ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

間接リウマチに新薬登場

2018-08-21 10:42:02 | 
手足の関節が腫れて痛む間接リウマチは、進行すると関節が変形して日常生活に支障をきたし、関節破壊まで進む場合もありますが、治療効果の高い新しいタイプの薬剤が充実してきたようです。

関節は関節包という袋に覆われており、その内側に張られている滑膜が増殖し、炎症を起こすことで関節が腫れ痛むのが関節リウマチです。発症する部位は手、手首、足、足首、膝、脚の付け根、肩、首などに出ます。

厚生労働省研究班報告によると、罹患者は71万人いるとされ、女性は男性より3倍罹り易いとされています。

私の身近なところでは亡くなった叔母がかなり若いころから発症し、当時は自己免疫疾患ということもよく分からず、当然治療薬もありませんでしたので、ほとんど歩けなくなるまで症状が進んでしまいました。

このような症状が現れる理由として、本来自分の体を守るために細菌やウイルスなどを攻撃する免疫に異常が生じ、滑膜を増殖させ骨や軟骨を攻撃してしまうと考えられています。いわば免疫が暴走して自分自身を攻撃している状態といえます。

関節リウマチの診断は、関節などの症状の表れ方と血液検査やX線検査の結果を合わせておこなっています。診断が確定したら治療計画を立てますが、発症から1~2年のうちに急速に進行(悪化)してしまうことが多く、期限を区切って病状を評価しながら治療薬を見直すことになります。

関節リウマチの治療で使用される薬剤は、免疫の暴走を抑える働きが中心となり、第1選択となる薬剤が、国内では1999年に承認されたメトトレキサート(MTX)という内服薬です。診断されたら原則としてまずMTXを服用するということで、患者の7~8割はMTXが処方されているようです。

新たに発症した患者なら5~6割がこのMTXだけで寛解(日常生活に支障がない程度まで症状が十分抑えられた状態)か、寛解に近い状態まで到達できるとされていますが、残りの4~5割はMTXを最大量まで増やしても。あるいはその過程で口内炎や吐き気などの副作用で十分な量は服用できなくなり、寛解を達成できていません。

それでも第二段階の治療で効果を得られたりする薬剤が登場し、その一つが生物学的製剤です。MTXは広く免疫の活動全体を抑えることで暴走を抑えるのに対して、生物学的製剤は特定の物質の働きをピンポイントで抑え、その分抑え方も強力になります。

ターゲットとなる物質ごとに、TNF阻害薬、IL-6受容体阻害薬、T細胞共刺激分子阻害薬の3種類が開発されています。こういった薬剤の詳細は省略しますが、関節リウマチも治療薬がそろい、寛解を目指す治療から完治もできる病気になって来たといえるようです。


自己免疫性膵炎の原因究明

2018-08-19 10:41:30 | 健康・医療
国が指定している難病の一つである「自己免疫性膵炎」の原因の一端が分かったと、京都大学の研究グループが発表しました。

患者本人の抗体が、膵臓の細胞周辺にある特定のタンパク質を攻撃していることを突き止め、新しい診断法や治療法の開発につながる成果と期待されています。

自己免疫性膵炎の患者は国内で推定5千~1万人とされており、患者本人の免疫システムの異常で膵臓が腫れ、肝硬変や糖尿病を引き起こすほか、画像診断で似た症状の膵臓ガンと誤診され手術されるケースがあるようです。

2014年難病指定されましたが、発症の仕組みは不明でした。この病気は胆汁が十二指腸に流れにくくなり、閉塞性の黄疸を生じることが多いのですが、腹痛は感じないか軽いことが多いためなかなか診断がつかないようです。糖尿病の発症や悪化がきっかけとなり診断されることもあり、まれに急性膵炎を伴うことがあるとされています。

研究グループは、患者から抽出した抗体を投与したマウスで、ヒトと同様の膵炎が発症することを確認しました。抗体が膵臓内の細胞の周辺組織で接着剤的な役割を持つタンパク質「ラミニン511」を攻撃することを突き止めました。このタンパク質を認識する抗体を人工的に作らせたマウスも膵炎を発症しました。

ラミニンは、細胞外マトリックスの基底膜を構成する巨大なタンパク質で、多細胞体制や組織構築とその維持、細胞接着、細胞移動、細胞増殖を促進し、ガン細胞とも関係が深いとされています。

この基底膜の構成分子は、コラーゲン、プロテオグリカンとラミニンからできていますが、組織中の含有量が少なく形態学的手法ではなかなか存在の確認は難しいものでした。

ラミニンが細胞接着分子であることから、この細部表面のレセプターの探索が行われ、インテグリンという部分がラミニンレセプターであることが分かっています。このあたりは非常に面白いメカニズムがあるのですが、ここでは省略します。

なお現在ではこのラミニンは色々な種類の幹細胞(iPS細胞、ES細胞)などの動物細胞培養の基幹剤として使用されているようです。

研究グループはこの膵炎の患者51人の抗体を調べたところ、26人がラミニン511の抗体を持っており、患者自身の抗体がこのタンパク質を攻撃することが、発症の原因の一つだと結論付けました。

研究グループは、この抗体の有無が新しい診断基準になりうるし、現在はステロイド治療しかないが、副作用の少ない治療法の開発にもつながると期待しています。

この抗体を持った患者が約半数というのは、やや少ない気もしますがこういった抗体検査で患者の診断がつけば、簡単に判定できすぐに適切な治療ができるような気がします。

錦織・大坂奮起を望む 最近のマスターズ結果

2018-08-18 10:39:50 | テニス
今年最後のグランドスラムである全米オープンに向けて、その前哨戦となるマスターズ(ATP-1000)が先週今週と続いて2大会連続で開催されています。

先週がカナダのロジャーズカップで、今週アメリカでウエスタン&サザンオープンとなっており、期待の大坂と錦織はこの2大会に出場しました。ATP-1000ですので、上位選手は出場の義務があり、ほとんどの有名選手が出場しています。

この時点でのランキングは大坂が18位、錦織が22位でしたので、十分勝ち残れる順位となっていました。

先週の大会では大坂の1回戦はスペインのスアレスナバロと対戦しましたが、トップテン近くまで行ったことのあるベテラン選手です。1セットは互いに持ち味を出した接戦となり、タイブレークまで進みましたが惜しいところでこのセットを取られてしまいました。2セットからの挽回を期待したのですが、大坂の悪い癖が出てミスが増え2-6で敗退してしまいました。

錦織の1回戦はオランダの30歳ハーセとの対戦でしたが、錦織の悪いところばかりが目立つ試合となりました。決めに行く強打はネットにかかったり、左右に振ると微妙にアウトになったりと良いところが出ませんでした。1セットは最後にミスが続いて5-7で取られ、2セットはさらに悪くなり1-6で取られて初戦敗退となりました。

この大会はギリシャの19歳チチバスが躍進し、決勝進出を果たしましたが、ナダルが底力を見せて優勝しました。

今週のW&Sオープンでは、大坂はギリシャの31位の選手と対戦しました。1セットはミスが多く大坂の強打にも対応され3-6で取られてしまいました。2セットも先にリードされましたが、大坂にしては珍しく追いつきタイブレークとなりました。残念ながら惜しいところでこれを取られ2回続いて初戦敗退となりました。

錦織の1回戦はロシアの37位の若手でしたが、さすがにこのクラスですと、錦織が強打する前にミスしてくれるという展開で、7-5、6-3と勝つことができました。しかしこのクラスの相手で、1セットは先にリードしていて追いつかれ、最後に突き放すというのはあまり良い展開とは言えません。

2回戦は元3位で膝の故障のため順位を落としているワウリンカとの対戦となりました。彼はビッグ4全盛時代にグランドスラムを2度も優勝している実力者ですが、どこまで復帰しているかが問題でした。

試合が始まると休み明けとは思えない良い動きで、錦織のショットに対応しました。この試合は錦織のミスは少なかったのですが、相手の素晴らしいバックなどで得点され、4-6、4-6で敗れてしまいました。

錦織もこのクラスの選手に勝てない様では、トップテンへの復帰は難しいようです。今月末には全米オープンが始まりますので、大坂と錦織の奮起を望んでいます。


生命の多様性と新陳代謝

2018-08-17 10:34:36 | 自然
生命科学に関わっていると、「人類は不死を実現できないのか」という疑問が時折出てくるような気がします。

秦の始皇帝が不死を求めたという話があるくらい、昔から人は不死を切願してきましたが、そもそも何故わざわざ「命を創って壊す」という一見非合理なことを行っているかという問いになります。

こういった不死を考える場合、「死」の定義が必要となりますが、これもまた難しい点が多くあります。医学的には心臓が停止した場合を死としていますが、これはあくまで医学的なもので人間のような多細胞生物の場合、すべてが死に至るまではかなりの時間差もあるわけです。

人間の意識を支配する脳を考えた場合でも、身体が死んでも脳だけ生かすような技術はあるようで、この脳を脳死の人に移植した場合(うまくいくのかは分かりませんが)、この脳の人は新たな体で生き続けるといえるのでしょうか。倫理的な問題を別にすれば、現代の技術はこういったことも可能なレベルになっているような気もします。

さて生命はなぜ死ぬのかという点では、ヒトや生命にとって「死」の仕組みがもたらす恩恵は「非連続性」の意図的創出といわれています。生物は変化し続ける外界の環境に対して、連続的な変化だけではなく、非連続的なジャンプをすることによって生き残る術を持っています。

環境の変化の方が、生命の固体の中で連続的に起こりうる範囲の変化を超越しているからです。非常に単純化すれば、一つの固体が長時間行きながら子孫を増やすより、短時間で世代交代をしていった方が、環境の変化に対応し種として生き残れる可能性が高いということかもしれません。

生命が何によって非連続性を担保しているかというと「多様性」と「新陳代謝」と考えられています。新しいものが古いものと置き換わっていくという新陳代謝によって、連続的な性質では根本的に対応できないほど変化し続ける外界に対応しています。

違う個体として遺伝子が受け継がれていく生命の仕組みはまさにそのものといえます。種の存続にとっては固体に入れ替わりが必須ですし、固体の存続にとっても細胞の入れ替わりが必須となるわけです。

どのような個体、組織においてもその世界を構成する要素の新陳代謝と多様性による非連続性の創出が、外界が変化する前提での生き残る戦略となるわけです。

例えば細胞で言うと、固体をより良い状態に保つために積極的に引きおこされるプログラミングされた細胞死であるアポトーシスという現象があります。これはまさに。新陳代謝を促すことで非連続性の創出を行い、個体として生き残る方を優先しています。

いろいろ書いてきましたが、生命はなぜ死ぬのかというのは、種として生き残るためといえるようです。

ネコとストレスのはなし

2018-08-16 09:54:09 | 
8月8日がIFAW(国際動物福祉基金)が2002年に制定した「世界猫の日」という記事を見ました。

これは何を意味し何かをやる日なのかはよくわかりませんでしたが、他にもネコの日はいくつかあり、日本では2月22日が一般的かもしれません。まあこういった語呂合わせ程度で特別な日ではないようです。

ペットフード協会の2017年の飼育実態調査によると、完全室内飼い(散歩や外出しない)ネコの割合は74.9%にもなるようです。イヌの場合散歩がほぼ必須であるのに対して、ネコは住環境にもよりますが、狭いワンルームマンションなどで飼われているケースもあり、室内飼いや多頭飼いは猫にとってストレスになるのかもしれません。

トラやヒョウなど単独行動をするネコ科のネコは、もともと社会的な動物ではありませんでした。ライオンやチーターのように群れを形成し、社会的な生態を持つネコ科の種もいますが、人間の近くで暮らしはじめ、家畜化が進んでもネコの基本的な生態は孤独で非社会的といえます。

これはネコの祖先が、ライオンなどではなく単独行動をとるヤマネコと考えられているためです。ネコが家畜化したのはせいぜい約1万年前で、それ以来人間とはつかず離れずの関係を構築してきました。

ネコがヒトと一緒に暮らしたり、多頭飼いを許容したり、集団を形成したりするという生態は、家畜化が進む過程で獲得されたのか、それとも家畜化以前から持っていたものなのかは議論が分かれるようです。

社会性の強いイヌの場合、ヒトや同じイヌ同士の生態を評価する研究は比較的容易ですが、気まぐれなネコの場合はなかなか難しいとされています。

個体差もありますが、ネコが自宅に放置された時間経過で、飼い主に対する反応の変化を調べた研究によれば、放置されていた時間が長いほどネコが社会的な関係性を構築するように振る舞ったようです。

さてネコのストレス評価については、身体の姿勢や各部位の様子などによってスコアが確立されているようです。フルリラックスで体は横寝か仰向けになり、恐怖におびえるストレスフルな状態になると四肢を縮めて震えることになるとしています。

多頭飼いの場合、ネコでは飼育面積によってストレスが変わってくるようです。ストレススコアを使った多頭飼いの研究によれば、1頭当たりの面積が増えればそれだけストレスも軽減されます。

私の家も多頭飼いをしていますが、もともとネコがストレスを感じるとは思えません。どのネコも勝手気ままに暮らしているように見えますし、飼い主との関係もそれぞれのネコが好きなようにくっついたり離れたりしています。

今も私の後ろで伸びて寝ていますので、多分ネコは最もストレスの少ない動物のような気がします。