(英語版)
(アラビア語版)
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」
7.ナタンズ爆撃(上)
サウジアラビアのハファル・アル・バテン基地北方を通過した3機の戦闘機は機首を北東に向けイラク領空を一気に駆け抜けた。眼下にシャトル・アラブ川の湿地帯が見える。いよいよイラン領である。パイロット達に緊張が走る。行く手にザグロス山脈の赤茶けた山塊が立ちはだかる。山脈を越えるとナタンズまでは指呼の間であるが、ナタンズの南方数十キロメートルのイスファハンにはイラン空軍の基地があり、いつスクランブルをかけられるかわからない。
パイロット達は臨戦態勢に入った。イスファハンのモスクのミナレット(尖塔)を視野に入れると3機は高度2万メートルから急下降を開始、天空から真っ逆さまに落下する3本の矢となった。超高空から一気に高度を下げ、目標を爆撃した後、直ちに超高空に戻る「ハイ・ロー・ハイ」作戦の第二段階である。
パイロットが目にする地上の風景は一面の荒野であり視界を横断する道路が幾何学模様を織り成しているだけである。しかしパイロットが地形を確認する必要は無い。あらかじめプログラムされた攻撃目標は目の前の液晶画面に映し出され、機首は真っ直ぐ目標に向かっている。彼はただ目を凝らして左手で操縦桿を握り、右手の親指をミサイル発射ボタンに軽く当てるだけである。
右翼後方の「マフィア」が下降速度を上げて抜け出した。攻撃の一番手である。そして少し遅れて「エリート」が続き、その後ろに「アブダラー」がつける。3機の陣形がそれまでの三角形から直線に替わった。
(続く)
荒葉一也