国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

女重宝記より 文法・解釈編

2018-06-11 19:28:44 | 国語
唐土(もろこし)に蒼頡(さうけつ)といふ人、 人物+、(読点)  一文の主語(~が・~は)
文字をつくり出(いだ)したまふ       「たまふ」尊敬語・作者の蒼頡への敬意
書きいだしたまふ              「たまふ」作者の弘法大師への敬意 
おぼゆるなり               「る」は助動詞ではない。「おぼゆる」で下二段活用連体形
所望しければ、              「しければ」 したところ。已然形+ば ので・から・と・たところ
重ねて申しければ             「申し」謙譲語。道風への敬意
習ひ給へ                 「給へ」尊敬語。道風のある人への敬意。尊敬語の命令形(ください・なさい)

【訳】
文字というものは、中国(=もろこし)のそうけつという人が、鳥の足跡を見てはじめて文字を作り出しなさる(った)。これ以来、文字(=手)を少し書くことを鳥の足跡を学ぶと言うのである。文字には楷書・草書・行書の三種類がある。行書の文字をやわらげて、弘法大師が女性のためにいろはというものを四十七字の仮名として書きだしなさる(った)。これを女文字と言うのである。いろは(の仮名文字)さえ書くことを覚えると、無知の人間でも、歌や本を読んで、昔のことを知り、手紙、書簡を書いて自分の気持ちを伝え、用事をすます。よって、習字のはじめには、まずいろはから書いて習い、後で文章を続け、男文字も覚えるのである。
小野道風という文字を上手に書く人のところへ、ある人が手本を書いてくださいと望んだところ、古い筆を箱に入れて贈りなさった。古い筆が望みではなく、手本のことであると再び申し上げたところ、道風がおっしゃるには、このように古い筆が積み重なるように心を込めて、習いなさいと申し上げられたとのことである。
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女重宝記より 解答編

2018-06-11 19:17:26 | 国語
解答 
問一 蒼頡という人が、鳥の足跡を見て、文字を作り始めたから。
問二 イ
   【参考】いろは歌
  いろはにほへどちりぬるをわがよたれぞつねならむうゐのおくやま
  けふこえてあさきゆめみじゑひもせず
  
  色は匂へど/散りぬるを/我が世誰ぞ/常ならむ/有為の奥山
  今日越えて/浅き夢見じ/酔ひもせず
  どー逆接 ぬる―完了「ぬ」連体形  む―推量「む」連体形(係り結びの結び)  じ―打消推量    ず―打消・終止形
問三 漢字   問四  ととのう  
問五 ア(手本を真似するのではなく、筆が何本もだめになるくらいたくさん書くと良い)
問六 イ・ウ・エ
【参考】  (紀貫之・・・古今集の筆頭撰者。仮名序。土佐日記)
      (正岡子規・・・明治。俳句短歌の革新運動。写生。「歌詠みに与へる書」
      (上田秋成・・・伝奇文学。読み本。「雨月物語」)

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女重宝記より 問題編

2018-06-11 19:09:03 | 国語
次の文章を読んで後の問に答えなさい。

文字といふことは、唐土(もろこし)に蒼頡(さうけつ)といふ人、鳥の足跡をみてはじめて文字をつくり出(いだ)したまふ。これより①手を少し書く事を鳥の足跡を学ぶといふなり。文字に真、草、行とて三色あり。行文字をやはらげて、弘法大師、女のために、いろはといふ事を、(   )字の仮名に書きいだしたまふ。これを女文字といふなり。いろはさへ書き覚ゆれば無智の者も歌、草子をよみて、むかしの事をしり、文(ふみ)玉章(たまづさ)を書きてわが心を通じ、用を② とゝのふ。よって手習ひのはじめには、まづいろはより書き習ひ、後には文章をつらね、男文字をもおぼゆるなり。
小野道風(おののとうふう)といふ能書(のうじょ)の方へ、ある人手本を書きて給はれと所望しければ、古筆を箱に入れてやられけり。古筆は望みにあらず、手本のことなりと重ねて申しければ、道風のたまひけるは此(この)ごとく古筆の積る様に心に入れて、習ひ給へと申されけるとなり。
                   「女重宝記」より
(注)真、草、行・・・漢字の書体で、それぞれ楷書、草書、行書のこと。  文玉章・・・手紙、書簡。  能書・・・文字を上手に書くこと。またその人。

問一 赤い部分①「手を少し書く事を鳥の足跡を学ぶといふ」ようになったのは何故か。三〇字以内の現代語で説明しなさい。
問二 (   )に入る最も適当な数字を選び、記号で答えなさい。
  ア 三十一   イ 四十七  ウ 五十   エ 五十一
問三 「男文字」とはここでは何を意味するか。
問四 赤い部分②「とゝのふ」の読み方をすべて平仮名で書きなさい。
問五 本文では字が上手になるためにどうすればよいと書いてあるか。せつめいしなさい。
問六 この本は江戸時代の元禄時代に書かれたものである。この時代の人物としてふさわしいものを次の中からすべて選び、記号で答えなさい。
ア 紀貫之  イ 松尾芭蕉  ウ 近松門左衛門  エ 井原西鶴  オ 正岡子規  カ 上田秋成

問五 本文では字が上手になるためにはどうすることが良いと言っているか、最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。
ア たくさん書くこと  イ 良い手本を手に入れること  ウ むかしの事を知ること  エ 弘法大師を信仰すること

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