マックス・ミルナー『見えるものの裏側』第三章「影の創造性」の中のレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画論を取り上げている節を今しばらく追っていこう。
レオナルド・ダ・ヴィンチの陰翳論によれば、世界の可視性は光と影との競合の結果として生まれる。この競合には、バロック期のテネブリストたちがそれに与えた悲劇的な性格はない。なぜなら、光が影に完全に勝利することもなく、その逆もまたなく、両者の競合には無限の階梯があるからである。「影はどこまでも暗くもあれば、明るさに向かって無限のニュアンスを見せもする。」ここから、影の暗さをその出処の最も暗いところから徐々に低減させるようにという画家たちへの助言が出てくる。「だから、影をその原因のもっとも近くではもっとも暗く描き、その対極では光へと変容させよ。つまり、闇が無際限な広がりへと化すようにせよ。」
影はまったき闇ではないし、光は影の追放ではない。