石油と中東

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ロシアは格付け無し、日中韓をしのぐ台湾:世界主要国のソブリン格付け(2022年7月現在) (上)

2022-07-20 | その他

(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0562SovereignRatingJuly2022.pdf

 

 本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の2022年7月現在の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。

 

 因みにS&Pの格付けは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている[3]。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.と表示される。

 

S&P(日本)ホームページ:

https://disclosure.spglobal.com/ratings/jp/regulatory/delegate/getPDF?articleId=2861876&type=COMMENTS&subType=REGULATORY

 

 

*過去のレポートは下記ホームページ参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html 

 

(格付けから外れたロシア!)

1.2022年7月現在の各国の格付け状況

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

2022年7月現在の格付けを半年前の1月と比べると最高格付けAAA(トリプルA)のドイツ、シンガポール等の他、AA+の米国、AAの英仏、A+格付けの日本、中国など主要な国々に変動はなかった。

 

日本を含む極東各国(地)の格付けは台湾が1ランク格上げされ、香港と同じAA+に格付けされている。日本と中国の格付けは過去4年間を通じてA+が続いており、トップの香港、台湾とは3ランクの格差がある。なお香港の格付けは米国と同じであるが、米中の対立および中国の同化政策により香港の国際金融都市としての高い格付けが今後も維持されるかは不透明である。格付け機関が今後香港に対してどのような評価を下すのか注目される。

 

G7の国々のうちドイツ及びカナダはAAAの最高格付けであり、米国は1ランク下のAA+、英国及びフランスはさらに1ランク低いAAである。そして日本はAAAより4ランク低いA+に格付けされ、イタリアは投資適格ではあるがBBBにとどまっている。因みに格付け定義ではAAは「債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(トリプルA)との差は小さい」とされ、これに対して格付けAは「債務を履行する能力は高いが上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい」とされている。そしてBBBの定義は「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」である。

 

G7以外の国ではアジア諸国のうちシンガポール及びオーストラリアがAAAに格付けされ、またMENA諸国では、アブダビがAAに、カタール及びイスラエルはAA-に格付けされている。サウジアラビアの格付けはA-である。

 

 アジアの国々の多くは投資適格で最も低いBBBの格付けであり、タイ及びフィリピンがBBB+、インドネシアはBBBである。インドは投資適格では最も低いBBB-である。南米のブラジルとアルゼンチンはいずれも投資不適格であり、このうちブラジルはBB-であり、南アフリカも同格である。またアルゼンチンの格付けはCCC+とされている。

 

 ロシアは今年初めまでインドと同格のBBB-を維持していたが、ウクライナ戦争により同国経済の先行きが不透明となった結果、格付け対象から外さ、現在はN.R.(No Rating)とされている。

 

 一昨年以降、世界的に新型コロナウィルス(COVID19)が猛威をふるい、各国は感染対策、景気下支えのため巨額の財政出動を行っている。COVID19は未だ沈静化したとは言い難いが、一時に比べ落ち着きを取り戻し、世界景気も回復の兆候が見られる。いくつかの国では格付けが見直されつつあり、上述の台湾をはじめ、オマーン、ベトナムなどは本年上半期に格付けが上方修正されている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

 

[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。

[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

[3] S&Pの格付け定義についてはhttp://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf参照。

 


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