マリアンナ・ベルフェ・スカーレット。
2015年12月下旬を以て、再び一人前の魔道師として免許皆伝を受けた。
そんな彼女が目指すものは、師匠イリーナと同じ“時空を司る”クロックワーカー。
そこへ到達する一環として、“人形使い”をやっているが、何故それを彼女がやっているのか?
それは今から7年前のこと……。
「汚い……きたない……」
望まぬ双子の赤子を孕ませられ、悪魔との契約の際に堕胎したマリアだったが、後遺症は残った。
“狼”達に身も心も汚された彼女は、ヨーロッパでの隠れ家において、何度も手を洗うなどの異常行動を起こすなどしていた。
「マリア、やめなさい!何度言ったら分かるの!」
イリーナが止めるが、マリアは激しく抵抗し、
「だって、汚いんだもん!体だって……!」
「そんなことないから!そんなにゴシゴシやったらケガするわよ!」
「離して!!」
と、そこへ、
「これは深刻だねぇ……」
「ダンテ先生!」
「その両手を封じるべきだろう」
「先生、それはあまりにかわいそうです」
「もちろん、単に封じるわけではない。要は、両手を忙しくすれば良い。幸い、マリアンナ君に憑かせた悪魔はベルフェゴール。この悪魔を使った修行をさせれば、名実共に一人前になれるんじゃないかな?」
「それは……」
「あと、環境も変えよう。“例の脅威”もあることだし、地球の裏側くらいで、かつ魔道師にも理解のある国に行くんだ」
「分かりました」
イリーナは世界地図を壁に貼った。
そして、ダーツを取り出す。
「はい、マリア。適当に投げてみて~」
「ダーツで決める気かい、キミは!」
ダンテは直弟子をたしなめた。
マリアは、
「いやッ!汚い!」
イリーナのダーツを払い除けた。
どうやら、ダーツが男性器に見えたらしい。
「しょうがない。ここは1つ、タロットで決めたまえ」
「アタシにはトランプにしか見えませんけど……」
「いいから、1枚引きなさい」
「マリア。トランプなら大丈夫でしょ?」
「…………」
マリアは恐る恐るカードを引いた。
すると出てきたのはダイヤのジャック。
「ふむ。では、頭文字Jの中から国を選びなさい」
「A……」
マリアはダイヤのマークがAに見えた。
「J……A……」
「ふむ?JAPANなら確かに遠い異国の地だし、キリスト教の力も強くないから、彼らによる迫害も無い。ただ、日本語を覚えるのと、向こうの文化に慣れるのが大変だと思うがね」
「そこはアタシが何とかしますわ。マリア、今すぐ支度をなさい」
「はい……」
それから7年後の現在。
ホテルニューオータニで稲生達を待つイリーナとダンテ。
「ふむ。マリアンナ君も、少しは心の傷が癒えたかね?」
「ユウタ君が典型的な日本人で良かったですわ。イギリスにはいないタイプですからね」
「まだ、手袋越しにしか男性と握手ができないか」
「ユウタ君以外の男性とは、手袋越しでも無理みたいです」
「そうか。じゃ、まだまだこれからだな」
「ユウタ君の使命は大きいですわ」
「そろそろ彼らが来る頃だ。迎えに行ってあげなさい。私は部屋で、少し休ませてもらおう」
「はい、先生」
イリーナはニッコリ笑って、ホテルのエントランスに向かった。
2015年12月下旬を以て、再び一人前の魔道師として免許皆伝を受けた。
そんな彼女が目指すものは、師匠イリーナと同じ“時空を司る”クロックワーカー。
そこへ到達する一環として、“人形使い”をやっているが、何故それを彼女がやっているのか?
それは今から7年前のこと……。
「汚い……きたない……」
望まぬ双子の赤子を孕ませられ、悪魔との契約の際に堕胎したマリアだったが、後遺症は残った。
“狼”達に身も心も汚された彼女は、ヨーロッパでの隠れ家において、何度も手を洗うなどの異常行動を起こすなどしていた。
「マリア、やめなさい!何度言ったら分かるの!」
イリーナが止めるが、マリアは激しく抵抗し、
「だって、汚いんだもん!体だって……!」
「そんなことないから!そんなにゴシゴシやったらケガするわよ!」
「離して!!」
と、そこへ、
「これは深刻だねぇ……」
「ダンテ先生!」
「その両手を封じるべきだろう」
「先生、それはあまりにかわいそうです」
「もちろん、単に封じるわけではない。要は、両手を忙しくすれば良い。幸い、マリアンナ君に憑かせた悪魔はベルフェゴール。この悪魔を使った修行をさせれば、名実共に一人前になれるんじゃないかな?」
「それは……」
「あと、環境も変えよう。“例の脅威”もあることだし、地球の裏側くらいで、かつ魔道師にも理解のある国に行くんだ」
「分かりました」
イリーナは世界地図を壁に貼った。
そして、ダーツを取り出す。
「はい、マリア。適当に投げてみて~」
「ダーツで決める気かい、キミは!」
ダンテは直弟子をたしなめた。
マリアは、
「いやッ!汚い!」
イリーナのダーツを払い除けた。
どうやら、ダーツが男性器に見えたらしい。
「しょうがない。ここは1つ、タロットで決めたまえ」
「アタシにはトランプにしか見えませんけど……」
「いいから、1枚引きなさい」
「マリア。トランプなら大丈夫でしょ?」
「…………」
マリアは恐る恐るカードを引いた。
すると出てきたのはダイヤのジャック。
「ふむ。では、頭文字Jの中から国を選びなさい」
「A……」
マリアはダイヤのマークがAに見えた。
「J……A……」
「ふむ?JAPANなら確かに遠い異国の地だし、キリスト教の力も強くないから、彼らによる迫害も無い。ただ、日本語を覚えるのと、向こうの文化に慣れるのが大変だと思うがね」
「そこはアタシが何とかしますわ。マリア、今すぐ支度をなさい」
「はい……」
それから7年後の現在。
ホテルニューオータニで稲生達を待つイリーナとダンテ。
「ふむ。マリアンナ君も、少しは心の傷が癒えたかね?」
「ユウタ君が典型的な日本人で良かったですわ。イギリスにはいないタイプですからね」
「まだ、手袋越しにしか男性と握手ができないか」
「ユウタ君以外の男性とは、手袋越しでも無理みたいです」
「そうか。じゃ、まだまだこれからだな」
「ユウタ君の使命は大きいですわ」
「そろそろ彼らが来る頃だ。迎えに行ってあげなさい。私は部屋で、少し休ませてもらおう」
「はい、先生」
イリーナはニッコリ笑って、ホテルのエントランスに向かった。