帰国を諦め、冬休みはストラスブールで「巣ごもり」すると決めた。すると、無性にあれもこれも読みたくなった。ああ、また書籍購入病が再発してしまった。たかだか三週間の冬休み中にどう考えても読めそうもない量の本をこの数日間で買ってしまった。
毎年、いつと決めているわけではないが、ガリマール社のプレイヤード叢書の新刊を何冊か買う。今回購入したのは、九月に刊行されたダンテ『神曲』全篇の対訳版と強制収容所体験について書かれた作品のアンソロジー L’Espèce humaine et autres écrits des camps の二冊である。
ダンテの方は新訳ではない。Jacqueline Risset の名訳(1985~1990)の再刊である。この対訳版は Garnier Flammarion の対訳叢書に三巻本として収録されていて、それはかねてより所有している。今回の新版の校訂・注は現役のダンテ研究者たちによるものだ。それに二十世紀の十四のダンテ論(但し、イヴ・ボンヌフォアの « Dante et les mots » は2009年発表)が付録として巻末に収録されている。この一冊によって、十四世紀のトスカーナ方言で綴られた原文と二十世紀の美しく輝かしいフランス語訳とで、『神曲』を、地獄篇、煉獄篇、そして天獄篇へと、じっくり味わうだけでも、冬休みを心豊かに過ごすには十分すぎるくらいだ。読みかけたままの Enrico Malato のダンテ伝(Les Belles Lettres, 2017)も書棚から引っ張り出して仕事机の脇に並べた。
プレイヤードのもう一冊の方もどうしても気になる。人類がそれまで知ることがなかった二十世紀の地獄についての、そこから生還した人たちの貴重な証言を読まずに済ませることは、やはりできない。
この二冊以外にも、少なくとも四冊、この冬休み中に少しは読んでおきたい本を買った。
スピノザのエチカの仏訳はいったい幾種類出ているのか知らないが、去年PUFのスピノザ全集中の一冊として刊行されたばかりなのに、今年十月に Flammarion から Maxime Rovere の新訳が出た。左頁が注、右頁が仏訳という構成で、その注を手引として順に読み進められるように配慮されている。
残りの三冊は書名を挙げるだけにする。
十月に刊行された Alain de Libera, Le sujet de la passion. Cours du Collègue de France 2016, Vrin.
十一月に刊行されたばかりの Olivier Boulnois, Généalogie de la liberté, Seuil, « L’ordre philosophique ».
これは新刊ではないが、かねてより読んでおきたいと思っていた Bernard Maginn のエックハルト評伝 Eckhart. L’homme à qui Dieu ne cachait rien, Cerf, 2017 (英語原本は2001年刊)。