石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

日本は世界125位、政治参画分野の低さが致命的-「男女格差指数」(1)

2023-06-28 | その他

(世界ランクシリーズ その5 2023年版)

 

国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

第5回のランキングは世界経済フォーラム(WEF)が行った「世界男女格差報告2023 (The Global Gender Gap Report 2023)」をとりあげて比較しました。

 

*WEFのホームページ:

https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2023

 

1.「世界男女格差報告2023」について

 「世界男女格差報告2023(The Global Gender Gap Report 2023)」(以下「2023年版報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎冬スイスのダボスで行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。

 

 「2023年版報告書」は世界146カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。

 

(1)比較対象される分野とその内容

 対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。

I 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
   比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
          (4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率

II 教育分野:教育の機会に関する男女格差
   比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、(4)高等教育就学率

III健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
   比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命

IV政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
   比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
          (3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間

 

(2)指数化の方法と順位付け

146カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。なお項目によっては女性が男性を上回り、単純計算した指数は1を超える場合があるが、このレポートでは格差指数1が最大値とされている。

 

各比較項目の指数を加重平均したものがその分野の指数となる。更に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数として146カ国の指数を上位から順に総合順位を付けたものである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(5)

2023-06-02 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

プロローグ(5)

 

005.ヨーロッパとアジアをつなぐ中東(3/3)

ヨーロッパが南アジアに直接到達したのはアフリカ南端の喜望峰を経由する帆船ルートであった。陸上ルートはオスマントルコ帝国或いはペルシャ帝国との中継貿易に頼らざるを得ず自由な交易が阻まれていた。こうして15世紀から17世紀に「大航海時代」が訪れた。ヨーロッパ勢が海に乗り出した最大の理由はオスマン帝国の領土を迂回して胡椒や紅茶などのインド洋沿岸諸国の富を手に入れ、或いは中国の陶磁器、日本(ジパング)の金銀を手に入れるためであった。

 

こうしてヨーロッパ諸国は南アジアからインド洋の沿岸伝いに東へ東へと進出していった。帆船による点と点を結ぶ東洋進出であり、「大航海時代」は交易の時代であった。自らは有力な交易商品を持たない当時のヨーロッパ諸国は、インド洋ルートの寄港地であるアフリカ、インド、東南アジア、ジャワなどの産物を行く先々で仕入れ(あるいは略奪し)、物々交換の差益を巨大な富として自国に持ち帰った。そして蓄えた富で工業化を図り鉄砲など武器を製造するようになるとそれまでまがりなりにも対等であった交易が、19世紀には武器による侵略すなわち「植民地主義」によるアジア支配の時代に入ったのである。

 

西欧諸国にとってアジア・ルートの最大の障害はオスマントルコであったが、植民地侵略を通じてオスマントルコ支配地域は徐々に浸食され、19世紀後半の1869年にはフランスがスエズ運河を建設、その後英国が実質的な支配者となった。こうして地中海からスエズ運河、さらに紅海を経由してインド洋に至るルートが確保され西欧列強のアジア支配は確固たるものとなった。そして1914年から17年の第一次世界大戦でオスマントルコ帝国が敗れたことにより、中東から東南アジアに至る広大なアジア地域は英国、フランス、オランダの西欧植民地主義国家が支配し、彼らはアジアの富を独占したのである。

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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  見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(3)

2023-05-25 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

プロローグ(3)

 

003.ヨーロッパとアジアをつなぐ中東(1/3)

 

 世界六大陸の中で最大のユーラシア大陸(Eurasia)はその英語名が示す通りヨーロッパ(Euro)とアジア(Asia)を合成した言葉である。それではヨーロッパとアジアの境界がどこかと言えば、境界線の一つが現在のトルコのボスポラス海峡であるとするのがほぼ常識的な見方であろう。ボスポラス海峡の西側がイスタンブールであり、海峡の対岸にあるウスクダラはアジアの入り口となる。日本が建設したボスポラス大橋は、まさにヨーロッパとアジアを結ぶ架け橋なのである。そしてウスクダラからトルコの首都アンカラのあるアナトリア高原一帯は「小アジア」と呼ばれている。

 

 アジアの呼称は15世紀に始まる「大航海時代」に当時のスペイン、ポルトガル、オランダそしてイギリスの各国が使い始めたものである。これらヨーロッパ諸国は、現在のインドからインドネシアに至る広大な海域で互いに貿易の覇権を競い植民地支配を強めていくが、この過程でアジアという地理的概念が確立されていった。それはヨーロッパ側からの一方的な決めつけであり、彼らがアジアと一括りにした広大な地域の住民は自分たちが一つのアジアであると認識していたわけではない。早い話、日本人の全てがイスラムを信奉するアラブ人を同じアジアの人間と考えているとはとても思えない。

 

ところが中東の人々は日本も自分たちと同じアジアとみなしている。中東の人々が極東の国々を同じアジアとみなすのは、近代になりヨーロッパあるいはその流れをくむアメリカによって世界秩序が形成される過程で彼らの定義を押し付けられ刷り込まれた結果であることは間違いない。各種スポーツ競技の世界予選の区分けを見れば一目瞭然である。サッカー・ワールドカップの「アジア地区予選」は極東の日本から中東各国までまたがっている。つまりヨーロッパ人は自分たちが「ヨーロッパ」と決めた地域以外は十把一絡げに「アジア」と決めつけたのである。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(1)

2023-05-19 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

(目次)

プロローグ(1)

 

1.スエズ運河グレート・ビター湖の会談(1/2)

 第二次世界大戦における連合国の勝利が確実となった1945年2月14日。スエズ運河北部に位置するグレート・ビター湖。そこに浮かぶ米国の最新式巡洋艦クインシー号上で米国大統領フランクリン・D・ルーズベルトはサウジアラビア初代国王アブドルアジズ・ビン・アブドルラハマン・アル・サウド(通称:イブン・サウド)と首脳会談を行った。

 

 ルーズベルト大統領は直前の4日から11日までクリミア半島のヤルタで英国チャーチル首相、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)スターリン書記長と3者会談を行い(ヤルタ会談)、第二次大戦後の新しい世界秩序や日本の無条件降伏について話し合っている。

 

ルーズベルト大統領はヤルタ会談終了後マルタ島経由で直ちに帰国する予定であった。しかしマルタで戦艦クインシーに乗艦したルーズベルトは米国本土に向かうのではなく、地中海におけるドイツの潜水艦Uボートによる攻撃の危険を冒してクインシーをスエズ運河に回航させ、サウジアラビア国王と会談を行った[i]。大統領が帰国前の貴重な時間を割き危険を冒してまで国王と会談したことは、彼自身及び米国が戦後のアラブ世界の盟友としてサウジアラビアを重視していたことを何よりも明白に物語っている。

 

米国がサウジアラビアを重視した理由の一つは同国の地下に眠る石油資源にあった。第一次世界大戦でドイツの猛攻にあったフランスのクレマンソー首相が当時の米国大統領ウィルソンに宛てた「石油の一滴は血の一滴」と言う有名な電文があるが、第二次大戦でその価値がますます実証され、戦後の経済復興にも不可欠なものであることはルーズベルトならずとも誰の目にも明らかだった。

 

 両世界大戦の谷間の1930年前後にイラク及びクウェイトで大油田が発見され、ペルシャ湾が大油田地帯であることが立証された。その掉尾を飾るのが1940年の米国石油企業による世界最大のサウジアラビア・ガワール油田発見である。70数年後の今もガワール油田の埋蔵量を上回る油田は発見されておらず、今後もこの記録が破られることは無いであろう。ガワール発見のほぼ一年前に第一次世界大戦が勃発したため、本格的な油田の開発は凍結されたままであった。第二次大戦中の石油の消費量は第一次大戦時の実に百倍に達しており、米国は新しく発見する以上のペースで消費し石油の供給が先細りになっていることを大統領は憂慮していた。米国としては戦争が終わり次第一刻も早くサウジアラビアの油田の開発に乗り出すことで、石油を安定的に確保するとともに合わせて戦後の世界エネルギーの覇権を握りたかったのである。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

 

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

[i] レイチェル・ブロンソン著「王様と大統領 サウジと米国、白熱の攻防」(佐藤陸雄訳、毎日新聞社刊)P.71参照

 

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(写真は語る)激動する中東外交とその顔(1)

2023-05-11 | その他

(注)本稿は「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0576MeDiplomacy2023JanMay.pdf

 

 中東の外交が激しく動いている。サウジアラビアとイランの和解、シリアのアラブ連盟復帰、エジプトとトルコの雪解け、イランの近隣諸国への接近等々、その例は枚挙にいとまがない。背景にあるのは米国の中東離れ、或いはロシアとウクライナの戦争など中東をめぐる国際政治の動きであり、欧米先進国に対抗するグローバルサウスの動きであろう。そこに石油・天然ガスのエネルギー問題が絡む。

 

 最近の外交の特色は各国首脳が相手国を訪問したり、サミットで直接言葉を交わすようになったことであろう。新型コロナウィルスが終息しつつあるためである。

 

 以下の写真は今年1-5月にかけて各国のトップあるいは外務大臣が外国を訪問した際の報道写真である。これによって激しく変化する中東外交の姿が垣間見ることができる。

 1月4日、UAEのアブダッラー外相(大統領実弟)がシリアを訪問、アサド大統領と会談した。シリアはアラブ連盟から除名され、米国から経済制裁を受けるなど国際社会から孤立していたが、国内ではロシアとイランの後押しでIS(イスラム国)を討伐し、また米国やサウジアラビアの支援を受ける反政府勢力を実力で抑え込みほぼ全土を掌握している。シリアは国際的な地位の回復を目指して昨年から動き始めた。

 

かたやUAEはイスラエルと国交を回復、自信を持った同国はGCCの先陣を切ってシリアとの関係改善に乗り出した。同国は西側(イスラエルー米国)あるいは東側(シリアーロシア)のいずれか一方だけに与することなく、またGCCの盟主を自認するサウジアラビアとも一定の距離を保ち、地域の外交問題に積極的に関与しつつある。グローバルサウス陣営の中東における先導者を目指しているようである。

 10日後の1月14日、イラン外相がシリアを訪問、アサド大統領と会談した。両国の経済は西側の制裁を受けて苦境にある。イランは米国の核協議離脱により外交面でも苦しく、また宗教面では宗派(シーア派対スンニ派)でアラブ諸国と対立、さらには女性のスカーフ着用問題で欧米市民の反感を買っている。

 

 しかしイランが世界から孤立しているかと言えば決してそのようなことはない。イラン首脳はアラブ諸国の反イスラエル(反ネタニヤフ)感情を掻き立て一定の外交的成果をあげている。

 一方で、自他共にアラブ及びアフリカの盟主とされるエジプトは1月31日、外相がロシアを訪問した。ウクライナとの戦争でロシアは日本を含む欧米先進国から制裁を受け苦境にある。しかし国際的に孤立無援という訳でもない。国連制裁決議には中国、インド、エジプト、アフリカ諸国などいわゆるグローバルサウス各国は賛成票を投じていない。そしてロシアはエネルギー大国であり、また食糧・肥料の輸出大国である。ロシアは自国が開発途上国の死活を握っていることを承知している。

 

 これに対してエジプトはロシアに石油及び食料の安全保障を期待している。と同時に、戦争で余裕のないロシアに代わってシリア、リビア、スーダン各国の問題を解決し、アラブ諸国に対して引き続き盟主であり続けようとしている。盟主の地位を狙うトルコやサウジアラビアの台頭を許すわけにはいかないのである。

 

(続く)

 

 

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     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(7完)

2023-05-07 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0575WorldRank7.doc.pdf

 

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

(武器輸入額ではインドが世界一、日本は世界11位!)

(2) 主要国の武器輸入額(2013年~2022年合計額)

(図http://rank.maeda1.jp/7-G07.pdf参照)

 2013年から2022年までの10か年間の武器輸入累計額は世界全体で約2,800億ドルであった。国別ではインドが最も多く同国の輸入累計額は327億ドル、世界全体の12%を占めており、輸入国第2位はサウジアラビアの278億ドル、世界シェアは10%である。因みにインドの輸入相手国はロシアが最も多く全体の55%を占め、次いでフランスである。サウジアラビアの場合は68%を米国が占めている。

 

 第3位はエジプト、第4位中国である。中国の過去10年間の武器輸入累計額は123億ドルであるが、前項でも述べた通り同国は輸出額でも世界第4位であり、武器貿易が活発なことを示している。中国に次いでオーストラリア及びカタールが輸入累計額100億ドル(年平均10億ドル)を超えている。7位から10位はUAE、パキスタン、アルジェリア及び韓国でその額は90~80億ドル(年平均9~8億ドル)である。因みに日本の過去10年間の武器輸入累計額は67億ドル、年間平均7億ドルであり、韓国に次いで世界11位に相当する。日本の場合、軍事費(2022年、460億ドル、第1項参照)に比べ輸入額の割合が小さいのは武器の国産化が進んでいるためと考えられる。

 

以上

 

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(6)

2023-05-05 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0575WorldRank7.doc.pdf

 

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

6.世界の武器輸出国と輸入国

 ここでは世界の武器の輸出入額を取り上げる。各国の輸出額あるいは輸入額は年度によって大きく変動するため、2013年から2022年までの10年間の累計額について比較検討を行う。

 

(世界の二大武器輸出国―米国とロシア!)

  • 主要国の武器輸出額(2013年~2022年累計額)

(図http://rank.maeda1.jp/7-G06.pdf参照)

 2013年から2022年までの10か年間の武器輸出累計額は世界全体で約2,800億ドル強であり、年間平均では284億ドルになる。国別では米国とロシアが際立って多く、米国の10年間の輸出総額は1,041億ドル、ロシアは547億ドルであった。世界全体に占める割合はそれぞれ37%及び19%であり、2か国を合わせると世界の武器輸出額の6割近くを占めている。

 

 米国、ロシアに次いで輸出額が多いのはフランスの252億ドルであるが、米国あるいはロシアの2乃至4分の1にとどまっている。これら3カ国に続いて累計輸出額が100億ドルを超えているのは中国(164億ドル)、ドイツ(146億ドル)、英国(112億ドル)である。なお次項(輸入額)に触れるとおり中国は輸入額でも世界第4位であり武器貿易大国である。

 

 武器輸出額7位から10位はイタリア、スペイン、イスラエル及び韓国である。上位10か国のうちEU諸国が半数の6カ国を占めており、EUは世界的な武器生産地域であることがわかる。なお上位10カ国は戦闘機、艦船、戦車、ミサイルなど高額な兵器を得意としているため輸出額が膨らんでいる。しかし世界の多くの紛争地域では小銃、機関銃、地雷、ロケットなど小型火器が使われている。その意味ではウクライナ(輸出総額32億ドル、世界12位)、トルコ(同25億ドル、世界13位)などは、米国あるいはロシアに比べ金額的には少ないが影響力は小さくないと言えよう。このうちトルコは攻撃型UAV(ドローン)の輸出に力を入れているが、このような比較的安価なIT兵器は今後トルコを含めた開発途上国の有力な輸出商品になるものと思われる[i]

 

(続く)

 

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[i] レポート「中東に広まるドローン(UCAV)の開発と軍事利用」参照。

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(5)

2023-05-03 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0575WorldRank7.doc.pdf

 

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

(10年前に比べ中国は1.8倍、インド1.7倍増、日本は減少!)

5.主要国の軍事費の推移(2013年~2022年)

(図http://rank.maeda1.jp/7-G05.pdf参照)

 主要国の過去10年間(2013年~2022年)の軍事費の推移を比較すると、2013年の軍事費は米国が6,792億ドルで最も多く、これに次ぐのは中国の1,641億ドルであった。米国と中国の1,2位は10年間変わっていないが、両国の格差は2013年の4.1倍から2022年には3.9倍に縮小しており、中国の軍事費が急速に膨張していることがわかる。

 

米国の軍事費は2013年以降2015年までは減少したが、その後は年々増加し2021年には8千億ドルを超え2022年には8,769億ドルに達している。これに対して中国の軍事費は年平均7.8%増加、2017年には2千億ドルを突破、2022年は2,920億ドルと10年間で1.8倍に増加している。

 

インドも中国と同様毎年軍事費は増加し2013年の474億ドルから2022年には1.8倍の814億ドルに増加しており、世界順位も8位から4位に上がっている。

 

これら3カ国に対して日本の軍事費は減少傾向にある。2013年の軍事費は490億ドルであり、その後2019年から2021年までの3年間は500億ドル台に増加したが、2022年には460億ドルに減少、10年前の水準を下回っている。この結果10年前は世界7位であったが、2022年の世界ランクは10位である。

 

ロシアの2013年の軍事費は884億ドルで米国、中国に続く世界3位の軍事大国であった。2015年には664億ドルに急減、その後2021年までは600億ドル台にとどまった。しかし2022年には再び864億ドルに急増している。ウクライナ侵略戦争によるものである。

 

英、仏、独とイタリアの西欧4カ国及び韓国は軍事費世界ランク上位の常連国であるが、2013年と2022年の金額と世界ランクを示すと以下のとおりである。

英国:            638億ドル(2013年、世界5位)  → 685億ドル(2022年、同6位)

フランス:        520億ドル(2013年、世界6位)  → 536億ドル(2022年、同8位)

ドイツ:           442億ドル(2013年、世界9位)  → 558億ドル(2022年、同7位)

イタリア:        300億ドル(2013年、世界12位) → 335億ドル(2022年、同12位)

韓国:            343億ドル(2013年、世界10位) → 464億ドル(2022年、同9位)

 

また中東の軍事大国サウジアラビア、イスラエル、トルコ、イラン及びエジプト5カ国について同様の傾向を見ると次のとおりである。

サウジアラビア:670億ドル(2013年、世界4位) → 750億ドル(2022年、同5位)

イスラエル:     162億ドル(2013年、世界18位) → 234億ドル(2022年、同15位)

トルコ:          184億ドル(2013年、世界16位) → 106億ドル(2022年、同23位)

イラン:           120億ドル(2013年、世界20位) →  68億ドル(2022年、同34位)

エジプト:         44億ドル(2013年、世界43位) →   46億ドル(2022年、同46位)

 

(続く)

 

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(4)

2023-05-02 | その他

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

(ロシア支援国ベラルーシは歳出の3分の1が軍事費!)

4.歳出に占める軍事費の比率

(図http://rank.maeda1.jp/7-G04.pdf参照)

 次に歳出に占める軍事費の比率を見ると、世界1位は東欧の独裁国家ベラルーシであり、同国は歳出の3分の1を軍事費に充当している。第2位から第4位にはGCCのサウジアラビア(27.79%)、カタール(23.84%)及び北アフリカのソマリア(20.37%)であり、これらの国々の軍事費は歳出の20%を超えている。サウジアラビアの軍事費は金額で世界5位、一人当たりでは世界3位、GDP比率では世界2位である(1~3節参照)。世界最大の産油国の一つである同国は軍備に金を惜しまない国であることを示している。

 

 その他主要国の比率を比べると、イランは世界9位の17.32%、イスラエル12.17%、韓国10.57%、ロシア10.35%が10位台後半から20位台に並んでいる。インドは8.26%であり、トルコ4.40%、エジプト4.34%である。軍事費総額で米国に次ぐ世界2位の中国は歳出に占める比率は4.79%で世界66位にとどまっている。日本は2.53%であり、これは世界123位に相当する。世界的に見ると日本の軍事支出は少ないと言えよう。なお米国はデータが示されていない。

 

(続く)

 

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日本は世界10位、急伸したウクライナ:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(3)

2023-05-01 | その他

(世界ランクシリーズ その7 2023年版)

 

(ウクライナが突出、GDPの34%に達する軍事費!)

3.軍事費のGDP比率

(図http://rank.maeda1.jp/7-G02.pdf 参照)

 各国のGDPに占める軍事費の比率を見ると、世界1位はウクライナであり、その比率は34%である。2位サウジアラビアの7.4%に比べウクライナは突出している。3位以下の国とその比率は次のとおりであり、12位のロシアまでがGDP比率4%を超えている。

 

 カタール(6.96%)、トーゴ(5.44%)、オマーン(5.17%)、ヨルダン(4.84%)、アルジェリア(4.78%)、アゼルバイジャン(4.55%)、クウェイト(4.53%)、イスラエル(4.51%)、アルメニア(4.32%)、ロシア(4.06%)

 

 上位の顔触れを見ると中東・北アフリカ(MENA)諸国が多い。これに次いで多いのがウクライナ、ロシア、アゼルバイジャンン、アルメニアなど中東と隣接したユーラシア地域の国々である。紛争が多い両地域が過大な軍事費を負っている姿が浮かび上がる。中東地域の大国であるトルコ、イラン、及びエジプは軍事費総額ではそれぞれ世界23位、34位、46位であるが、GDP比率はイラン2.30%、トルコ2.06%、エジプト1.30%で、世界順位はそれぞれイラン29位、トルコ92位、エジプト107位であり、トルコ、エジプト両国は軍事費のGDP比率が世界の中でも低い。

 

その他の主要国を見ると米国は3.45%、韓国2.72%、インド2.43%、中国1.60%などである。日本のGDP比率は1.08%、世界106位であり欧米先進国の中でも最も低い水準にとどまっている。

 

(続く)

 

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