ここ一月あまり、毎日のように抹茶を点てて飲んでいる。朝起きてすぐに点てることが多い。特にこれといったきっかけがあったわけではなく、ふと思い立っただけである。
かねてより茶碗と茶筅と茶杓は買ってあった。抹茶はヨーロッパでもひろく愛好されていて、ネットで抹茶そのものも点てるための道具も簡単に安価に入手できる。何の嗜みもなかったが、たまに点てていた。しかし、そのときは、抹茶の品質がよくなかったのか、点て方が下手くそだったからなのか、水がよくなかったのか、美味しいと思ったことがなかった。
日頃煎茶を飲んでいた。今もよく飲む。それに少し飽きてきて、秋口から紅茶を何種類か買って飲んでいた。それはそれで美味しい。アールグレイがずっと好きだった。今はそれと同じくらいロシアンアールグレイが気に入っている。淹れたてに立ちのぼる柑橘系の香りが心地よい。
再び抹茶を点てる気になったのは、抹茶とお湯を茶碗の中で混ぜるときの茶筅の感触と混ぜているときの時間をなぜか味わってみたくなったからである。もちろん点てた抹茶そのものを美味しく味わいたいとも思った。
いざ抹茶を購入しようとネットで探しはじめて、こんなにも種類があるのかと驚いた。値段もそれこそピンきりだ。ヨーロッパ産は当然比較的安い。最初は試しだからと安いのを買った。まあ値段相応といおうか、まずくはないが、それを常飲したいとは思わなかった。
抹茶はやっぱり日本産だよねと、銘柄を絞った。途端に値段が二倍から三倍に跳ね上がる。日本円にして30グラムで2000円前後だ。その何倍もする高級品もある。その分、選択の際の吟味も慎重になるが、いずれにせよ、ネット上の情報に頼らざるをえないから、まずは何種か少量買って試飲してみることにした。
最初に買った「京都産」は失敗だった。一言、不味かった。そもそも京都産という表示はネット上のみで、届いた缶にはどこにも産地表示がない。輸入国はスペインだそうな。二度と買うことはない。
今日届いた別の銘柄は宇治産と缶に明記してある。蓋を開けた瞬間、抹茶の緑の鮮やかさを見ただけで、前品とは品質が違うことがわかる。早速点ててみる。泡立ちがよい。喉ごしもとてもまろやかだ。これなら常飲に堪える。
比較検討のために別会社の同程度の値段の品を注文した。明日届く。自分にとっての定番が決まるまでには、しばらく時間がかかるだろう。その時間もまた楽しからずや。