風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

旅人を意味する遊子(ゆうし)のように、気ままに歩き、自己満足の域を出ない水彩画を描いたり、ちょっといい話を綴れたら・・・

楽書き雑記「散歩道の桑の実で味わったうまくて嬉しい時間」

2018-05-22 06:24:42 | 日記・エッセイ・コラム

散歩道に張り出した大きな桑の木

自宅近くにある雑木林沿いの散歩道で、ちょっとうまくて嬉しい時間がありました。桑の実にまつわる話です。

名古屋市内といっても都心から離れたこの地域は雑木林が点在、そこには以前は農村だった名残りである野生化、巨木化した樹木が数多く見られます。
下駄や家具を作った桐、たわしや縄の材料にした棕櫚(しゅろ)、養蚕の餌だった桑・・・。この日歩いたコースでは、たわわに実をつけた桑の木と次々に出会いました。

散歩道にかぶさるように枝が垂れ、地面には熟した赤紫の実がポロポロころがっています。思い切って口に入れました。子どものころの味です。3つ、5つ…次々と。毎年目にするたびにやってみたかったひとときでした。

♪山の畑の 桑の実を 小篭に摘んだは まぼろしか

童謡「赤とんぼ」を口ずさみながらしばらく歩いていると、3人連れの親子に出会いました。
小学1年生ぐらいの女の子が手にした透明の袋の中を見てびっくり。桑の実が入っているのです。

「わぁ―、桑の実だね」と僕。
可愛くうなずく女の子。「お家で洗ってから食べようね」とお母さん。「これ、うまいですね。甘くて」とお父さん。その手のひらには、たくさんの桑の実が乗っていました。

野山を駆け回り、桑の実やアケビ、クリ、シイの実、イタドリ、野イチゴなどを口にしていた僕の子ども時代。
それに対して、野生のものを採って口にするなんて・・・。木の実であれ、落ちているのを拾って食べるなんてもってのほか――と叱られかねない現代。

それなのに、こんな親子たちの風景。「野外での自然親子教室などで学んだのかな」「孫たちにもワイルドの世界を少し教えてやらねば」などと考えながら、何だか嬉しくなりました。

巨木化した桑の木