年に一、二回、まるで熱病かなにかにかかったかのように、書籍購入熱に取り憑かれる。今がそうである。若い頃からそうであるから、これはもう慢性的な「不治の病」である。買っている間は、一種の興奮状態にあり、「これを買わずしてどうする」という強迫観念に取り憑かれているから、その結果どういうことになるか、そこまで考えが及ばない。
熱が冷めると、机の上にうず高く積まれた書籍の量に愕然とする。それを何十年と繰り返している。馬鹿である。今、仕事机の脇の小机にはもう置き場所がないほどの本並んでいる。やれやれまたか、という思いである。が、それでもやはりそれらの本を眺めていると、日暮れて途遠しの感はひしひしと身に迫る一方、なんか嬉しいんである。もう手の施しようがない。
三年前から新しい症状が現われた。これが急速に深刻の度を増している。電子書籍購入熱である。これは目の前に物理的に量が増えるということがないから、知らぬ間に症状が深刻化しがちである。特に去年あたりから、講義の準備中にちょっと参照してみたい本があると、電子書籍版ですぐに買ってしまうようになった。おかげで準備の速度は格段に増し、密度も飛躍的に高まったことは確かだ。それに、かつては授業中に紹介する本を教室にもっていかなくてはならなかったが、それには量的限界がある。電子書籍にはそれがない。この便利さも症状を悪化させる理由の一つになっている。
まあ、体に悪いわけではないから、経済的・場所的に問題を引き起こさない範囲で、この「病気」とはこれからも仲良くつきあっていく所存である。