風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

旅人を意味する遊子(ゆうし)のように、気ままに歩き、自己満足の域を出ない水彩画を描いたり、ちょっといい話を綴れたら・・・

「星星会展 田渕俊夫さんら団体・会派の垣根を越え日本画の未来を追求」

2014-02-08 19:41:13 | アート・文化

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日本画家の下田義寛、竹内浩一、田渕俊夫、牧進の4人の皆さんによる所属会派を乗り越えたグループ展「星星会展」が8日、名古屋の松坂屋美術館で開幕しました。これまで5回全ての作品を一同に並べた展覧会。早速初日に出かけ、作品鑑賞と作家のギャラリートークに目と耳を傾けてきました。
名古屋で3月2日まで開かれたあと京都、広島を巡回する予定です。

4人は70歳を超えた同世代。それぞれの立場や団体・会派で日本画の制作に励んでいますが、日本だけでなく世界の文化意識や絵画環境が大きく変化するいま、垣根を取り払って日本画の伝統に改めて向き合い、新たな未来を追求していこうとグループ展を企画。2005年から隔年で開き5回展で完了させる形で進めてきました。
星星会の名称は故高山辰雄画伯が「小さな星でも切磋琢磨によって大きな星として輝くように」と命名してくれたそうです。

会場には約80点を展示。お互いに毎回、新作を出品し合ってきただけあって、どの作品にも違ったモチーフや彩色・デッサンなどに対する実験的取り組みがうかがわれます。
ギャラリートークをしたのは、無所属の竹内浩一さんと日本美術院代表理事の田渕俊夫さん。作品を前にして、創作に至った動機、書くための技術的考察などを、エピソードを混じえつつ話してくれましした。

竹内さんは、雨が降りしきる池の中を泳ぎ回る20匹近いナマズを描いた「夜さめ(よさめ)」と題する180cm×360cm、4曲1隻の絵を解説。「アトリエの水槽で飼っていた2匹のナマズの動きを毎日見ていて、哀感・ペーソスのある作品に仕上げてみましました」と絵づくりを話しました。
同じ大きさと形状で、京都の池で釣り人と、釣り上げる魚をもらえないかと見つめる1羽のサギを見ていて思いついたという「戯画 釣り名人」と題する作品でも「オヤジはサルに、1羽のサギは4羽にし、私の好きな柳を加えてみました」。

愛知県立芸術大学で教鞭をとっていた田渕さんは「20年間暮らした愛知県は第2の故郷」と自己紹介。「日本画は世界で唯一、全て天然の絵の具を使って描く。色を出す技法はまだまだ開発される。いわば未完の絵の具で、海外から学びに来る人も多い。芸大入学試験の競争倍率でも日本画が高くなっている」と話し、作品解説に。

林立する高層ビルの空に満月が浮かぶ「刻」(116.7cm×90.9cm)について「銀座で会食していてレストランの窓から見た満月に感動して描きました。ビルは定規を使用。細かくて無数の窓の灯りは、最初に全ての窓にマスキングをして、少しずつ剥がして塗り、剥がして塗る作業を繰り返しました」と見事なビル群と灯りの描き方を披露してくれました。
「すべての絵の創作の動機は感動です。あとはどのようにそれを表現するかの工夫と技術。木を書くにも枝を切ったり、同じ枝を伸ばしたり。楽しいですよ。楽しくないと細かな作業なんてできない。感動がなければ絵は描けません」と結びました。

グループ4人のうち残る下田さんと牧さんの作品については、広島県立美術館主任学芸員の永井明生さんが2人から聞いた創作技術などを解説。
水底に大小の石がびっしりと敷き詰められた池に、真鯉が泳ぐ牧さんの作品について「石は1個描いたら乾くまで待って次の石を描いていったそうです」。また、同じく牧さんが描いた桜吹雪に包まれて鶴が愛の交歓する絵は「まず画面いっぱいの桜の花びらを先に描かれたそうです」と話すなど、僕のような素人鑑賞者にとっても興味深い話を聞くことができました。