震災以来、悲しいことや心配事が尽きない中、感動しこころを打つ
話も少なくありません。中でもドナルド・キーン氏の日本永住
決意のニュースは、私たち日本人に感銘と勇気を与えてくれました。
氏は多くの外国人が日本を離れるのを見て残念におもい、震災で
傷ついた日本を励ますために、永住の想いが強まったそうです。
原発事故のさなか、日本に行くと聞き驚いた友人もいたと言います。
似た話が身近にあります。宣教師バーバラさんは、1年半の滞米を
終え3月18日戻ってきました。多くの米人が帰国する中、周囲は
日本に戻るのを危惧したそうです。彼女は4月の石巻行きに参加し、
この13日には岩手の被災地に行く予定です。
キーンさんは、日本人の感動を呼んだことに「少しでも勇気を与え
る事ができたら何よりもうれしい」と語りました。日本文化を愛する
キーンさんは、日本料理も好き、特に京野菜・京料理を好み、その
食べっぷりも良いそうです。ある料理屋の主人いわく「あの外人の
先生は偉い。料理が出たらすぐに温かいうちに食べている。あれが
日本料理のほんとうの食べ方」と感心したと言います。
レシピは作り方でなく食べ方になりますが、今回キーンさんの本を
取りだして読み進むうち、料理屋での逸話が載っていました。
格好の話題とおもい、レシピ在庫の中からお送りします。
ドナルド・キーン(Donald Lawrence Keene)氏略歴
1922年6月18日ニューヨーク生まれ。日本文学研究者。
コロンビア・ハーバード・ケンブリッジ各大学で東洋文学を専攻、
1953年京都大学に留学。’55年~’11年4月まで
コロンビア大学で、助教授・教授・名誉教授を務めた。
「日本文学史」ほか多くの著作がある。’08年文化勲章受賞。
年季の入った料理人は「お客さんの食べっぷりをみて、どのていど味が分る方か察しがつく」・・・
味覚のトレーニング(森須滋郎著)の一節です。レシピの標題もこの本から拝借しました。
料理人が言う食べっぷりとは、ホントの食いしん坊らしい食べ方で、要約すると次のとおりです。
1.料理が出たらすぐに手をつける
ちゃんとした料理屋では作りたての料理を1品ずつ出してくれるので、
熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに味わってほしい。
食べる側は、待ってましたとばかり箸をつけるのがエチケットである。
目の前に料理をいくつもおき会話に夢中なっている客・・これは最低。
2.食器を手に持つ日本の食器は、西洋料理とちがい、手で持つようにできている。
器をテーブルの上や、お膳に置いたまま食べようとすると、首が前にでる。
料理を箸でつまみ口に近づける時、片手で受けたりするのはみっともない。
うつわを手で持てば、背筋をのばしたまま、食べることができる。
・・・時には手づかみでもけっこう
姿のまま出された「かに」「えび」「骨つき肉」などは、上品に箸で食べようとせず、
手づかみでむしゃぶりつく。
3.吸い物のいただき方
吸い物椀のふたをあけ、仰向けにしてテーブルのうえか、膳のそとにおく。
・・・伏せてしまうと、ふたの内側の露がこぼれてしまう。
はじめの2口か3口は汁を吸い、あと汁の実に箸をつける。
・・・途中で酒を飲むときは、汁が冷めないようふたをする・・・
4.さしみ 食べ方・・・・さしみ鉢はおいたまま、醤油猪口を手に持ってたべる・・・が原則
さしみ一切れ広げ、中ほどにわさびを少しのせ、二つ折りして醤油に半分ひたし・・
猪口ごと口元に近づける・・・わさびを醤油に混ぜ溶かすのは禁物です。ただし、
ご飯のおかずにする時は、わさびを醤油に溶きいれさしみをどっぷりと浸します。
5.焼き魚 焼き魚の器は、熱いほど温めてあるはず・・・ナプキンをたたみ器の底を持つ
・・・焼き魚の器が冷たいようなら、そんな店は失格である・・
小魚一尾焼きの時は、片手で頭をおさえ、片手の箸で身をほぐして食べる。
6.握りずしを食べるとき ムリに手でつままなくても箸を使う・・
すしを片方に倒して、タネとシャリの両側から箸ではさむとくずれたりはしない。
そのまま、タネに小皿の醤油につけ、小皿で受けながら口に入れる。
たれをつけたアナゴ、玉子焼き、干瓢の海苔巻きなどは醤油は不要。