跡を継いだような形です。
老年になった、るいとジョーは、岡山のジャズ喫茶を受け継ぎ、経営しています。その落ち着いた姿に和みます。
そして、ひなたは、NHKの制作者から、24年度の「ラジオ英会話番組」の講師を依頼されました。
ひなたが一人で訪れたのは、懐かしい撮影所。
偶然会った、伴虚無蔵(松重豊)が声をかけました。ひなたの「迷い」を見抜いたのです。
「おひな。そなたが鍛錬し、身に付けたものは、そなたの一生の宝となる。されど、その宝は、分かち与えるほどに輝きが増すものと心得よ」
やがて、ひなたがマイクの前に座る日が来ました。
目の前にいるのは、一緒に講師を務めるウイリアム・ローレンス(城田優)です。
8日(金)の最終回。
画面では、ラジオ放送が開始された時のアナウンサーが、マイクに語り掛けています。1925年のことです。
「あー、あー、聞こえますか? JOAK、こちらは東京放送局であります」
そして、100年を経て、ひなたが講師となる英語講座のスタートです。
ウイリアムが語り始めました。
「A Long time ago, at the same time as Japanese radio broadcasting began, a baby girl was born.」(むかしむかし、日本のラヂオ放送開始と同時に誕生した女の子がおりました)
「その女の子は、戦争の真っただ中に、女の子を産みました」
安子と、赤ちゃんだったるいの映像。
「その女の子は、高度経済成長期の真っただ中に、女の子を産みました」
走る東海道新幹線。るいと、赤ちゃんだったひなたの映像。
「これは、ある家族の100年の物語です」
2025年の春。ひなたのラジオ講座は「レッスン112」で終了しました。
撮影所を訪れたひなたは、そこで講師のウイリアムに出会います。
終わってしまったラジオ講座の話になった時、ウイリアムが言いました。
「あなたの作成したテキストはすばらしい」
ラジオ講座の素材となった「100年の家族の物語」を書いたのは、ひなただったのです。
そう、ここで講座最終回の「レッスン112」と、ドラマの最終回である「第112回」が、ピタリと重なってきます。
このドラマの物語全体が、いわば、ラジオ講座「ひなたのサニーサイドイングリッシュ」の中身だったことが判明したのです。
いやはや、あまりにも心憎い「しつらえ」に、驚くと共に感心するばかり。
しかもこの時、ひなたは、ウイリアムが自分の初恋の相手である、かつての「ビリー少年」であることを知りました。
長い年月を経ての、初恋の人との邂逅。
これから2人がどうなっていくのかはともかく、なんとも「幸福な結末」です。
いえ、ひなただけでありません。
安子にとっても、るいにとっても、さらにこのドラマに登場したどの人物にとっても、それぞれの「幸福な結末」がありました。
それは、日々を懸命に生きる人たちへの「優しい励まし」となったのではないでしょうか。
3か月間、見つめ続けた100年の物語。安子に、るいに、ひなたに、感謝です。
そしてキャストはもちろん、脚本の藤本有紀さん、演出チーフの安達もじりさんをはじめとする制作陣に、大きな拍手を。
NHK「サタデーウオッチ9」
番組がもてなすべきは
ゲストではなく視聴者だろう
新番組を始めるなら、はっきりと示すべきことがある。番組の「ウリは何か」だ。特に第1回では、他局や自局に存在する同ジャンルの番組との違いを鮮明にする必要がある。2日(土)夜にスタートした「サタデーウオッチ9」(NHK)はどうだったのか。
司会は赤木野々花アナウンサー。古舘伊知郎と組んだ「日本人のおなまえ」や谷原章介との「うたコン」など、エンタメ系のイメージが強い。赤木の抜擢には“カジュアルな報道番組”といった狙いがあるのだろう。冒頭の挨拶でも「ホットなニュースをより深く、より分かりやすく」伝えると宣言していた。
初回のゲストは香取慎吾だった。驚いたのは、ウクライナ情勢から経済やスポーツまで、全てのコーナーでコメントを求めていたことだ。もちろん、ウクライナ問題では防衛研究所の専門家の解説がメインだったが、全体がゲストに対するプレゼンのように見える。
中でも「推しプレ!」のコーナーは香取が話しやすいアートがテーマで、その“おもてなし感”が気になった。番組がもてなすべきはゲストではなく視聴者だろう。
しかも、番組の最後で香取が出演する新番組「ワルイコあつまれ」が紹介された。つまり、「チコちゃんに叱られる!」などでも目につく、番宣ゲストだったのだ。これが新たな報道番組の“ウリ”でないことを祈る。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.04.06)
北海道で放送された、
ユニークな「トークセッション」
『ミステリと言う勿れ』だけじゃなかった、
冬ドラマの「佳作」(2)
「家族」という存在
思えば、奇抜な設定のドラマだった。3月25日に幕を閉じた、「妻、小学生になる。」(TBS系)である。しかし、その奇抜さには意味があった。「家族」とは何かという問いかけだ。
10年前、新島圭介(堤真一)は、妻の貴恵(石田ゆり子)を事故で失った。それからは娘の麻衣(蒔田彩珠)との2人暮らしだが、どちらも生きることに無気力になっていた。良き妻、良き母だった貴恵への依存度が高すぎたのだ。
ある日、父娘の前に見知らぬ小学生、白石万理華(毎田暖乃)が現れる。しかも、自分は「新島貴恵」だと主張するのだ。真相としては、貴恵が万理華の体を借りる形で一時的に現世に戻ったことになる。やがて来る2度目の別れは必然だった。
最終回では、万理華の姿をした貴恵との「最後の一日」が描かれた。だが、それは特別なものではない。一緒に朝食を作り、食卓を囲む。3人で麻衣の洋服を買いに出かける。あくまでも「日常」だ。けれど、家族で過ごす日常がどれほど愛しいものなのか、じわりと伝わってくる。
東日本大震災を経験したことで、また今も続くコロナ禍の中で、私たちはごく当たり前の生活のありがたさを知った。また最も身近な存在である家族の大切さも。
特に最終回には、印象に残る言葉がいくつも埋め込まれていた。たとえば貴恵が夫に言う。
「(これからも)思いもよらないことがあるかもしれない。いろんな幸せをたくさん見つけてね」。さらに「あなたが隣りにいてくれて、本当に幸せだった」。そして娘には「生まれてきてくれた瞬間から、ママをいっぱい幸せにしてくれたの。今でも麻衣にはそういう力がある」。
こうした場面を成立させていたのが、“小さな大女優”毎田だ。朝ドラ「おちょやん」で見せた達者な演技が一層進化している。毎田の中に石田が入っているとしか思えないほどだった。いわば、もう一人の「主役」だ。
人生は誰にとっても永遠ではない。人は結末の見えない有限の時間を生きている。その時間の使い方の中に「生きることの意味」を見出せるのだと、このドラマは伝えていた。滋味あふれる佳作だったと言っていい。
(しんぶん赤旗「波動」2022.04.04)
『ミステリと言う勿れ』だけじゃなかった、
冬ドラマの「佳作」(1)