国際石油企業(International Oil Companies, IOCs)の2024年第4四半期(10-12月)及び年間(1-12月)の決算が発表された。本稿ではExxonMobil(米)、Shell(英), bp(英), TotalEnergies (仏)及びChevron(米)の5社を取り上げ、各社の売上高、利益、設備投資額、キャッシュフロー、バランスシート及び石油・ガス生産量を概観し、さらに過去5年間の業績の推移を検証する。
I. 5社の2024年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)業績概要
(年間利益340億ドル、原油・ガス生産量430万B/D、他社を圧倒する水準!)
1. ExxonMobil[1]
*同社ホームページ:
(1)売上高
ExxonMobilの2024年10-12月の売上高は834億ドルであり、また通年売上高は3,496億ドルであった。四半期ベースでは前年比▲1.1%の減収、年間ベースでは1.5%の増収であった。因みにこの期間のBrent原油価格は10-12月平均が75ドルで前年同期比▲11%下落、年間平均価格は81ドルで前年比▲2.3%下落している。ExxonMobilの売上減少幅は原油価格のそれを下回っているが、後述するように同社の原油及び天然ガスの生産量が大幅に増加したためである。
(2)利益
10-12月期の利益は76億ドル、前年とほぼ同水準であり、1-12月の通年利益は337億ドルで」前年比▲6.5%減であった。利益の減少幅は売り上げのそれを上回っているが(上記)、それでも年間利益は昨年に続き高い水準であった。
(3)売上高利益率
通年ベースの売上高利益率は9.6%であり、前年の10.5%を下回っているが、他社に比べかなり高い水準を維持している。
(4)設備・探鉱投資
2024年の年間設備・探鉱投資額は276億ドルであり、2023年の263億ドルに比べ5%増加している。ExxonMobilはここ数年米国内のシェール石油・ガス権益の買収に力を入れており、これが探鉱投資の増加及び原油・ガス生産量の増加(下記参照)に結実している。Shell、bp、TotalEnergiesの欧州系企業は風力発電など自然エネルギー開発に注力してきたが、業績面で思ったような結果が出ていないのとは対照的である。米国トランプ新政権は石油・天然ガスへの回帰を明言しており、当面はExxonMobilに順風が吹くものと考えられる。
(5)キャッシュフロー
ExxonMobilの10-12月期の営業キャッシュフローは前年同期より▲11%少ない122億ドルであった。2024年の年間営業キャッシュフローは550億ドルであり、前年とほぼ横ばいである。また年間の投資キャッシュフローも▲199億ドルで前年とほぼ変わらず、財務キャッシュフローは▲428億ドルであり、前年に比べ25%増であった。
この結果ExxonMobilの2024年末キャッシュフロー残高は232億ドルとなり、2023年末の316億ドルから▲27%減少している。
(6)石油・ガス生産量
昨年のExxonMobilの石油生産量は日量平均2,987千バレル(以下B/D)であり、前年(2023年)の2,449千B/Dに比べ22%の大幅増加であった。天然ガスは日量平均8,078百万立法フィート(以下mmcfd)であり前年比4%増加している。
石油と天然ガスを合計した生産量は、石油換算で4,333千B/Dであり、対前年比16%の増加であった。
(続く)
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前田 高行
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[1] ExxonMobilの売上、利益、設備投資及びキャッシュフローは決算資料の下記項目による。
売上:Total revenues and other income
利益:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)
設備投資:Capital and Exploration Expenditures
営業キャッシュフロー:Cash Flow from Operating Activities (U.S. GAAP) / Net cash provided by operating activities (U.S. GAAP)
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