内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日本と西洋のファースト・コンタクト ― 「キリシタンの世紀」(上)

2019-09-26 21:30:08 | 講義の余白から

 明日の授業は、日本がはじめて西洋と出遭った1543年から1639年までのいわゆる「キリスト教の世紀」がテーマである。
 日本とヨーロッパとの「ファースト・コンタクト」というテーマは、それ自体がきわめて重要なテーマであり、私自身それに大変強い関心を持っている。しかし、この講義では、あくまで幕末から明治維新にかけての「セカンド・コンタクト」の特徴を浮き彫りにし、それを相対化し、16世紀から今日までをカヴァーする世界史的視野の中に位置づけるための準備作業として、「一話完結」で取り上げるにとどめる。
 授業の前半では、フランス語で書かれた日本史の本を何冊か参照しながら、16世紀半ばから17世紀前半の歴史について、学生たちにとっては一・二年での既習事項をざっと復習する。
 後半では、日本語で書かれた歴史書三冊を紹介しながら、日本における「キリスト教の世紀」を世界史的視野の中に位置づける。
 その一冊目は、一昨日昨日紹介した永原慶二の『戦国時代』、二冊目は、渡辺京二『バテレンの世紀』(新潮社、2017年)。
 三冊目は、大橋幸泰『潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆』(講談社学術文庫、2019年。初版、講談社選書メチエ、2014年)。本書は、「キリスト教の世紀」以後がテーマだが、研究対象へのアプローチの方法論がとても明確に提示されていて、学生たちの参考になると思うので是非取り上げたいと思っている。時間が足りるかどうかちょっと心配だが、時間切れになれば、来週にまわすつもり。
 明日の授業の後半では、永原書の「おわりに―日本歴史上の戦国時代」から摘録した数箇所にまず訳を付け、それにじっくりと解説を加えていく。
 摘録箇所は以下の通り。
 「一六世紀は日本がはじめて東アジア世界にとどまらず、ヨーロッパと現実の結びつきをもつことによって、文字通り世界史の一環に連なった時代だということである。」
 「極東の日本はこのときからヨーロッパとアジアが直結した世界史の中に置かれることになった。」
 「国際化の進展が「日本」というナショナルな意識と新しい国家体制への関心をめざめさせてゆく。「天下人」信長・秀吉はその意味で「世界史の中の日本」をはじめて現実にみずからの政治地図に見いだした人物であった。」
 「真に疾風怒濤とよぶにふさわしい変革的な時代の特徴は、先端的な指導層ばかりでなく、その時代の社会を構成するあらゆる身分・階級・階層・集団などが、みなそれぞれに歴史を動かす主体として動き、個性的な役割を果たしてゆくところにある。」
 最後の摘録箇所は、歴史的事実としてまったくそうであったかどうかは措くとしても、この時代を生きたすべての人々への歴史学者永原慶二の愛情が感じられて、心打たれた。