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(アラビア語版)
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(53)
第20章 さまよう3羽の小鳥(1)「エリート」の場合(2/3)
その親鳥の出迎えがないまま3機は当てもなくペルシャ湾上空を南下した。残された燃料はあと1時間程度しかなく、ホルムズ海峡を越えることもできないことは確かだ。このままではペルシャ湾に不時着する他なく、墜落前にパラシュートで脱出したとしても、誰が彼らを拾い上げてくれるのだろう。左岸はさきほど空爆したばかりのイラン、右岸はサウジアラビア、バハレーン、カタール、UAEなどイスラエルの仇敵のアラブ諸国である。イランの巡視船或いは漁船に助けられたなら目も当てられない。かと言ってアラブ諸国の哨戒艇か漁船に助けられたとしても晒し者にされることは間違いない。いずれにしてもパイロット達にとっては勝利の凱旋どころではなさそうだ。
不安に駆られたパイロット達の反応は三者三様であった。「エリート」は内心の動揺を抑えリーダーとして冷静沈着さを装った。彼は僚機の「マフィア」と「アブダラー」に落ち着くように諭し、指令部が何らかの救出作戦を講じるに違いない、と元気づけた。確信があった訳ではない。しかしこれまでもイスラエル軍はどのような困難な状況でも決して仲間を見殺しにすることはなかった。司令部は必ずや自分たちを救出してくれるはずだと「エリート」は信じたかった。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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