小児科医と小児歯科医の学会や各団体代表で構成された「小児科と小児歯科の保健検討委員会」から「おしゃぶりについての考え方」という提言が出されています。元ファイルはPDFで日本小児科医会のHPに掲載されていてどなたでもご覧いただけますが、テキスト部分を全文を引用しますので参考にしてください(資料の表は元ファイルをご覧下さい)。結論は「5」の部分に書かれていますが、なるべくならおしゃぶりをさせない、使う場合でも最低限にしておしゃぶりで手抜き育児をしない、2歳半までにやめさせるようにする、4歳以降も続く時は情緒的な面を考慮して小児科医に相談する、といったどなたにも納得していただける内容になっています。そういえば、うちの子も2番目はおしゃぶり(上は指しゃぶり)していて、おしゃぶりがなくなると大変だったけど、お誕生日だからと言って聞かせたら憑き物が落ちたようにやめられたな。あれは2歳だったか、3歳だったか、、(?)
おしゃぶりについての考え方
平成17年1月12日
小児科と小児歯科の保健検討委員会
はじめに
最近「おしゃぶりは舌や顎の発達を助けて鼻呼吸を促す」という宣伝文句やフォルダーを付けたファッション性が受けてか、乳幼児におしゃぶりを与えている親が多い。また乳児が泣いたときに泣き止ます手段としておしゃぶりを使用している母親をよく見かける。小児歯科医は指しゃぶりほどではないが、おしゃぶりを長期に使用すると乳歯の噛み合わせに悪影響を与えると考えている。子どもを育てる母親からみると便利な育児用品でもある。親子のふれあいが大切な乳幼児期に口を塞いでおいてよいのだろうかという疑問もある。小児科医は胎児も母体内で指しゃぶりしているので、乳児の指しゃぶりは自然の行為であり、それに代わるおしゃぶり行為も当然と理解している。そして言葉を話すようになると自然に取れることが多いので、それほど問題にしていない。こんな背景からおしゃぶりの使用について小児保健の現場で混乱が生じているのも事実である。そこで、小児科と小児歯科の保健検討委員会でおしゃぶりの望ましいあり方について検討を行なった。
1.おしゃぶり、指しゃぶりが咬合(噛み合わせ)に及ぼす影響
おしゃぶりや指しゃぶりと乳歯の噛み合わせとの関係を調べるため、米津は1歳6か月児、2歳児、3歳児、5歳児歯科健康診査に来院した1,120名について調査した(表1、表2)。その結果、2歳児では指しゃぶり(吸指群)で出っ歯(上顎前突)が、おしゃぶり群で開咬が高頻度にみられ、5歳児ではこの傾向がさらに増大したと報告している。今村らは4-5歳の小児432名についておしゃぶり、指しゃぶりと乳前歯部開咬について調査し、おしゃぶり群は指しゃぶり群より軽度だが、年齢が高くなるまで長期に使用すると乳前歯部が開咬となりやすいという結果を得ている(表3)。いずれの調査もおしゃぶりを長期に使用すると噛み合わせに悪い影響を与えることを示している。
2.おしゃぶりや指しゃぶりは何歳ころまで行われているか。
前述の米津の調査の中の「年齢別にみた各種吸啜行動の発現率」によると、おしゃぶりの使用は3歳になると急激に減少する(表4)。これに対し指しゃぶりは4歳頃まで行われている。
3. おしゃぶりの使用年齢と噛み合わせ
おしゃぶりを使用している子どもは、使用していない小児と比較して上顎前突、開咬および乳臼歯交叉咬合の発現率が極めて高い。この傾向は1歳6か月、2歳でも見られるが、止めると噛み合わせの異常は改善しやすい。しかし、乳臼歯が生え揃う2歳半、さらに3歳過ぎまで使用していると噛み合わせの異常が残ってしまう。小児歯科の立場からすると2歳までに止めて欲しいが、現状では3歳過ぎまで使い続けている子どももいる。
4. おしゃぶりの利点と欠点
明確な根拠はないが、一般的に言われている歩き始めから2歳過ぎまでのおしゃぶり使用の利点と欠点をまとめてみた。
利点としては精神的安定、簡単に泣き止む、静かになる、入眠がスムース、母親の子育てのストレスが減るなどが挙げられる。おしゃぶりの宣伝に使用されている「鼻呼吸や舌や顎の発達を促進する」は現時点では学問的に検証されていない。
欠点としては習慣性となりやすく、長期間使用すると噛み合わせが悪くなる、子どもがどうして泣いているのかを考えないで使用する、あやすのが減る、ことば掛けが減る、ふれあいが減る、発語の機会が減るなどが挙げられる。
5-6か月以降の乳児はなんでも口へもっていってしゃぶる。これは目と手の協調運動の学習とともに、いろいろのものをしゃぶって形や味、性状を学習しているのである。おしゃぶりを使用していると手で掴んでも口へ持っていくことができず、このような学習の機会が奪われることになる。親の働きかけに対する声出しや、自分からの声出しもできない。おしゃぶりは一度使用すると長時間にわたり使用する傾向があるので、発達に必要なこのような機会が失われることが気になる。しかしおしゃぶりが、愛着形成を阻害するという意見については学問的根拠はない。
噛み合わせの異常は2歳頃までに使用を中止すれば発育とともに改善される。従っておしゃぶりの害は乳臼歯が生え揃い、開咬や乳臼歯交差咬合などの噛み合わせの異常が存続しやすくなる2歳半から3歳過ぎになっても使用している場合といえる。
5. おしゃぶり使用の考え方
おしゃぶりは出来るだけ使用しない方がよいが、もし使用するなら咬合の異常を防ぐために、次の点に留意する。
① 発語やことばを覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのフォルダーを外して、常時使用しないようにする。
② おそくとも2歳半までに使用を中止するようにする。
③ おしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子どもとのふれあいを大切にして、子どもがして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとし便利性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする。
④ おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣づけないようにするには、③の方法を行う。
⑤ 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談することを勧める。
小児科と小児歯科の保健検討委員会
代表 前川喜平
副代表 高木祐三
日本小児科学会 河野陽一(千葉大学小児科大学院教授)
日本小児保健協会 前田隆秀(日本大学松戸歯学部教授)
日本小児科医会 神川晃(神川小児科クリニック)
日本小児歯科学会 小口春久(日本歯科大学教授、日本小児歯科学会監事)
全国小児歯科開業医会 丸山進一郎(アリスバンビーニ小児歯科)
検討委員 巷野悟郎(こどもの城小児保健クリニック、日本保育園保健協議会会長)
前川喜平(神奈川県立保健福祉大学教授、東京慈恵会医科大学名誉教授)
松平隆光(松平小児科、文京区医師会長)
高木祐三(東京医科歯科大学大学院教授、日本小児歯科学会学術委員長)
井上美津子(昭和大学歯学部小児歯科助教授)
伊藤憲春(ミルク小児歯科、日本小児歯科学会関東地方会幹事)
書記中林雅子(神奈川県立保健福祉大学看護部)
おしゃぶりについての考え方
平成17年1月12日
小児科と小児歯科の保健検討委員会
はじめに
最近「おしゃぶりは舌や顎の発達を助けて鼻呼吸を促す」という宣伝文句やフォルダーを付けたファッション性が受けてか、乳幼児におしゃぶりを与えている親が多い。また乳児が泣いたときに泣き止ます手段としておしゃぶりを使用している母親をよく見かける。小児歯科医は指しゃぶりほどではないが、おしゃぶりを長期に使用すると乳歯の噛み合わせに悪影響を与えると考えている。子どもを育てる母親からみると便利な育児用品でもある。親子のふれあいが大切な乳幼児期に口を塞いでおいてよいのだろうかという疑問もある。小児科医は胎児も母体内で指しゃぶりしているので、乳児の指しゃぶりは自然の行為であり、それに代わるおしゃぶり行為も当然と理解している。そして言葉を話すようになると自然に取れることが多いので、それほど問題にしていない。こんな背景からおしゃぶりの使用について小児保健の現場で混乱が生じているのも事実である。そこで、小児科と小児歯科の保健検討委員会でおしゃぶりの望ましいあり方について検討を行なった。
1.おしゃぶり、指しゃぶりが咬合(噛み合わせ)に及ぼす影響
おしゃぶりや指しゃぶりと乳歯の噛み合わせとの関係を調べるため、米津は1歳6か月児、2歳児、3歳児、5歳児歯科健康診査に来院した1,120名について調査した(表1、表2)。その結果、2歳児では指しゃぶり(吸指群)で出っ歯(上顎前突)が、おしゃぶり群で開咬が高頻度にみられ、5歳児ではこの傾向がさらに増大したと報告している。今村らは4-5歳の小児432名についておしゃぶり、指しゃぶりと乳前歯部開咬について調査し、おしゃぶり群は指しゃぶり群より軽度だが、年齢が高くなるまで長期に使用すると乳前歯部が開咬となりやすいという結果を得ている(表3)。いずれの調査もおしゃぶりを長期に使用すると噛み合わせに悪い影響を与えることを示している。
2.おしゃぶりや指しゃぶりは何歳ころまで行われているか。
前述の米津の調査の中の「年齢別にみた各種吸啜行動の発現率」によると、おしゃぶりの使用は3歳になると急激に減少する(表4)。これに対し指しゃぶりは4歳頃まで行われている。
3. おしゃぶりの使用年齢と噛み合わせ
おしゃぶりを使用している子どもは、使用していない小児と比較して上顎前突、開咬および乳臼歯交叉咬合の発現率が極めて高い。この傾向は1歳6か月、2歳でも見られるが、止めると噛み合わせの異常は改善しやすい。しかし、乳臼歯が生え揃う2歳半、さらに3歳過ぎまで使用していると噛み合わせの異常が残ってしまう。小児歯科の立場からすると2歳までに止めて欲しいが、現状では3歳過ぎまで使い続けている子どももいる。
4. おしゃぶりの利点と欠点
明確な根拠はないが、一般的に言われている歩き始めから2歳過ぎまでのおしゃぶり使用の利点と欠点をまとめてみた。
利点としては精神的安定、簡単に泣き止む、静かになる、入眠がスムース、母親の子育てのストレスが減るなどが挙げられる。おしゃぶりの宣伝に使用されている「鼻呼吸や舌や顎の発達を促進する」は現時点では学問的に検証されていない。
欠点としては習慣性となりやすく、長期間使用すると噛み合わせが悪くなる、子どもがどうして泣いているのかを考えないで使用する、あやすのが減る、ことば掛けが減る、ふれあいが減る、発語の機会が減るなどが挙げられる。
5-6か月以降の乳児はなんでも口へもっていってしゃぶる。これは目と手の協調運動の学習とともに、いろいろのものをしゃぶって形や味、性状を学習しているのである。おしゃぶりを使用していると手で掴んでも口へ持っていくことができず、このような学習の機会が奪われることになる。親の働きかけに対する声出しや、自分からの声出しもできない。おしゃぶりは一度使用すると長時間にわたり使用する傾向があるので、発達に必要なこのような機会が失われることが気になる。しかしおしゃぶりが、愛着形成を阻害するという意見については学問的根拠はない。
噛み合わせの異常は2歳頃までに使用を中止すれば発育とともに改善される。従っておしゃぶりの害は乳臼歯が生え揃い、開咬や乳臼歯交差咬合などの噛み合わせの異常が存続しやすくなる2歳半から3歳過ぎになっても使用している場合といえる。
5. おしゃぶり使用の考え方
おしゃぶりは出来るだけ使用しない方がよいが、もし使用するなら咬合の異常を防ぐために、次の点に留意する。
① 発語やことばを覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのフォルダーを外して、常時使用しないようにする。
② おそくとも2歳半までに使用を中止するようにする。
③ おしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子どもとのふれあいを大切にして、子どもがして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとし便利性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする。
④ おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣づけないようにするには、③の方法を行う。
⑤ 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談することを勧める。
小児科と小児歯科の保健検討委員会
代表 前川喜平
副代表 高木祐三
日本小児科学会 河野陽一(千葉大学小児科大学院教授)
日本小児保健協会 前田隆秀(日本大学松戸歯学部教授)
日本小児科医会 神川晃(神川小児科クリニック)
日本小児歯科学会 小口春久(日本歯科大学教授、日本小児歯科学会監事)
全国小児歯科開業医会 丸山進一郎(アリスバンビーニ小児歯科)
検討委員 巷野悟郎(こどもの城小児保健クリニック、日本保育園保健協議会会長)
前川喜平(神奈川県立保健福祉大学教授、東京慈恵会医科大学名誉教授)
松平隆光(松平小児科、文京区医師会長)
高木祐三(東京医科歯科大学大学院教授、日本小児歯科学会学術委員長)
井上美津子(昭和大学歯学部小児歯科助教授)
伊藤憲春(ミルク小児歯科、日本小児歯科学会関東地方会幹事)
書記中林雅子(神奈川県立保健福祉大学看護部)