(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第4章:中東の戦争と平和(27)
113 ナクバの東(2/3)
湾岸諸国では外国から来る出稼ぎ者を「ゲスト・ワーカー(客人労働者)」と呼び、自らを「ホスト国」と称した。アラビア語で日常会話をし、金曜日にはモスクで一緒に礼拝するパレスチナ人出稼ぎ者は地元では最良の「ゲスト・ワーカー」だった。ただし「ゲスト(客人)」という言葉の響きに惑わされてはならない。石油の富の分け前を求めてこの国にやってくるパレスチナ人はあくまでも出稼ぎ労働者に過ぎない。だからパレスチナ人たちは冷遇される。時には自らを棚に上げてパレスチナ人を罵倒する者もいる。子供たちもそれを真似て理由もなくパレスチナの子供たちをいじめる。
しかしパレスチナ人たちはじっと耐え忍ぶしかない。ここでは故郷の数倍の給料がもらえるが、身分は不安定で、雇用主の気分次第で簡単に首にされ国を追い出される。出稼ぎはまさに現代の奴隷制度である。
ただ出稼ぎは移民と異なることを指摘しておく必要があろう。移民は他国から移住してその国の市民権を取得した人々である。社会的差別があるにしても移民は本来の国民と同様の政治的権利を持ち、社会保障を受ける権利を有する。しかし出稼ぎ労働者にはそのような権利は与えられない。
パレスチナ人は明らかにクウェイトやサウジアラビアの国民よりも学問があり、経験豊かで礼儀正しかった。それでも出稼ぎという現代の奴隷制度のもとでは彼らは屈辱に耐えて働き続けるほかなかった。彼らは毎月の給料の大半をひたすら故郷に送り続けた。いずれ退職してヨルダンに帰ったときにアパートを建てて家主になるか、或いは小さな店を開いて自営業者になることが彼らの夢だったのである。
(続く)
荒葉 一也
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