(注)本レポートは「前田高行論稿集 マイライブラリー」で一括ごらんいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0219BpOilGas2011.pdf
BPの「BP Statistical Report of World Energy 2011」をもとに本シリーズで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。
1.世界の石油と天然ガスの埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-1-90OilGasReserveByRegion2010.pdf 参照)
(1)2010年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量
2010年末の世界の石油の埋蔵量は1兆3,832億バレルであるが、これに対して天然ガスの埋蔵量は187兆立方メートル(以下㎥)であり、これは石油に換算すると1兆1,771億バレルとなり、石油の埋蔵量は天然ガスよりやや多いことがわかる。両者を合わせた合計埋蔵量は2兆5,603億バレルとなる。
これを地域別に見ると、中東は1兆2,293億バレルであり、世界全体の埋蔵量の半分(48%)を占めている。次いで欧州・ユーラシアが5,364億バレル(21%)であり、この両地域で世界の埋蔵量の7割を占めている。その他の地域については中南米2,860億バレル(11%)、アフリカ2,247億バレル(9%)、アジア・大洋州1,470億バレル(6%)であり、北米は最も少ない1,368億バレル(5%)となっている。
本シリーズの石油篇及び天然ガス篇で触れたそれぞれの地域別埋蔵量と比較すると、中東は石油埋蔵量が全世界の54%を占めているが、天然ガスのそれは41%である。これに対して欧州・ユーラシアの石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ全世界の10%及び34%であり、天然ガスが石油の3倍あり、中東とは逆の様相を示している。
(2)国別埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-1-90OilGasReserveByCountry2010.pdf 参照)
埋蔵量を国別に見ると、原油と天然ガスの合計埋蔵量が最も多い国はロシアの3,590億バレル(以下いずれも石油換算)であり、世界全体の14%を占めている。ロシアは石油埋蔵量では世界7位(774億バレル)であるが、天然ガスの埋蔵量(45兆㎥、石油換算2,816億バレル)が非常に多いため合計埋蔵量では世界一となっている。2位と3位はそれぞれイラン及びサウジアラビアで、両国の埋蔵量はイラン3,233億バレル、サウジアラビア3,149億バレルである。サウジアラビアは石油埋蔵量(2,645億バレル)が世界1位であるが、天然ガスは石油の5分の1弱(石油換算504億バレル)であり、一方イランは石油の埋蔵量は1,370億バレルに対して天然ガスの埋蔵量は石油換算1,862億バレルで合計埋蔵量ではサウジアラビアより若干多い。
これら3カ国に続くのがベネズエラである(2,455億バレル、内訳:石油2,112億バレル、天然ガス5.5兆㎥)。第5位はカタールであり、同国の場合は石油埋蔵量(259億バレル、世界13位)に対し、天然ガスは世界3位の25.3兆㎥(石油換算1,593億バレル)を有しているため、合計埋蔵量では世界第5位である。これら上位5カ国だけで世界シェア合計は5割を超え、石油及び天然ガス資源が一部の国に偏在していることがわかる。
6位から10位まではUAE(石油換算合計1,357億バレル、以下同じ)、イラク(同1,349億バレル)、クウェイト(同1,127億バレル)、米国(同794億バレル)、ナイジェリア(同705億バレル)と続いている。クウェイトは石油こそ世界第5位の埋蔵量(1,015億バレル)であるが、天然ガスの埋蔵量は可成り少なく世界19位である。
これら上位10カ国の世界シェア合計は77%であり、世界の石油・天然ガス埋蔵量の4分の3をこれら10カ国が握っている。
(3)可採年数の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-1-97OilGasRPHistory.pdf 参照)
2010年末の石油と天然ガス全体の可採年数は51年である。石油の可採年数46年よりも長く、天然ガスの59年よりは短い。1980年以降2010年末までの推移をみると、1980年の可採年数は37年であった。この年の石油の可採年数は29年であり天然ガスの56年のほぼ2分の1であった。当時は天然ガスに比べ石油の生産量が格段に多かったため石油と天然ガスを合わせた可採年数は石油に近い数値となっている。その後80年代は石油の可採年数の増加に歩調をあわせ80年代末には可採年数は50年に延びている。
90年代以降2007年末までは石油の可採年数は40年強の横ばい状態であり、一方天然ガスの可採年数は2001年に68年のピークに達したあと最近は60年前後で推移している。その結果1990年以降の石油と天然ガスを合わせた可採年数はほぼ50年前後で推移している。ここ5年間で見ると2006年に48年であった可採年数は、07年に49年、08年は51年、09年にはさらに53年に伸びたが、2010年の可採年数は再び51年に戻っている。
(続く)
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