石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(2)

2023-04-29 | その他

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

(一人当たり軍事費世界一はカタールの5,172ドル、中国は202ドル!)

2.一人当たりの軍事費

(図http://rank.maeda1.jp/7-G03.pdf 参照)

国民一人当たりの軍事費が世界で最も多いのはカタールでありその額は5,172ドルに達する。2位はイスラエルの2,623ドルでカタールの2分の1である。3位はサウジアラビア(2,093ドル)で、一人当たり軍事費が2,000ドルを超えるのはこの3カ国だけである。なお昨年のデータでは米国はサウジアラビアを上回る世界3位であったが、今回はデータが示されていない。

 

4位はシンガポール(1,966ドル)であり、以下10位まではクウェイト、ノルウェー、オーストラリア、オマーン、ウクライナ及び英国の各国である。

 

上位10カ国の顔ぶれにはカタール、クウェイト、サウジアラビア、オマーンのGCC4カ国が並んでいる。サウジアラビアを除きいずれも人口が少なく、豊富な石油収入により一人当たりの軍事費が大きい。すでに触れた通り同じGCCのUAEは今回の統計には明示されていないが、同国も人口が少なく、一人当たりの軍事費がカタールと肩を並べる世界トップクラスであることは間違いないと言えよう。

 

 極東アジアの主要な国は韓国が14位(903ドル)に入っている。またロシアは27位(592ドル)、台湾31位(524ドル)、日本39位(366ドル)である。軍事大国中国の一人当たり軍事費は202ドルで世界53位、インドは58ドルで世界85位である。中東イスラム諸国では、トルコが124ドル(世界64位)、イラン80ドル(世界78位)、エジプトは44ドル(同99位)である。

 

 日本の一人当たり軍事費は366ドルであるが、日本を1とした場合、カタールは14倍、サウジアラビア5.7倍、韓国2.5倍であり、一方中国は日本の2分の1、インドは6分の1である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(1)

2023-04-27 | その他

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

 第7回の世界ランクは、スウェーデンの「ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute, 略称SIPRI)」のホームページに発表されたデータベースの中からSIPRI Military Expenditure Database及びSIPRI Arms Transfers Databaseを取り上げ、2022年の世界と中東主要国の軍事費、一人当たり支出、GDPに占める比率及び政府歳出に占める割合を比較する。また2013年から2022年までの10年間にわたる各国の武器輸出入累計額についても分析する。

*SIPRIホームページ:http://www.sipri.org/databases 

 

(圧倒的な米国の軍事費、2位中国の3倍、日本の20倍弱!)

  • 軍事費支出の比較

(図http://rank.maeda1.jp/7-G01.pdf、表http://rank.maeda1.jp/7-T01.pdf参照)

 世界で軍事費が最も多いのは米国で2022年の支出額は8,769億ドルである。同年の世界全体の軍事費は2兆2,400億ドルであり、同国だけで世界の4割弱を占めている。これに次ぐのは中国の2,920億ドルであるが、米国の3分の1にとどまっている。それでも中国の軍事費が世界に占める割合は13%であり、米国と中国二カ国を合わせると世界の軍事費の5割を超える。

 

これら2カ国に続くのがロシア(864億ドル)であり、世界全体の4%を占めている。4位から10位までは、インド(814億ドル)、サウジアラビア(750億ドル)、英国(685億ドル)、ドイツ(558億ドル)、フランス(536億ドル)、韓国(464億ドル)及び日本(460億ドル)の各国である。因みに日本の軍事費を他国と比べると、米国は日本の19倍、中国も日本の6倍である。また韓国は日本をわずかに上回り、昨年と順位が逆転している。

 

因みに日本に次ぐ11位はウクライナ(440億ドル)である。同国の2021年の軍事費は世界36位の59億ドルであり、ロシアとの戦争のため軍事費は1年間で7.5倍に増加している。紛争の一方の当事国ロシアの2021年の軍事費は659億ドルであり、こちらも1.3倍に増加している。

 

中東の主要国を見ると、サウジアラビアが750億ドル(世界5位)、イスラエル234億ドル(同15位)、トルコ106億ドル(世界23位)、イラン68億ドル(同34位)である。エジプトは中東で人口が最も多く、軍が国家権力を握っているが、経済規模が小さいため、軍事費は46億ドルにとどまっている。これはサウジアラビアの16分の1、イスラエルの5分の1であり、世界46位の規模である。

 

(注)UAEの軍事費について:

SIPRIの統計ではUAEの軍事費は2014年以降明示されていないが、2014年以前の同国の軍事費はイスラエル、トルコ、イランを上回っており、世界10位前後に位置している。また、後述する通り2013年から2022年までの10年間の武器輸入額は世界7位の規模である。これらのことからUAEの軍事費は世界のトップテンに並ぶものとみて間違いないであろう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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IMF世界経済見通し:低成長が続く先進国、ドイツはマイナス成長 (3完)

2023-04-23 | その他

(注)本レポートは下記URLで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0574ImfWeoApr2023.pdf

 

3. 2023GDP成長率見直しの推移

 IMFの世界経済見通しは毎年4月、10月に全世界200弱の国について成長率の見直しが行われ、さらに1月及び7月には主要な国と経済圏の成長率が発表されている。主要な国と経済圏については3カ月ごとに検証されていることになる。

 最近の特徴はコロナ禍、ウクライナ紛争、エネルギー価格の高騰など国際経済を取り巻く環境の不透明感が増していることである。このためIMFの成長率見通しも3カ月ごとに大きく変動すると言う特徴が見られる。

 ここでは直近5回(2022年4月、7月、10月、2023年1月及び今回4月)の成長率見直しの推移を比較する。

 

(直近5回で日本は今回が最も低く、中国は最も高い!)

3-1 全世界及び日本、米国、中国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03a.pdf 参照)

 直近5回のIMF経済見通しにおける2023年の世界のGDP成長率は2022年4月見通しでは3.6%であったが、その後7月には2.9%、10月は2.7%と下方修正されたが、今年1月には本年の成長率は2.9%に見直され、4月もほぼ同じ水準に維持されている。

 

 米国は2.3%→1.0%→1.0%→1.0%→1.4%→1.6%と変化している。2022年7月には大きく下方修正されたが、今年は年初から2回続けて上方修正されている。中国の場合は、5.1%→4.6%→4.4%→5.2%→5.2%であり、昨年4月から2回連続して成長率が下落したものの、今年は一転して1月、4月見通しでは5%台の成長率が想定されており、世界に先駆けて景気回復に向かうものと見込まれている。

 

 日本の2023年成長率の過去1年間の数値は2.3%→1.7%→1.6%→1.8%→1.3%と見直されている。昨年4月に成長率が1%台に下方修正された後、現在まで低い成長率が据え置かれている。エネルギー価格の急騰は日本経済のアキレス腱であり、このことが早期の成長率回復の障害になっているようである。

 

(OPEC+の盟主サウジとロシアに極端な明暗、インドは6%の高度成長!)

3-1 ロシアとサウジアラビアとインド

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03b.pdf 参照)

 サウジアラビアとロシアは米国と並ぶ三大産油国であり、両国はOPEC+(プラス)の盟主として最近の石油価格の高値安定を主導している。昨年4月時点では2023年の成長率見通しはサウジアラビア3.6%、ロシア▲2.3%であり、同年2月のウクライナ紛争ぼっ発が両国の明暗を分けた形であった。

 

 紛争により石油価格が急騰したことは輸出国のサウジアラビアに大きな追い風となった一方、紛争当事者のロシアは経済制裁の影響を受け経済に深刻な懸念が生まれた。2022年10月までの両国の成長率予測はほぼ同じ水準で維持されてきた。しかし今年1月はロシアの成長率が0.3%とプラスに転じた一方、サウジアラビアの成長率は2.6%に下方修正されている。今回4月には両国ともに成長が加速されサウジアラビア3.1%、ロシア0.7%に見直されている。

 

米国を中心とする先進国による経済制裁が続いているにも関わらずロシアの成長率が上方修正されていることは、インド、中国をはじめとするグローバルサウスの国々が欧米先進国と共同歩調を取らず、或いはこれを奇貨としてロシアから安価なエネルギーを輸入し続けている現状を反映したものとみられる。

 

 アジアの経済大国であるインドの2023年のGDP成長率予測は、6.9%(2022年4月時点)→6.1

%(7月)→6.1%(10月)→6.1%(本年1月)→5.9%(4月時点)である。昨年7月に下方修正され今回に至っているが、それでもインドの今年の成長率は世界平均を大きく上回る見通しである。

 

以上

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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IMF世界経済見通し:低成長が続く先進国、ドイツはマイナス成長 (2)

2023-04-21 | その他

(注)本レポートは下記URLで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0574ImfWeoApr2023.pdf

 

2. 2022年~2024年のGDP成長率

 主要な経済圏と国家の昨年(実績見込み)、今年(予測)及び来年(予測)のGDP成長率の推移を見ると以下の通りである。

 

(際立って低い今年と来年のEU成長率!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は3.4%(2022年)→2.8%(2023年)→3.0%(2024年)であり、3%前後で推移する見通しである。昨年及び今年はコロナ禍が回復に向かった一方、ウクライナ危機が長引きプラスとマイナスの要因が景気を停滞させており、前後3年間の成長率に大きな変化は無い。

 

 ウクライナ危機の影響を最も大きく受けるのはEU圏である。3年間の成長率は3.7%→0.8%→1.6%であり、今年は3年間の中で成長率が大きく落ち込んでおり、他の経済圏と比べても際立って低い。ASEAN5カ国の成長率は5.5%→4.5%→4.6%であり、世界平均を上回る高い成長率を維持する見通しである。

 

 産油・ガス国が多い中東及び中央アジアの成長率はエネルギー価格の騰落に大きく影響され、3年間の成長率の推移は5.3%→2.9%→3.5%と見込まれている。昨年はエネルギー価格高騰の恩恵が大きかったが、今年及び来年は世界平均を少し上回る程度の成長率で推移する見通しである。

 

(中国を上回る高い成長率を続けるインド!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は2.1%であったが、今年(1.6%)、来年(1.1%)と連続して成長が鈍化する見通しである。日本の成長率は1.1%→1.3%→1.0%と1%台前半の低成長を続けるものとみられている。日本と同様先進工業国であるドイツの成長率は1.8%→▲0.1%→1.1%であり、今年はわずかではあるがマイナス成長になると予測されている。同国は原料のエネルギー輸入価格が高騰する一方、世界景気の低迷で輸出が伸び悩んでいることが低成長の大きな要因と考えられる。

 

中国は3.0%→5.2%→4.5%であり、昨年から今年にかけて経済成長を回復するものの、その勢いは持続せず来年は5%以下にとどまると予測されている。コロナ禍以前は二桁台の成長率を誇っていたことに比べ中国の成長率は伸び悩んでいる。これに対してインドの成長率は6.8%→5.9%→6.3%であり、世界平均を大きく上回る6%前後の高い成長を維持する見込みである。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICSの一翼を担ってきたロシアの成長率は対照的な様相を呈している。昨年(2022年)は一昨年に引き続くマイナス成長(▲2.0%)であり、今年(0.7%)、来年(1.3%)はプラスながらも低い成長率にとどまると予測されている。ウクライナ紛争は未だ終息の見通しが立っておらず、ロシアの今年の成長率が昨年同様マイナスに陥る可能性は否定できない。

 

産油国サウジアラビアの3カ年の成長率は8.7%→3.1%→3.1%であり、昨年は原油価格高騰の恩恵を受けたが、今年及び来年は世界景気の回復が遅れる一方インフレによる輸入価格の高騰のため、昨年のような高い成長率は期待できないようである。

 

(続く)

 

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IMF世界経済見通し:低成長が続く先進国、ドイツはマイナス成長 (1)

2023-04-18 | その他

(注)本レポートは下記URLで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0574ImfWeoApr2023.pdf

 

IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook、April 2023)」(以下、WEO)を発表した。 また付属資料として世界各国及び地域の主要な経済指標を示した「データベース(World Economic Outlook Database)」も同時に公表した。

 

本稿では世界、主要経済圏、主要国の今年(2023年)及び来年(2024年)の成長率を比較し、また前回1月の経済見通し(World Economic Outlook Update)に対してGDP成長率がどのように見直されたかを検討する。さらに昨年、今年及び来年の3か年の成長率の推移を比較する。また昨年4月、7月、10月、今年1月及び今回まで5回のWEO見通しで今年(2023年)の成長率がどのように見直されてきたかを精査する。

 

*WEOレポート:

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2023/04/11/world-economic-outlook-april-2023

*同データベース

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April

 

 

(今年の世界の成長率は前回1月見通しを0.1%下方修正し2.8%に!)

1.2023年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)

 今回4月見通しでは今年の世界の成長率は2.8%とされており、前回1月の2.9%からわずかに下方修正されている。コロナ禍が終息したにもかかわらず、ウクライナ紛争の先行きが見えず、エネルギー価格も不安定な動きを示している。このことが中国の経済回復の遅れを招き、また日独など先進国の経済成長を下押ししている。

 

 経済圏別に見るとEU圏の2023年の成長率は0.8%であり、1月の数値を0.1%アップしている。またASEAN5カ国も4.3%から4.5%に上方修正されている。これに対して中東・中央アジア諸国は3.2%から2.9%に引き下げられている。EU圏はわずかに上方修正されているものの、ウクライナ紛争における対ロシア経済制裁及びエネルギー価格の急騰がブーメラン効果を及ぼしており、成長率は低い状態が続いている。

 

石油・天然ガスの産出国が多い中東・中央アジア諸国は、エネルギー価格高騰の恩恵を受け世界平均を上回る成長率であるが、エネルギー需要及び価格が共に低迷しているため今年の成長率は3.2%から2.9%に引き下げられている。

 

 国別では今年の成長率は米国1.6%、日本1.3%、ドイツ▲0.1%、英国▲0.3%、ロシア0.7%、中国5.2%、インド5.9%である。中国はコロナ以前二桁の高い成長を続けてきたものの、その後成長率が急減速している。しかしそれでも世界平均の2.8%を大きく上回る成長率が見込まれている。これに対してヨーロッパ諸国は上記の通りEU圏の成長率が1%を下回り、ドイツ及び英国はマイナス成長と見込まれるなど不振が際立っている。

 

 アジアでは中国及びインドは5%を超える成長率が見込まれ、特にインドは世界最高水準の成長を達成しそうである。ASEAN5か国の成長率も上記の通り4.5%であり、いわゆるグローバルサウスのアジア諸国は欧米先進国はもとより世界平均を大幅に上回る成長が見込まれている。産油国のサウジアラビアは世界平均を少し上回る3.1%の成長が見込まれるが、これに対してロシアは0.7%の低成長にとどまっている。ロシアはサウジアラビアに並ぶ石油・天然ガスの生産国であるが、ウクライナ紛争の長期化による国内経済の悪化及び欧米諸国による経済制裁が大きく響いているようである。

 

(続く)

 

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IMF世界経済見通し:来年にかけて緩やかに成長する世界経済 (下)

2023-02-12 | その他
  1. 2023GDP成長率見直しの推移

 IMFの世界経済見通しは毎年4月、10月に全世界200弱の国について成長率の見直しが行われ、さらに1月及び7月には主要な国と経済圏の成長率が発表されている。主要な国と経済圏については3カ月ごとに検証されていることになる。

 最近の特徴はコロナ禍、ウクライナ紛争、エネルギー価格の高騰など国際経済を取り巻く環境が不透明感を増していることである。このためIMFの成長率見通しも3カ月ごとに大きく変動すると言う特徴が見られる。

 ここでは直近5回(2022年1月、4月、7月、10月及び今回2023年1月)の成長率見直しの推移を比較する。

 

(昨年連続して引き下げられた世界と米中の成長率!)

3-1 全世界及び日本、米国、中国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03a.pdf 参照)

 直近5回のIMF経済見通しにおける2023年の世界のGDP成長率は2022年1月見通しでは3.8%であったが、その後4月は3.6%、7月2.9%、10月2.7%、今回2.9%に修正されている。4月から7月にかけてそれまでの3%台から2%台に下方修正され現在に至っている。

 

 米国は2.6%→2.3%→1.0%→1.0%→1.4%である。2022年7月に大きく下方修正されており、今年1月の予測値でも1%台前半にとどまっている。中国の場合は、5.2%→5.1%→4.6%→4.4%→5.2%であり、昨年7月に引き下げられたのち、今回は1年前の予測値と同じ成長率に見直されている。

 

 日本の2023年成長率の過去1年間の見直しは1.8%→3.3%→1.7%→1.6%→1.8%と見直されている。昨年4月には成長率が一旦3%台に上方修正されたが、その後は再び1%台後半の成長率に戻っている。エネルギー価格の急騰は日本経済のアキレス腱であり、このことが早期の成長率回復の障害になっているようである。

 

(インドは6%の高度成長、OPEC+の盟主に極端な明暗!)

3-1 ロシアとサウジアラビアとインド

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03b.pdf 参照)

 サウジアラビアとロシアは米国と並ぶ三大産油国であり、両国はOPEC+(プラス)の盟主として最近の石油価格の高値安定を主導している。昨年1月時点では2023年の成長率見通しはサウジアラビア2.8%、ロシア2.1%であり拮抗していたが、2月のウクライナ紛争ぼっ発により両国は明暗が分かれた。

 

 紛争により石油価格が急騰したことは輸出国のサウジアラビアに大きな追い風となった一方、紛争当事者のロシアは経済制裁の影響を受け経済に深刻な懸念が生まれた。7月の成長率予測ではサウジアラビアの成長率が3.6%に上方修正されたのに対し、ロシアは一転して▲2.3%のマイナス成長に転落している。その後紛争の長期化の兆しが見られる中で2023年のロシアの成長率はマイナスが続くと予測されていたが、今回(1月)は今年の成長率はプラスになると予測されている。ただしIMFが次回4月の見直しでプラス成長を維持するか否かは極めて不透明であると言えよう。

 

 アジアの経済大国であるインドの2023年のGDP成長率予測は、7.1%(2022年1月時点)→6.9%(4月)→6.1%(7月)→6.1%(10月)→6.1%(本年1月時点)である。昨年7月に下方修正され今回に至っているが、それでもインドの今年の成長率は世界平均を大きく上回る見通しである。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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IMF世界経済見通し:来年にかけて緩やかに成長する世界経済 (上)

2023-02-07 | その他

IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook Update、January 2023)」を発表した。 このレポートでは全世界、EU、ASEANなどの主要経済圏及び日米中印など主な国々の2020年(実績)から2024年(予測)まで4年間のGDP成長率が示されている。

 

本稿では今年(2023年)及び来年(2024年)の世界、主要経済圏、主要国の成長率を比較し、また前回2022年10月の経済見通しに対してGDP成長率がどのように見直されたかを検討する。さらに昨年2022年1月から今回まで5回の見通しで、2023年の成長率がどのように見直されてきたかを精査する。

 

*WEOレポート:

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2023/01/31/world-economic-outlook-update-january-2023

(同日本語版)

https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2023/01/31/world-economic-outlook-update-january-2023

 

(今年の世界の成長率2.9%、多くの国で前回見通しを上方修正!)

1.2023年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)

 今回1月見通しでは今年の世界の成長率は2.9%とされており、前回10月の2.7%から0.2%上方修正されている。これはコロナ禍が終息傾向にあり中国の経済活動が復活するとの見通しによるものと考えられる。但しウクライナ紛争の先行きが見えず、またエネルギー価格の上昇など経済を下押しする要因もあり必ずしも楽観視できない要因もある。

 

 経済圏で見るとEU圏の2023年の成長率は0.7%であり、10月の数値と変わらない。これに対してASEAN5カ国は4.9%から4.3%に下方修正され、中東・中央アジア諸国も3.6%から3.2%に引き下げられている。EU圏はウクライナ紛争における対ロシア経済制裁及びエネルギー価格の急騰が西欧諸国にブーメラン効果を及ぼしており、昨年後半から経済成長が停滞している。また石油・天然ガスの産出国が多い中東・中央アジア諸国は、エネルギー価格高騰の恩恵を受け世界平均を上回る成長率であるが、こちらもエネルギー価格高騰が世界の経済成長を押し下げるブーメラン効果に見舞われ成長率が鈍化すると見込まれている。

 

 国別では今年の成長率は米国2.9%、日本1.8%、ドイツ0.1%、英国▲0.6%、中国5.2%、インド6.1%、ロシア0.3%である。中国はつい最近まで二桁の高い成長率を続けてきたものの、コロナ禍により成長率が急減速している。しかしそれでも世界平均の2.9%を上回る成長率が見込まれている。これに対してヨーロッパ諸国は上記の通りEU圏の成長率が1%を下回り、ドイツは0.1%とわずかな成長にとどまり、また英国はマイナス成長と見込まれるなどヨーロッパ諸国の不振が際立っている。

 

 一方アジアでは中国及びインドが5%を超える成長率が見込まれ、特にインドは世界最高水準の高度成長を達成しそうである。サウジアラビアは世界平均に近い成長が見込まれるが、これに対してロシアは0.3%の低成長にとどまっている。同国はサウジアラビアに並ぶ石油・天然ガスの生産国であるが、ウクライナ紛争の長期化による国内経済の悪化及び欧米諸国による経済制裁が大きく響くものと考えられる。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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カタールとトルコで分かれる明暗:世界主要国のソブリン格付け(2023年1月現在) (下)

2023-01-17 | その他

2.2020年1月以降の格付け推移

  ここでは2020年1月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

 

(欧米先進国は現状維持、2年間でランクを二つ上げた台湾!)

2. 世界主要国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

先進国の中ではドイツが過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を続けている。

 

これに対しアジアの経済大国中国と日本の格付けは3年間A+で推移している。AAAのドイツとは4ランク、米とは3ランクの格差があり、過去3年間格差は解消していない。これら欧米・アジアの経済大国より格付けは少し下がるが、石油大国のサウジアラビアはA-を維持している。同じ極東の国台湾は2020年までAA-であったが、2021年上期に韓国と並ぶAAに格上げされ、2022年上期に再度引き上げられ現在はAA+に格付けされている。

 

コロナ禍前の世界的な経済成長の中で注目されたBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字)諸国については、上述のとおり中国がA+である。その他の4カ国を見ると、インドは過去3年間BBB-である。これは投資適格の中で最も低く、S&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。」とされている。

 

2020年1月には南アフリカはBB、ブラジルはBB-でいずれも投資不適格であった。2020年上半期には南アフリカもBB-に格下げされ、以来今回まで同じ格付けである。BBの格付け定義は、「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされ、信用度が低い。BRICsの一角を占めるロシアは、昨年1月までインドと同じ投資適格では最も低いBBB-であったが、4月にウクライナと開戦したことに伴い、S&Pは同国をN.R.(No Rating)として格付け対象から除外しており、現在もその状態が続いている。

 

(アブダビに並んだカタール、復調著しいオマーン、低落傾向のクウェイト!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2020年1月時点ではUAE(アブダビ)及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。しかしクウェイトは2020年上半期にAAからAA-に格下げされ、2021年下半期にはさらにA+に落ちている。これに対してカタールは昨年下半期にAA-からアブダビと同格のAAに格上げされている。

 

3カ国は政治体制、人口・経済規模などが似通った産油(ガス)国である。それにもかかわらずクウェイトの格下げが止まらないのは、同国が中途半端な議会制民主主義を採用している結果、政情が安定せず経済改革がほとんど進まないことに原因があると考えられる。カタールについては前項でも触れた通り天然ガス(LNG)が世界的に品不足で価格が高騰したためである。

 

サウジアラビアはこれら3カ国より低くA-を続けている。同国はUAE(アブダビ)、クウェイト、カタールを大きくしのぐ石油歳入を誇っているが、一方で人口も3カ国より飛びぬけて多いため、財政的なゆとりが乏しい。S&Pはこれらの事情を考慮してサウジアラビアの格付けを厳しく見ている。

 

オマーンとバハレーンは投資不適格の格付けである。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がほとんどないバハレーンのソブリン格付けは過去3年間B+にとどまったままである。オマーンは2020年1月にはBB格付けであったが、同年中に一気に2ランク格下げされてバハレーンと同じB+まで落ち込んだ。その後2021年下期までバハレーンと同じ格付けが続いたが、2022年中に再び2ランク格上げされ、今年1月現在では3年前の2020年1月と同じBBに復帰している。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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カタールとトルコで分かれる明暗:世界主要国のソブリン格付け(2023年1月現在) (上)

2023-01-15 | その他

 本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の2023年1月現在の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。

 

 因みにS&Pの格付けは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている[3]。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.(No Rating)と表示される。

 

S&P(日本)ホームページ:

https://disclosure.spglobal.com/ratings/jp/regulatory/delegate/getPDF?articleId=2861876&type=COMMENTS&subType=REGULATORY

 

*過去のレポートは下記ホームページ参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html 

 

(格付けから外れたままのロシア!)

1.2023年1月現在の各国の格付け状況

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

2023年1月現在の格付けを半年前の7月と比べると最高格付けAAA(トリプルA)のドイツ、カナダ、シンガポール等の他、AA+の米国、AAの英仏、A+格付けの日本、中国など主要な国々に変動はなかった。

 

極東各国(地)の格付けは台湾と香港が同じAA+に格付けされている。韓国はこれら2カ国より1ランク低いAAであり、日本と中国はさらに2ランク低いA+とされている。台湾と香港の格付けは米国と同じであるが、米中の対立および中国の同化政策により香港の国際金融都市としての高い格付けが今後も維持されるかは不透明である。また台湾は政治的、軍事的に緊張をはらんだ状況に置かれているが、IT産業が好調であるなど、経済的には日本或いは中国よりも安定していることから高いソブリン格付けを得ている。今後、格付け機関が台湾と香港に対してどのような評価を下すのか注目されるところである。

 

G7の国々のうちドイツ及びカナダはAAAの最高格付けであり、米国は1ランク下のAA+、英国及びフランスはさらに1ランク低いAAである。そして日本はAAAより5ランク低いA+に格付けされ、イタリアは投資適格ではあるがBBBにとどまっている。因みに格付け定義ではAAは「債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(トリプルA)との差は小さい」とされ、これに対して格付けAは「債務を履行する能力は高いが上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい」とされている。そしてBBBの定義は「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」である。

 

G7以外の国ではアジア諸国のうちシンガポール及びオーストラリアがAAAに格付けされ、またMENA諸国では、アブダビ及びカタールがAAに格付けされている。カタールは昨年下半期にそれまでのAA-から1ランクアップしている、これはウクライナ紛争によるエネルギー危機が顕在化し、世界的に天然ガス(LNG)の需要がひっ迫したことがLNG輸出国のカタールの経済的地位を高めたためである。

 

その他の主要MENA諸国では、イスラエルがAA-である。またGCC諸国を見るとクウェイトはアブダビ、カタールより2ランク低いA+であり、サウジアラビアはA-とされている。GCC諸国の中で石油天然ガスの生産量が比較的少ないオマーンと殆ど石油が無いバハレーンは共に投資不適格のランクである。但しオマーンは油価高騰の恩恵を受け、今回BB-からBBに格上げされた一方、バハレーンの格付けはB+にとどまったままである。

 

MENAでは大国に位置付けられているエジプト及びトルコは共にBの格付けであり、特にトルコは昨年後半にB+からBに格下げされている。人口の多い両国はここ数年のコロナ禍で観光客が激減していることに加え、ウクライナ紛争による燃料、穀物価格の値上げで国内のインフレが悪化している。これらが格付けが低い原因である。因みに格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い」である。

 

 アジアの国々の多くは投資適格で最も低いBBBの格付けであり、タイ及びフィリピンがBBB+、インドネシアはBBBである。インドは投資適格では最も低いBBB-、ベトナムは投資不適格では最も上位のBB+である。南米のブラジルはBB-であり、南アフリカも同格である。またアルゼンチンの格付けはCCC+とされている。

 

 ロシアは昨年初めまでインドと同格のBBB-を維持していたが、ウクライナ紛争が長引き、同国経済の先行きが不透明となった結果、格付け対象から外さ、現在はN.R.(No Rating)とされている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。

[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

[3] S&Pの格付け定義についてはhttp://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf参照。

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IMF世界経済見通し:一年間で4度も下方修正されたGDP成長率 (5完)

2022-10-21 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0569ImfOct2022.pdf

 

5. 2022GDP成長率見直しの推移

 IMFの世界経済見通しは毎年4月、10月に全世界200弱の国について成長率の見直しが行われ、さらに1月及び7月には主要な国と経済圏の成長率が発表されている。主要な国と経済圏については3カ月ごとに検証されていることになる。

 

 最近の特徴はコロナ禍、ロシアのウクライナ軍事介入、エネルギー価格の激しい変動など国際経済を取り巻く環境が不透明感を増していることである。このためIMFの成長率見通しも3カ月ごとに大きく変動すると言う特徴が見られる。ここでは直近4回(2022年1月、4月、7月及び今回10月)の成長率見直しの推移を比較する。

 

(4回連続で下方修正された米国および中国!)

5-1 全世界及び日本、米国、中国の成長率見直しの推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03a.pdf 参照)

 直近4回のIMF経済見通しにおける2022年の世界のGDP成長率は2022年1月見通しでは4.4%であったが、その後4月は3.6%、7月3.2%と3回連続して下方修正され、今回10月は横ばいとされている。

 

 米国は4.0%(1月)→3.7%(4月)→2.3%(7月)→1.6%(10月)であり、4回連続して下方修正され今回の数値は1月の予測値の半分以下となっている。中国の場合も4.8%(1月)→4.4%(4月)→3.3%(7月)→3.2%(10月)であり、米国同様4回連続で下方修正されている。

 

 日本の2022年成長率は3.3%(1月)→2.4%(4月)→1.7%(7月)→1.7%(10月)に集成されている。4月、7月と連続して下方修正され、7月の成長率は1月の半分程度に引き下げられた。10月は直前の7月の成長率が維持されているが1%台の低い水準にとどまっている。

 

(OPEC+の盟主に極端な明暗!)

5-1 ロシアとサウジアラビアとインド

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03b.pdf 参照)

 サウジアラビアとロシアは米国と並ぶ三大産油国であり、両国はOPEC+(プラス)の盟主として最近の石油価格の高値安定を主導している。しかしロシアは2月にウクライナに侵攻、多くの国から経済制裁を受けた結果、GDP成長率はマイナスに暗転している。

 

このため両国の今年のGDP成長率は1月にサウジアラビア4.8%、ロシア2.8%とされた後は明暗を分けている。すなわち4月の見直しではサウジアラビアが+7.6%と上方修正された一方、ロシアは▲8.5%のマイナス成長と大幅に下落している。2月に始まったウクライナ紛争により石油価格が急騰したことは輸出国のサウジアラビアに大きな追い風となった一方、紛争当事者のロシアの経済は極めて不透明な状況である。

 

7月及び10月(今回)の成長率予測ではサウジアラビアは引き続き7.6%の高い成長を維持すると予測されている。一方、ロシアはエネルギー価格の高騰により経済が下支えされる結果となり、GDP 成長率は当初4月の▲8.5%から6.0%(7月)→▲3.4%(今回)へ改善されている。

 

 アジアの新興経済大国であるインドの2022年のGDP成長率予測は、9.0%(1月)→8.2%(4月)→7.4%(7月)→6.8%(10月)である。米国、中国などと同様連続して下方修正されている。しかしながら同国の今年の成長率は世界平均あるいは米国、中国を大きく上回る見通しである。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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