石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「ナクバの東」(49)

2022-11-07 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)

 

49. 長女アナット(1)

 

「シャロームは最近顔を見せないが元気でやっているのかね?」

 退役将軍は溺愛する孫娘のルートをひざにのせ読み聞かせていた絵本から目を離すと長女のアナットに次女シャロームの様子を聞いた。現役時代はその精悍な面構えとカミソリのような切れ味で恐れられた将軍も孫娘と過ごす今は世間のどこにでもいる好々爺の顔になる。

 

 「病院の仕事が忙しいんじゃないの。あの娘は子供達のベッドを見て回ったり、男の医師に混じって新型ウィルスとか何とか訳のわからない議論をしているのが好きみたいだから。」

 

アナットは振り返ってそう答えるとまたすぐにパソコンに打ち込んだ父のスケジュール表に目を落とし、今日の来客をどう裁くかという問題に没頭した。父が空将を退役した後も家には来客が絶えず、アポイントメントの調整は彼女に任されていた。彼女がまだ子どもの頃から父の部下が入れ替わり立ち替わり家に訪れていたため彼女の頭の中には彼らの顔はおろか細かい癖までインプットされており、父の秘書としてはうってつけであった。

 

将軍は退役した今も軍の内部に穏然たる力を持っている。時の首相も彼の意見を求めて時々自宅を訪ねてくるほどである。そのほかにも彼の影響力を期待しているのか、どことなく胡散臭い人物も家に出入りし密談をしては帰って行く。

 

彼らが帰った後、将軍は決まって書斎を締め切り家族すら入れずに誰かと電話をしている。アナットは毎月の電話の請求書にワシントンやロンドンなどの国際電話局番があるのを知っている。父親はそのほかにもいろいろな国と交信しているようだ。局番を調べれば相手の国は解るのだが、アナットにとっては父親が国家の重大機密にあずかっていると言うことだけで十分であり、詮索するつもりは毛頭ない。彼女にとって父親はこの世でただ一人尊敬できる絶対的な存在である。

 

(続く)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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巨額の利益、Exxon197億ドル、アラムコ424億ドル:2022年7-9月期石油企業決算速報 (1)

2022-11-07 | 海外・国内石油企業の業績

 スーパーメジャーと呼ばれる五大国際石油企業(ExxonMobil、Shell、bp、TotalEnergies、Chevron:International Oil Companies、以下IOCs)及びサウジアラビア国営石油会社Saudi Arabian Oil Company(以下アラムコ)の7-9月四半期期決算が相次いで発表された。ここでは売上高、利益、売上高利益率、設備投資、キャッシュフロー及び石油・天然ガス生産量について各社の業績を横並びで比較するとともに過去2年間の各社四半期決算の推移を検証する。

 

 なお過去の四半期業績及び2010年から2021年までの通年の業績比較は下記レポートを参照されたい。

http://mylibrary.maeda1.jp/SuperMajors.html

http://mylibrary.maeda1.jp/oil.html

 

I. 各社の業績概要

表1-D-4-22a「2022年7-9月期国際石油企業の業績(売上、損益)」参照。

表1-D-4-22b「2022年7-9月期国際石油企業の業績(キャッシュフロー、設備投資)」参照。

表1-D-4-22c「2022年7-9月期国際石油企業の業績(原油・天然ガス生産量)」参照。

 

(IOCsの中では売上トップ、他を圧する生産量誇るExxonMobil!)

  1. ExxonMobil

プレスリリース:

https://corporate.exxonmobil.com/news/newsroom/news-releases/2022/1028_exxonmobil-announces-third-quarter-2022-results

(1)売上・利益・利益率

 ExxonMobilの2022年7-9月期は売上高1,121億ドル、利益197億ドルで売上高利益率は17.5%であった。前期(4-6月期)との比較では、売上高は3.1%減、利益は10.1%増であり、また前年同期(2021年7-9月期)比では売上高は1.5倍、利益は3倍である。

 

因みに7-9月期のBrent 原油平均価格は1バレル106ドルであり、前期(4-6月)の114ドルから7.4%下落しており、売上高の減少幅を上回っている。

 

(2)キャッシュフロー及び設備投資

 今期の営業キャッシュフローは244億ドルであった。投資キャッシュフローは不明であるが、フリーキャッシュフローは220億ドルであった。また財務キャッシュフローは+60億ドルであり、この結果、6月末のキャッシュフロー残高は305億ドルで期初から大幅に増加している。

 ExxonMobilの7-9月期設備投資は57億ドルであった。

 

(3)原油・天然ガス生産量

 ExxonMobilの7-9月期原油・天然ガスの生産量は、日量平均で原油240万B/D、天然ガス80億立法フィート(cfd)であった。天然ガスを原油に換算した原油・天然ガス合計生産量は372万B/Dである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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