(注)本レポート上、下は前田高行論稿集 マイ・ライブラリー」で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/
I.ExxonMobilの業績(上)
ExxonMobil、Shell及びBPは三大国際石油会社(International Oil Company, IOC)或いはスーパー・メジャーと呼ばれているが、これら三社の昨年第四四半期及び通年業績が相次いでホームページに公表された。
本稿では三社の公表資料の中から2011年度の売上高、利益、石油及び天然ガスの生産量並びに設備投資額を取り上げて分析するとともに、過去5年間(2007~2011年)の各社の業績の推移を見ることとする。そしてシリーズの最後に三社を横並び比較し、その優劣を検討して見る。
最初に取り上げるのはExxonMobil社である。(詳細は下記同社HPを参照)
http://www.businesswire.com/portal/site/exxonmobil/index.jsp?ndmViewId=news_view&ndmConfigId=1001106&newsId=20120131006006&newsLang=en
1.2011年の売上・利益・投資及び生産量
(1)売上高
ExxonMobilの2011年1-12月の売上高は486,429百万ドルであり、前年度の売上383,221百万ドルに比べ27%の増収となった。後述の如く同社の原油と天然ガスの合計生産量は前年比微増であったにもかかわらず平均価格が大幅に上昇したことが増収の要因である。
(2)利益(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-93aExxon.pdf 参照)
利益は41,060百万ドルであった。これは前年度(30,460百万ドル)に対し35%上昇しており、売上高増収(+27%、上記)以上の結果となった。この利益額は日本円で2.9兆円程度に達し、国際石油企業の強靭さを見せつけたと言えよう。
利益の内訳を上流部門(原油生産)と下流部門(石油精製販売)に分け、さらにそれぞれを米国内と米国外に分けて比較すると、まず最も利益が多かったのは米国外の上流部門であり、全体の利益の71%の29,343百万ドルを稼ぎ出している。これに次ぐのが米国内の上流部門で利益額は全体の12%、5,096百万ドルであった。これらを合計すると同社の利益の8割強が上流部門によるものであることがわかる。
これに対し下流部門はExxonMobil全体の利益の11%を占めるにすぎず、米国外で2,191百万ドル、米国内では2,268百万ドルの利益を計上している。同社は利益の殆どを海外の上流部門に依存していると言える。
(3)設備及び探鉱投資
2011年度の投資総額は36,766百万ドルであり、同社は利益とほぼ同じ程度の投資を行っている。投資を上流部門、下流部門、化学部門およびその他に分けると、上流部門には全体の90%を占める33,091百万ドルが配分されている。利益に占める上流部門の比率は83%であり(上述)、これを上回る比率で上流部門に投資していることになる。同社は事業の軸足を上流部門に移していると言えよう。
(4)石油・天然ガスの生産量
2011年の石油と天然ガスの生産量は石油が一日当たり平均231万バレル(以下B/D)であり、天然ガスは日産131億立法フィート(以下cfd)である。石油の生産量はナイジェリア一国に匹敵する生産量であり、天然ガスはイランよりやや少ない程度である 。天然ガスを石油に換算し石油と合計した場合、ExxonMobilの生産量は451万B/Dとなるが、この生産量はメキシコ、ノルウェーを上回り世界第7位の規模である。
石油生産量を地域別にみると、最も多いのはアジア・大洋州の86万B/Dであり、続いてアフリカ51万B/D、米国42万B/D、欧州27万B/Dである。また天然ガスについてはアジア・大洋州が最も多く(54億cfd)、次いで米国(39億cfd)である。特に米国における天然ガスの生産量は近年大幅に増加しており3年間で3倍に急増している。米国では現在シェール・ガスの開発がブームを呼んでおり、ExxonMobilもMarcellus社の買収など積極的な投資を行って米国での天然ガス生産に力を入れている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp