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0556GasFromRussia.pdf (maeda1.jp)
1.はじめに
ロシアのウクライナ侵攻により同国と西欧諸国をめぐる天然ガスの貿易問題がクローズアップされている。同国は世界最大の天然ガス埋蔵量を誇っており、生産量も米国に次いで世界第2位である(bp統計による)[1]。生産される天然ガスは国内消費を除きその多くが西欧に輸出されている。西欧各国にとってもロシアは最大の輸入国であり、両者は天然ガスに関して切っても切れない関係にある。この事実がウクライナ問題を複雑にしていることは間違いない。
本稿では英国石油企業bp社の「bp Statistical Report of World Energy 2021」によりロシアと西欧諸国の天然ガス貿易の現状を概観し、合わせて今後の石油・天然ガス市場の動向を推察しようとするものである。
(ヨーロッパ向けに輸出の8割を依存!)
2.ロシアの天然ガス輸出先
(1) パイプラインによる輸出(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-2-G03.pdf 参照)
ロシアとヨーロッパ諸国間には多くの天然ガスパイプラインが敷設されている。古くからあるのがウクライナを通過するSoyuz、Brotherhoodライン、あるいはベラルーシを通過するNorthern Lightsラインであり、新しくはバルト海を経てドイツに至る海底パイプラインNordstream1がある。その他最近では黒海を横断するSouth Streamラインのほか、完成しているが未稼働のNordstream2もある(下図参照)。
(JOGMEC作成、2013年7月)
BP統計によればロシアのパイプライン天然ガス輸出総量(2020年)は1,977億立法メートル(以下㎥)であり、仕向け先は欧州が1,677億㎥、ベラルーシ176億㎥、中国39億㎥、その他が85億㎥である。全体の85%が欧州に輸出されていることになる。
(2)LNGによる輸出(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-1-G04.pdf参照)
最近では液化天然ガス(LNG)の輸出量も増加している。LNGの輸出量は404億㎥であるが、その内訳は欧州172億㎥(43%)、日本84億㎥(21%)、中国69億㎥(17%)、その他79億㎥(19%)となっている。
(3)パイプラインとLNG合計輸出量(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-3-G06.pdf参照)
パイプラインとLNGを合計した輸出量では西欧向けが1,849億㎥で全体の78%を占めており、中国向け108億㎥、日本向け84億㎥を大きくしのいでいる。ロシアの天然ガス輸出はほとんどが西欧向けなのである。
(続く)
以上
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[1] レポート「世界の石油と天然ガス:bpエネルギー統計 2021 年版」参照。