この鬼瓦を目にした時、大きさと歳月の経過を思わせる風格に「面白い、描いてやろう」と思ったのですが、かなり時間が経過しました。瓦の面が紋様なのか文字なのかが分からず、調べてからにしようと先送りしていたのです。
写真を取り出して見つめました。
一方で、鬼瓦に関するネットを開くと、鬼面や家紋、動物、それに1字か2字の漢字が使われていることが分かりました。
「ということは、これは漢字1字をデザイン化したようだな」と判断、それらしい文字を思い浮かべました。でも、出てきません。
「分かった!!」。テレビの早押しクイズでボタンを押す気持ちでした。
カタカナで「モロト」と読めます。カタカナが使われた鬼瓦を見たのは初めてです。
この鬼瓦は三重県桑名市が生んだ明治の豪商・諸戸清六(もろと・せいろく)の屋敷を囲む土塀の屋根瓦の先端に置かれたものです。
三菱財閥を創立した岩崎弥太郎らと日本経済の先駆けとして活躍、日本の山林王とも言われ、現在の「諸戸グループ」の礎を築いた諸戸清六。そのような男がどんな1つの漢字を選んだのだろう、と思い込んだことも、迷路にはまり込んだ要因です。
さらに言い訳をすれば、「モ」の字の縦線と横線の一部が、長い歳月で切れたり繋がったりしているように見えたせいもあります。でも、想像力が乏しかったことは否めないでしょう。
正体が分かったことに気を良くして、絵の方は比較的短時間で描けましたが、歳月の経過を示す瓦のコケやカビ、汚れなどの表現がいまひとつだったと反省しています。
㊤の瓦を絵にしたのですが、10年前に少し離れたところで
撮った㊦の写真を見ると、はっきり「モロト」と読めます