万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

混迷するウクライナ-現代のビスマルクはいないのか

2014年03月06日 15時38分28秒 | 国際政治
ウクライナ情勢 EU高官の電話会談「スナイパーの背後にいるのは新政権だ」 ネット流出(産経新聞) - goo ニュース
 1878年7月、ドイツの首都ベルリンでは、宰相ビスマルクの主催の下でベルリン会議が開かれました。ロシアの南下政策に歯止めをかけるべく、ロシア、イギリス、トルコ、オーストリア、フランス、イタリアの代表が一堂に会したのです。この時、”誠実なる仲介者”を称して巧みに各国の利害調整に成功したビスマルクは、ベルリン条約の締結に成功します。
 
 ウクライナの政変に間髪をいれずにクリミアに武力介入したロシアの行動は、あたかも19世紀の列強の行動様式そのものです。時代が逆戻りした感を受けるのですが、現代のビスマルクは出現しないのでしょうか。ウクライナ政変には、様々な情報が錯綜しており、中には、”キエフでの衝突で狙撃を実行したスナイパーの背後には、新政権側がいた”とする驚愕の情報も流れています。新政権側が自作自演のために雇ったのか、あるいは、新政権内部に潜入したヤヌコーヴィッチ政権側の手によるものであったのかは分かりませんが、少なくとも、事実が解明されませんと、解決の道も遠のきます。こうした場面では、”誠実なる仲介者”こそ求められるものであり、最低限、厳正で公平な事実調査と調査結果に基づく中立的な仲裁案が提起される必要があります。国連憲章に鑑みれば、平和的解決手段を試みることもなく、武力による介入を試みたロシアは批判されてしかるべきですが、セヴァーストポリの租借延長が問題であれば、ウクライナとの合意は不可能とも言い切れません。ウクライナは債務危機にありますので、ロシアが租借料を積み増せば、政権が交代しようとも、租借延長には応じる可能性は大いにあります。また、2月21日の当時の野党側との合意についても、新政権下にあっても、何れかの時点で大統領選挙を実施する必要がありますので、国際選挙監視団の下で、ヤヌコーヴィッチ氏の立候補を認めるといった妥協案が成立する余地はあります(ただし、当選の保障はない…)。さらには、クリミアの帰属問題といったウクライナの領土の一体性に関わる問題を議論したいのであれば、結論を急ぐ必要はなく、全ての当事者の代表が参加する形で専門の検討会議を設置するといった方法もあります。OCSCの調査団派遣については、プーチン大統領も同意しているそうですので、まずは、事実調査を開始することを以って、双方ともに対して自制を求めるべきです。

 ウクライナの危機の背景には、様々な勢力の思惑が渦巻いており(国際金融勢力も関与?)、利害調整も一筋縄ではいかないことでしょう。現代にはビスマルクがいないのであるならば、関係各国や国際機関が、国際法が保護する双方の権利を尊重しながら、できる限ぎり調整力を働かせるよう努めるしか平和的解決の道がないのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする