写真は雲南の大根。土が赤いので大根も赤く見えるが、洗えば白い。ジューシーでおいしい。(2008年8月蒙自の市場にて撮影)
【雲南の回族Ⅱ・通海の特殊性】
特色ある村を旅する中国中央テレビの番組などで、時折、通海の2つの村が紹介されます。一つは古くからの回族の風情が注目される村・通海県納古鎮納家営。そしてもう一つは蒙古族が集まる村・通海県河西鎮新蒙郷です。
納家営は12平方キロメートル。人口8000人あまりの村では中国の改革開放が始まったころ、いち早く手工業を生かして、様々な刀剣や馬具製造の知識を生かした加工品がつくられる工場が建ち並びました。村人の多くが軍用品工場に関わっていたことがあり、そのような工場がいまでは400以上もあるとのこと。
村の名は「納」の家の営。
元代にフビライ・ハーン直々の要請で雲南に赴いたサイード・シャムスッディーンの長男ナスラーディン(納速攞丁)の直系の孫ナスル(納数魯)の4人の子どもである納栄、納華、納富、納貴が家を構えたところなので「納家」。
「営」は宿営地つまり、軍事的な拠点であったという意味です。ちなみに昆明を歩くと「営」と名の付く地名が多くあることに気づきます。営の付く通りなどには名将軍の住居跡だ、という歴史板が設置されていることも。
雲南には数多い宿営地、屯田地が存在していたことを地名が物語っています。
さて、テレビを見ると白い帽子を被り、やや青みがかった目をした老人が羊肉の料理をしていたり、孫の世話をする枯れた風景が映し出されたりとおだやかな静かな農村風景が紹介されています。
けれども実際に村の周辺を行くと、「緑色野菜先進基地」を意味する看板の横に広大な白菜や大根畑が広がり、周辺から収穫され、集められた野菜が平屋の倉庫に収められ、そこから白い帽子を被った回族とおぼしき人が陣頭指揮をとって、各地に配送するトラックに詰める指示を出すといった迫力のある景色が展開していました。
王兵監督のドキュメンタリー映画「三姉妹~雲南の子」
(2012年ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門グランプリ等各賞受賞。日本では2013年5月より公開された)
で雲南省の山奥・北東部昭通市洗羊塘村に暮らす3姉妹の父親が出稼ぎに出ているところも通海市でした。
この父親は一旦、洗羊塘村に帰った後、長女のみ村に残し、次女、3女を連れて通海への直通バスに乗って行きます。これはこの父親に限った現象ではなく、通海の回族は外部の人を受け入れ、また常に労働力を求めて外部の人を求めている村だと、雲南省の労働者ならだれもが知っているのです。
そして通海に来る労働者とは、映画に出てくる父親と同じく、多くが文盲で小学校卒。このような外来人口が7000人以上いるとのことです(2005年時点)つまり、村の二人に一人が外来人口、つまり出稼ぎの人というわけです。
ここで塩漬けられた大根は日本にも輸出されているそうです。 (つづく)
参考文献:肖芒主編『宣礼声中求索~通海県納古鎮納家営村回族村民日記』中国社会科学出版社、2009年
*通海の甘酒の章は前回で最終回です。最新章をお楽しみいただければ、と思います。
【雲南の回族Ⅱ・通海の特殊性】
特色ある村を旅する中国中央テレビの番組などで、時折、通海の2つの村が紹介されます。一つは古くからの回族の風情が注目される村・通海県納古鎮納家営。そしてもう一つは蒙古族が集まる村・通海県河西鎮新蒙郷です。
納家営は12平方キロメートル。人口8000人あまりの村では中国の改革開放が始まったころ、いち早く手工業を生かして、様々な刀剣や馬具製造の知識を生かした加工品がつくられる工場が建ち並びました。村人の多くが軍用品工場に関わっていたことがあり、そのような工場がいまでは400以上もあるとのこと。
村の名は「納」の家の営。
元代にフビライ・ハーン直々の要請で雲南に赴いたサイード・シャムスッディーンの長男ナスラーディン(納速攞丁)の直系の孫ナスル(納数魯)の4人の子どもである納栄、納華、納富、納貴が家を構えたところなので「納家」。
「営」は宿営地つまり、軍事的な拠点であったという意味です。ちなみに昆明を歩くと「営」と名の付く地名が多くあることに気づきます。営の付く通りなどには名将軍の住居跡だ、という歴史板が設置されていることも。
雲南には数多い宿営地、屯田地が存在していたことを地名が物語っています。
さて、テレビを見ると白い帽子を被り、やや青みがかった目をした老人が羊肉の料理をしていたり、孫の世話をする枯れた風景が映し出されたりとおだやかな静かな農村風景が紹介されています。
けれども実際に村の周辺を行くと、「緑色野菜先進基地」を意味する看板の横に広大な白菜や大根畑が広がり、周辺から収穫され、集められた野菜が平屋の倉庫に収められ、そこから白い帽子を被った回族とおぼしき人が陣頭指揮をとって、各地に配送するトラックに詰める指示を出すといった迫力のある景色が展開していました。
王兵監督のドキュメンタリー映画「三姉妹~雲南の子」
(2012年ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門グランプリ等各賞受賞。日本では2013年5月より公開された)
で雲南省の山奥・北東部昭通市洗羊塘村に暮らす3姉妹の父親が出稼ぎに出ているところも通海市でした。
この父親は一旦、洗羊塘村に帰った後、長女のみ村に残し、次女、3女を連れて通海への直通バスに乗って行きます。これはこの父親に限った現象ではなく、通海の回族は外部の人を受け入れ、また常に労働力を求めて外部の人を求めている村だと、雲南省の労働者ならだれもが知っているのです。
そして通海に来る労働者とは、映画に出てくる父親と同じく、多くが文盲で小学校卒。このような外来人口が7000人以上いるとのことです(2005年時点)つまり、村の二人に一人が外来人口、つまり出稼ぎの人というわけです。
ここで塩漬けられた大根は日本にも輸出されているそうです。 (つづく)
参考文献:肖芒主編『宣礼声中求索~通海県納古鎮納家営村回族村民日記』中国社会科学出版社、2009年
*通海の甘酒の章は前回で最終回です。最新章をお楽しみいただければ、と思います。