石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

巨額の利益、Exxon197億ドル、アラムコ424億ドル:2022年7-9月期石油企業決算速報 (9)

2022-11-21 | 海外・国内石油企業の業績

II. IOCs五社とアラムコの業績比較(続き)

(アラムコの投資はIOCsの2~3倍!)

5.設備投資[1]

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-54.pdf 参照)

 IOCs5社の7-9月期設備投資は、ExxonMobilが57億ドルで最も多く、これに次ぐのがShell(53億ドル)、TotalEnergies (47億ドル)である。bp及びchevronは30億ドル強にとどまっている。前年同期に比べるといずれも増加しており、また前期(4-6月期)比ではExxonMobil及びbpが増加、TotalEnergiesは横ばい、Shell及びchevronは減少している。

 アラムコの今期投資額は90億ドルでありIOCs5社の1.6乃至3倍である。また前年同期比では2割増加しているが、前期比では若干減少している。

 

(原油・天然ガス共にExxonMobilがトップ!)

6.石油及び天然ガス生産量

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-55.pdf 参照)

(注)アラムコの決算資料では原油.天然ガスの個別生産量を明示されておらず、同社Interim Reportで合計生産量が開示されている。

 

(1)原油生産量[2]

 IOCs5社の中で2021年7-9月期の原油生産量が最も多かったのはExxonMobilの2,398千B/Dであり、5社中ただ一社2百万B/Dを超えている。ExxonMobilに次いで生産量が多いのはChevron(1,707千B/D)でExxonMobilの8割である。第3、4位はTotalEnergies(1,494千B/D)、Shell(1,273千B/D)。bpは最も少ない959千B/Dで5社の中で唯一100万B/Dを下回っている。

 

(2)天然ガス生産量[3]

 天然ガスの生産量が最も多いのはExxonMobilとchevronで石油に換算すると共に1,320千B/Dであった。3位以下はTotalEnergies 64億立方フィート(石油換算1,175千B/D )、第4位Shell 30億立方フィート(石油換算516千B/D )であり、最も少ないのはbpの21億立方フィート(石油換算358千B/D )であった。

 

(アラムコ生産量は1,440万B/D、IOCs5社合計1,250万B/Dを凌駕!)

(3)石油・天然ガス合計生産量[4]

 IOCs5社の中で石油と天然ガスの合計生産量が最も多いのはExxonMobilの3,716千B/D(石油換算、以下同じ)である。2位はchevronの3,027千B/D、続いてTotalEnergies(2,669千B/D)及びShell(1,789千B/D)、5社の中で最も少ないbpは1,317千B/Dであった。ExxonMobilの生産量を100とした場合、他の4社はchevron 81、TotalEnergies 72、Shell 48、bpは35である。Shellの生産量はExxonMobilの2分の1、bpは3分の1となる。

 

 これら5社に対しアラムコの生産量は1,440万B/Dであり、IOCs5社の合計生産量(1,252万B/D)を大きく上回っている。この生産量はExxonMobilの4倍、bpの10倍に達している。

 

 IOCs各社の石油と天然ガスの比率を見ると、ExxonMobilは石油65%、天然ガス35%であり、その他の4社はShell(石油71%:天然ガス29%)、bp(石油73%:天然ガス27%)、TotalEnergies(石油56%:天然ガス44%)、chevron(石油56%:天然ガス44%)である。5社いずれも石油の比率が天然ガスを上回っているが、石油の比率が最も高いのはbp(73%)で、逆に最も低いのはTotalEnergies及びchevron(56%)である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

[1]  「設備投資」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Capital and Exploration Expenditures

Shell:Capital expenditure, Consolidated Statement of Cash Flow

bp:Capital expenditure

TotalEnergies:12. Net investments

Chevron:Capital & Exploratory Expenditure, Worldwide

SaudiAramco: Capital Expenditure, Financial results,

[2] 「原油生産量」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Net production of crude oil, natural gas liquid, bitumen and tsynthetic oil

Shell:Liquid production available for sale

bp:Production (net of royalties), Liquids

TotalEnergies: 3.3 Production, Liquids

Chevron:Net liquid production

[3] 「天然ガス生産量」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Natural gas production available for sale

Shell:Natural gas production available for sale

bp:Production (net of royalities), Natural gas

TotalEnergies:Hydrocarbon production, Gas

Chevron:Net natural gas production, Worldwide

[4] 「石油・天然ガス合計生産量」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil: Production, Earnings and Volume Summary                  

Shell:Total production in barrels of oil equivalent    

bp:Production (net of royalities), Total hydrocarbons             

TotalEnergies: 3.3 Production

Chevron:Total net oil-eqivalent production 

SaudiAramco: Interim Report, Highlights, Upstream

 

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SF小説:「ナクバの東」(53)

2022-11-21 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)

 

53. 悪魔の発明(1)

 数日後、その男『ドクター・ジルゴ』は『シャイ・ロック』の家に現れた。秘書として彼を応接間に招じ入れたアナットは彼の洗練された着こなしに驚きを隠さなかった。今の彼はエリートそのものにしか見えない。かつてストーカーまがいの行為で妹を追いかけていた『ドクター・ジルゴ』は―その頃はまだドクターではなかったがーヒッピー風の長髪に汚れたT-シャツ、洗いざらしのジーンズを着た青年だった。

 

ロシア系移民ということで肌が白いことだけが取り柄で、もし彼がアラブ系やアフリカ系であったならアナットはその青年に間違いなく罵声を浴びせていたであろう。その時のアナットは彼の肌の色に免じて彼の妹に対する無礼な行為を諄々とさとしただけであった。

 

 という訳で二人は初対面ではなかったのだが、アナットは目線を軽く合わせただけでソファーをすすめた。

 

 「父は先客がありますのでここでしばらくお待ちください」

 

 『ドクター・ジルゴ』もまるで昔のことなど何もなかったかのようにソファーに身を沈めると部屋の中をぐるりと見回し、

 「なかなか良い家具を集められましたね。マントルピースの上のリヤドロ人形がまた趣味の良さを見せています。こんな快適な部屋は滅多にないですよ。」

 アナットは彼の如才なさに鼻白んだが誉められて悪い気はしなかった。

 

 その時書斎の扉が開いて一人の初老の男が出てきた。それはテレビか新聞のどこかで見慣れた顔であったがすぐには思い出せなかった。

 

 「どうも御苦労さまでした。父とのお話合いはいかがでした?」

アナットの問いかけに男は何か答えようとしたが、ソファーに座った若い男が自分に強い視線を浴びせかけていることに気付きすぐに言葉を飲み込んだ。

 

「将軍は相変わらずお元気ですね。それでは今日はこれで。」

 男は当たり障りのない挨拶をするとそそくさと応接間を出ていった。アナットがその後を追った。玄関の車寄せに乗用車が滑り込んで来る音が聞こえる。

 

 「確かあの方は-----------」

初老の男の名前を思い出した『ドクター・ジルゴ』が先客の見送りから戻ってきたアナットに問いかけた。しかし彼女はその質問を制するように彼をソファーから立たせると『シャイ・ロック』の待つ書斎へと案内した。

 

「父は忙しいものですから面会時間は当初のお約束通り20分と言うことでお願いします。」

 今の彼女は何処までも優秀な秘書である。

 

(続く)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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