3つの会場で開かれている名古屋芸術大学卒業制作展2015の名古屋市民ギャラリー矢田会場(名古屋・東区)を、5日に見てきました。3日に愛知県立美術館を拝見し、残る作品もできるだけ見てみようと矢田会場に来たのですが、展示作品は少なくても結構楽しめました。
とりわけユニークな着想で面白かったのは、上の写真に掲載した展示室のやや広めのスペースを使って展示されていた「しまうところ」と題する作品。
壁面や床にびっしりと古い衣服や洗濯干し具、靴、人形、クッション、自分が書いた絵や版画・・・。レシートや菓子袋、歯の治療箇所が書かれた用紙なども。こしらえた1・5メートル四方ほどの「部屋」の中も、こんな「不用品」や「ゴミ」でいっぱいです。
「私は捨てることができない性分なのです。愛着があったり、記念になるとか、まだ使えると思ったりして、引き出しや部屋のあちこちにしまってしまいます。この服は、以前やっていたアルバイト先の制服です。こんなんだから、私の部屋の中はごちゃごちゃ。母に叱られてばかりいるのですが・・・」
「今度の卒展に何を出そうかと迷っていたとき、こんな『捨てられない私』を表現しよう、と思ったのです。これなら誰にも負けない、私しかできないことだから」
「作品のタイトルは、今は、ここが『しまうところ』だからです」。と話すと、「まだまだ、いくらでもあります」と展示品を次々と追加していました。そうした自分の姿もひっくるめて「アート」というわけです。
作品や作家の話に、僕が通う水彩画教室の講師で現代美術作家・山田彊一先生から聞いた話を思い出しました。
それは1970年代初頭、名古屋であった「ゴミ裁判」です。
若い芸術家や学生たちが愛知県美術館へ美術品としてゴミを出品。それを美術品とは認めない美術館側と裁判沙汰になったということです。
「そんなことがあったのですか」。僕の話に、驚きながらも作品の追加作業の手を止めることはありませんでした。