●大手予備校時代に東大現代文を担当したので東大合格者は何人も出しているが、特別に印象に残った生徒さんがいる。
●オタクだった。『ひぐらしのなく頃に』を教えてくれたのは彼だった。
●武道系の部活の部長だった。「合気の使い手になりたいんですよぉ」と語っていた気がする。
●学校に影響力を持っていた。月に2回高1、高2を教えにとある高校へ行っていたのだが、国語屋稼業先生の授業を高校3年生でも受講したいとのリクエストで高3東大現代文クラスの設置が決まる。
●クラス全体の雰囲気を作る生徒だった。適切な質問、妥当なミスなどするなど、彼を中心に講義するとクラス自体の成績も上がっていった。10名前後のクラスで東大5名京大1名などの戦績だったはず。
●徹底的に研究する生徒だった。一回、講義で彼の解答を見て驚愕したことがある。ほぼ私の解答例と同じだったのだ。なんでも過去の(高1高2も含めて)私の解答傾向を調べて6時間近くかけて作ったのだそうだ。彼曰く「先生に完璧と言わせたかった」とのこと。
●東大合格後、後輩に囲まれた彼。「さっきの後輩の中で東大に合格しそうなのいた?」と質問したところ、「合格しないやつはわかりました」とのこと。
「どんな人?」「ぼくに勉強時間を質問した後輩たちです」
関心を持って話を聞いていくと、こんな感じの発言だったと思う。
●「勉強は自分が満足できる量で良いんです。数学1題15分で気がすんだら、その後はゲームしていましたし。不満があるときは現代文1題に6時間かけることもあるわけで」
●こういう生徒さんが合格するんやなと納得。というより、こういう生徒さんが東大合格者だといいなあと思わされた。
●大手予備校最後の一年に彼を教えられたのは僥倖であった。頭の良さに加え、意志と遊び心を持っていた生徒さんだった。
●現在は官僚をされているらしい。彼みたいな人間が官僚をしているのなら、この国も捨てたものでもないなと思えるのである。