石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(再掲)SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(10)

2021-10-05 | 荒葉一也SF小説

初出:2010年9月

 

サウジアラビアの秘かな動き(1)

 基地のモスクで金曜の夜明けの礼拝を済ませた司令官トルキ王子は近くの荒野で鷹狩を楽しんでいた。ハファル・アル・バテン基地はイラクとの国境近く、ネフド砂漠の北端に位置している。砂漠の荒野にも野兎や渡り鳥など鷹の獲物は多い。鷹狩はトルキ王子のようなサウド家の王族たちのたしなみでもある。

 

 夏の盛りとは言え早朝の砂漠はひんやりと風も心地よい。2003年にイラクのフセイン大統領が失脚するまで、この空軍基地は北の守りとして緊張した日々の連続であった。しかし解放後にイラク国内の混乱が始まってからは、国境の守りはイスラムゲリラ、アル・カイダの侵入を防ぐことや、酒・麻薬などの密輸業者を摘発することであった。それは国境警備隊、地上パトロール隊の仕事であり、空軍の出番は全くない。そのためトルキ司令官は普段から暇を持て余しており、鷹狩りは暇つぶしと言う訳である。つい今し方までは------。

 

 突然王子の白くゆったりした民族衣装の右のポケットからコーランの一節が流れ出した。携帯電話の呼び出し音だ。左のポケットにはもう一台普通の携帯電話があるが、今鳴り出したのは軍及び内務省幹部専用の携帯電話である。軍及び内務省幹部と言ってもここサウジアラビアでは大臣以下殆どがサウド家の王子で占められている。しかも彼らは一族の中でも特に血のつながりが濃い王子たちである。例えば国防大臣がトルキ司令官の父親であるように。

 

 「ああ、父上、何かあったのですか?」王子は育ちの良さそのままの明るく屈託のない声で電話に答えた。電話の相手が国防大臣と知った部下達の顔に一瞬緊張が走る。国防大臣は初代国王の15番目の息子であり、また先代国王の実弟でもある。初代国王は多数の王妃を娶り30数人の息子をもうけたが、彼の死後はその息子達がほぼ年齢順に王位を継承している。国防大臣の母親はトルキ王子の父親を含め7人の息子を生んだが、彼ら7人兄弟は結束を固め他の異母兄弟と張り合ってきた。特に長兄が国王として長期政権を確立する過程で弟達を政府の要職に引き上げた結果、彼ら7人兄弟はサウド家の中で確固たる地位を築き上げたのである。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

 

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石油と中東のニュース(10月5日)

2021-10-05 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPEC+閣僚会合、減産緩和政策継続で合意。11月も40万B/D増産。 *

*「UAEの反乱で流会になったOPEC+(プラス)会合」(2021年7月)参照。

・OPEC+決議を好感、Brent原油3年ぶりの高値80ドルに

・サウジアラムコCEO:2027年までに原油生産能力1,300万B/Dに引き上げ

(中東関連ニュース)

・エジプト、ロシア両外相モスクワ会談。シリア、リビア問題で意見交換

・イラン外務省:核協議は11月初めに再開

・シリア大統領、10年ぶりにヨルダン国王と電話会談

・ヨルダン王室、「パンドラ・ペーパー」指摘の国王疑惑を否定

・エジプト国営航空がイスラエル便運航開始

・カタール国政選挙、女性当選者ゼロに失望感。首長選出枠15名に望みつなぐ

・イランの平均寿命、1976年の57歳が現在は76歳。15歳以下の人口は23%

 

 

 

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