名古屋の鶴舞公園にある「普選記念壇」
4年に1度の統一地方選挙がスタートしましたが、名古屋の総合公園・鶴舞公園の一角に「普選記念壇」という、あまり耳慣れない野外施設があるのをご存知ですか。
普選とは普通選挙のこと。90年前の普通選挙法の成立を記念して設置されました。コンサートなどイベントを楽しむ場は、主権在民とか一票の大切さを考える場でもあるのですね。
名古屋出身の加藤高明が総理だった内閣が、衆議院議員選挙法改正(普通選挙法)を成立させたのは1925年(大正14年)。民衆の選挙権拡大の要求に応えて、25歳以上の男性の高額納税者にしか認めていなかった選挙権有資格者の納税枠を撤廃したのです。これで有権者は一気に増えました。
しかし、女性の選挙権は認められず、国民主権・主権在民からはほど遠いものでした。平塚らいてうや市川房枝らによる婦人参政権運動を経て、現在のように20歳以上の男女が有権者になったのは、大戦後の1945年12月(まず国政参政権。地方参政権は翌46年)のことです。
さらに、今国会には選挙権の年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が提出されています。成立すれば2016年夏の参院選から実施されます。
名古屋市の有形文化財にも指定されている普選記念壇は、普選法成立3年後の1928年(昭和3年)、中日新聞社の前身である名古屋新聞社が寄贈してできました。
3400㎡の敷地に幅13・5㍍、奥行5・4㍍のコンクリートづくり。設計者は佐藤功一。佐藤は早稲田大学の大隈講堂や日比谷公会堂も設計しているそうです。
ステージの中央に、立憲主義や選挙法のベースともいえる「五箇条の御誓文(ごかじょうのごせいもん)」の青銅版が掲げられています。
五箇条の御誓文は、明治天皇が立憲政治を目指す明治政府の基本方針として1868年(明治元年)に示したものです。
そこには会議の重要性や政治は世論に従って決めること、古い悪習をやめること、知識を世界に求めることなどが書かれています。ステージには英訳の青銅版も掲げてあります。
「五箇条の御誓文」の青銅版