2/3 JX日鉱日石エネルギー インドネシアにおける燃料油の輸入・販売事業の開始について http://www.noe.jx-group.co.jp/newsrelease/2013/20140203_01_1016062.html
2/4 BP Fourth Quarter and Full Year 2013 Results http://www.bp.com/en/global/corporate/press/press-releases/fourth-quarter-2013-results--stock-exchange-announcement.html
2/6 コスモ石油 執行役員人事のお知らせ http://www.cosmo-oil.co.jp/press/p_140206_2/index.html
2/7 JX日鉱日石エネルギー 韓国SKルブリカンツ向け潤滑油ベースオイル製造用原料を水島製油所から初出荷 http://www.noe.jx-group.co.jp/newsrelease/2013/20140207_01_0944355.html
2/7 国際石油開発帝石 新東京ライン延伸(第五期)に向けた事前調査の開始について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140207.pdf
I. 各社の業績概要 (続き)
3.Shellの2013年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)の業績
*同社ホームページ:
http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2014/fourth-quarter-2013-results-announcement.html
(1)売上高
Shellの2013年10-12月の売上高は1,115億ドルであり、また通年売上高は4,596億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ-9.1%, -4.6%の減収である。
(2)利益
10-12月期及び通年の利益はそれぞれ18億ドル及び164億ドルであり、前年同期と比較すると10-12月期は-73.5%、通年では-38.7%といずれも大幅な減益となっている。通年利益のうち上流部門の利益は151億ドルであり全利益の92%を占めている。
(3)石油・ガス生産量
昨年のShellの石油生産量は日量平均1,541千B/Dであり、前年(2012年)比5.6%減であった。天然ガスは日量平均9,616mmcfdであり、これは前年比+1.8%である。
石油と天然ガスの合計生産量は石油換算で3,199千B/Dとなり、2012年比では-1.9%である。
(4)設備・探鉱投資
2013年の年間の設備・探鉱投資額は460億ドルであり、これは2012年比で25.2%の増加であった。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
・木村JX Holding会長、クウェイト国営通信のインタビューでビジネス関係を語る。
・韓国Kogas、Kepcoなどエネルギー各社が政府要請でイラク油田開発など海外事業を見直し。 *
*Kogasはイラクの第一次、第三次入札でアッガスガス田開発など3案件に参加している。
「イラク石油・ガス田落札企業一覧表」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-51.pdf
I. 各社の業績概要 (続き)
2.Chevronの2013年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)の業績
*同社ホームページ:
http://www.chevron.com/chevron/pressreleases/article/01312014_chevronreportsfourthquarternetincomeof49billionand2013earningsof214billion.news
(1)売上高
Chevronの2013年10-12月の売上高は562億ドルであり、また通年売上高は2,288億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ-7.3%, -5.4%の減収である。
(2)利益
10-12月期及び通年の利益はそれぞれ49億ドル及び214億ドルであり、前年同期と比較すると10-12月期は-32.0%、通年では-18.2%といずれも減益となっている。通年利益のうち上流部門の利益は208億ドルであり全利益の97%を占めている。
(3)石油・ガス生産量
昨年のChevronの石油生産量は日量平均1,731千B/Dであり、前年(2012年)比1.9%減であった。天然ガスは日量平均5,192mmcfdであり、これは前年比+2.3%である。
石油と天然ガスの合計生産量は石油換算で2,597千B/Dとなり、2012年比では-0.5%である。
(4)設備・探鉱投資
2013年の年間の設備・探鉱投資額は419億ドルであり、これは2012年比で22.3%の増加であった。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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・東北ガス、カタールガス3(Train 6)と15年間のLNG供給契約締結。 *
*Qatargas3(Train 6)は2010年稼働、年産能力780万トン。三井物産が1.5%出資。
(参考)
東北電力プレスリリース。
http://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1186804_1049.html
カタールのLNG事業一覧表
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-52.pdf
ExxonMobilなど国際石油会社(International Oil Companies, IOCs)の昨年第4四半期(10-12月)及び年間(1-12月)の決算が発表された。本稿ではExxonMobilの他、Shell, BP(英), Total(仏)及びChevron(米)の主要5社を取り上げ、各社の売上高、利益、石油・ガス生産量、投資額等を概観し、さらに5社の業績比較を行う。
I. 各社の業績概要
1.ExxonMobilの2013年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)の業績
*同社ホームページ:
http://news.exxonmobil.com/press-release/exxon-mobil-corporation-announces-estimated-fourth-quarter-2013-results
(1)売上高
ExxonMobilの2013年10-12月の売上高は1,109億ドルであり、また通年売上高は4,383億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ-3.3%, -8.8%の減収であった。
(2)利益
10-12月期及び通年の利益はそれぞれ83.5億ドル及び325.8億ドルであり、前年同期と比較すると10-12月期は-16.1%、通年では-27.4%といずれも減益となっている。通年利益のうち上流部門の利益は268.4億ドルであり全利益の82%を占めている。上流部門の利益が大きな割合を占めているのはExxonMobil以外の他社も同様である(追って詳述)。
(3)石油・ガス生産量
昨年の「ExxonMobilの石油生産量は日量平均2,202千バレル(以下B/D)であり、前年(2012年)比0.8%増であった。天然ガスは日量平均11,836百万立法フィート(以下mmcfd)であり、これは前年比-3.9%である。
石油と天然ガスの合計生産量は石油換算で4,175千B/Dとなり、2012年比では-1.5%である。
(4)設備・探鉱投資
2013年の年間の設備・探鉱投資額は425億ドルであり、これは2012年比で6.8%の増加であった。
(続く)
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(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0297JapanAbuDhabi.pdf
4.IPICを介したコスモ石油とCEPSAの提携
1月21日、コスモ石油はアブダビの国際石油投資公社(International Petroleum Investment Company, IPIC)の仲介によりスペインの石油企業CEPSAと「石油関連事業に関する戦略的包括提携合意契約」を締結した 。IPICはコスモ株式20%強を有する筆頭株主であり(但し名義はインフィニティ アライアンス)、同時にCEPSAの100%株主でもある。両社はIPICグループの一員なのである。この契約によりコスモ石油とIPSAは今後石油天然ガスの開発事業において共同で新鉱区獲得や事業拡大に協力することとなった。
IPICは石油の余剰収入を基金としてアブダビ政府が設立した投資ファンドの一つであり、いわゆる政府系ファンドまたは国富ファンド(Sovereign Wealth Fund, SWF)と呼ばれるものである。アブダビの政府系ファンドとしてはIPICの他にもADIA(アブダビ投資庁)、Mubadalaがあるが、IPICは総資産653億ドル(SWF Instituteデータによる)を保有する世界17位の投資ファンドであり 、名前の通り世界の石油産業に対する投資を主たる目的としている。1984年に設立され会長はシェイク・マンスールUAE副首相(ムハンマド皇太子の実弟、故ザーイド前首長13男)である 。
IPICは1988年にCEPSAの株式9.6%取得したのを手始めにオーストリアのOMV社にも投資、現在の両社の持ち株はCEPSA100%、OMV24.9%である。そして2007年にコスモ石油株式の20.8%を取得している。またIPICは石油化学分野では北米のNova Chemicals或いはオーストリアのBorealisの親会社でもある。なおかつては韓国Hyundai Oilbankにも投資していたがこれは2010年に売却している。
コスモ石油は1984年に旧大協石油と丸善石油の精製部門を統合して発足、1986年に3社の合併により現在に至っている。1980年代前半は昭和石油とシェル石油の合併(現昭和シェル石油)、日本石油と三菱石油との合併(日石三菱)など石油業界が戦後最初の大型再編に走った時代であった。その後2000年代に再び石油業界に再編の嵐が吹き荒れ、日石三菱グループと共石・日鉱グループが合併、日本最大のJXグループが生まれている。この間、コスモ石油についても他社との業務提携・合併のニュースが流れたが、結局コスモ石油は2007年、子会社のアブダビ石油を通じてかねてから協力関係にあったアブダビの国家資本を受け入れた訳である。
コスモ石油とCEPSAの提携が今後どのように発展するかはしばらく観察を続ける必要があろう。精製販売面では日本とスペインでは相互補完関係は乏しく、またアブダビにとって日本も西欧も成熟市場であり発展の余地は乏しい。従って提携の主目的はプレスリリースにもあるように石油ガス開発で共同鉱区の獲得を目指すなど上流部門の共同事業であろう。CEPSAはアフリカ、南米等でいくつかのプロジェクトを手掛けている。
但し世界の石油天然ガス開発プロジェクトは極地、大深海など技術及び資金の両面でハードルが非常に高くなっている。また産油(ガス)国の権限もますます大きくなっている。このような中で資金力に乏しく技術的にもIOCs(国際石油会社)に見劣りするコスモ石油とCEPSAの立場は厳しいと言わざるを得ない。
以上、アブダビ国内の鉱区利権問題及びIPIC/コスモ石油/CEPSAの資本業務提携問題について述べた。両者に共通しているのはアブダビ政府が米英仏各国の政治的影響力を弱め、またExxonMobil / BP / Shell / Total等の国際石油会社の支配力に対するカウンターバランスとして利用しようと考えていることではなかろうか。つまり欧米政府及び欧米系国際石油企業に牛耳られている現状を打破するため、重要な顧客である日中韓との連携を強めようとしているのである(勿論欧米政府と企業が最優先であることは間違いないであろうが)。だとすればアブダビの日本に期待するものはINPEXやコスモ石油等の個別企業と言うよりむしろ日本政府そのもののではないかと思われる。
(完)
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2000年2月、遂に利権契約終結
27日に期限を迎える利権契約の延長に一縷の望みを賭けて現地リヤドに赴く。そのようなメッセージを残して小長社長は25日に日本を発った。前月の1月に深谷通産大臣がサウジアラビアを訪問し、鉱山鉄道計画を正式に拒否した時点でアラビア石油が利権を失うことは冷厳とした事実であり、社長の現地出張は内外に対するポーズでしかなかった。
そして27日は過ぎた。帰国した社長は翌28日午前9時、記者会見でサウジアラビアとの利権契約が終了したことを発表、今後は2003年1月まで残されているクウェイトとの利権契約に基づきカフジでの操業を続けると述べた。プレスリリースの資料は同時刻に全社員にも配られた。
この連載ではこれまでサウジアラビアとの利権契約だけに触れてきたので、ここで少し説明が必要であろう。そもそもカフジ油田はサウジアラビアとクウェイトが共同統治する「中立地帯」の海上部分にあった。石油が発見される以前、中立地帯は国境のフェンスもない無人の砂漠でベドウィンがラクダや羊の群れと共にわずかな草を求めて遊牧生活を送る土地であった。しかし中立地帯南側のサウジアラビア及び北側のクウェイトに大規模な油田が発見されたため、両国政府が共有する形で中立地帯沖合の開発利権がアラビア石油に与えられることになった。アラビア石油は両国政府とそれぞれ別々の契約を結んだのであるが、契約書の期限が両国で異なった結果、サウジアラビアとの契約期限は2000年2月、クウェイトとの期限は2003年1月となったのである。アラビア石油がサウジアラビアとの交渉に全力を注いだのは契約期限が早く到来するからであり、またクウェイト自身がサウジアラビアと会社の契約延長交渉を見守る立場を取ったからでもある。
プレスリリースを一読した社員の頭を最初にかすめたのは、会社は、そして自分たちの生活はこの先どうなるのかと言う不安感であった。確かにアラビア石油創立の時からいずれこの日が来ることを覚悟しておくべきであったと言われればその通りなのである。1990年代後半になると若い有能な社員が五月雨式に辞めていった。彼らは自らの力で運命を切り開いていったのである。しかし40代、50代の社員の殆どは最期まで会社に残った。中高年には転職の道は険しく、まして世間の会社に比べ楽な仕事で高給を食む彼らは会社にしがみつく以外に考えが及ばなかった。その多くは利権契約が延長されるに違いないと根拠のない楽観論を信じ込み、或いは信じようと自らに言い聞かせた。中には日本に不可欠な石油の採掘利権を持つアラビア石油だから最後は日本政府が何とかしてくれるはずだ、アラビア石油は普通の民間企業とは違うのだ、と言いふらす者もいた。
中高年社員の期待は見事に裏切られた。この日、60歳間近のある出向社員はプレスリリースを見た途端、顔面を引きつらせ突然机の中のものを段ボール箱に詰め込み始めた。戻れるはずもない本社に戻るつもりなのであろうか。見ていた女子社員たちはあっけにとられていた。またつい先日まで自分より年上の子会社生え抜きの社員に見下したような態度をとっていた若い出向者は茫然自失の体であった。
その日の夕刻、本社で社長が事情を説明するから全員集合せよ、との指示を受け出向先から駆け付けた。机を片隅に移動した総務部の広い事務室内に社長以下の在京役員とそれを取り囲むように多数の社員がいた。筆者自身を含め社員の誰しもが硬い表情であった。社長はまず社員にお詫びすると深々と頭を下げた後説明したが、それはプレスリリースの内容を越えるものではなかった。社長の説明に続いて人事担当取締役が経営合理化は避けられずその詳細は追って知らせる、と捕捉した。質疑応答に移ると途端に社員から次々と経営陣の無為無策を非難する声があがったのは当然である。社長一人が受け答えし、その他の重役は一言も発せずただ頭を下げるだけであった。契約延長交渉の最終段階は日本政府(通産省)とサウジアラビア政府の直接交渉となり、そこに同席したのは社長だけであるから、他の役員たちは答えようがないのである。しかし彼らはつんぼ桟敷に置かれていた訳ではなく重役会で逐一承知していたはずである。それにもかかわらず交渉に積極的な役割を果たすつもりのなかった彼らの姿はまさにサラリーマン重役そのものであり、彼らは所詮無力だったとしか言いようがない。
説明会に出席した社員の大半は経営陣を糾弾する仲間と社長のやりとりを不安げな表情で聞いているだけであり発言者の数はさほど多くなかった。黙り込んでいる社員も多分言いたいことが山ほどあり喉元まで出かかっていたに相違ない。筆者自身もそのような一人であったがそれをどのように表現すればよいのか気持ちの整理がつかなかったのである。一通りの発言が終わるとやがてその場を沈黙が支配した。そして皆の心の中に深い喪失感が漂い始めた。社員全員が身も心も居場所のないデラシネ(根なし草)になってしまったのである。
当日の夕刊各紙は利権失効のニュースを大きく取り上げた。因みに日本経済新聞は1面トップから3面まで詳細な記事で埋まっていた。その見出しを列挙すると以下のようなものであった。
・アラ石の採掘権失効、事業規模半減、
・アラ石社長、「合理化、合併も視野。サウジ側の鉄道建設の期待大きすぎた」
・サウジ、油田支配を誇示
・コスト問われた自主開発、エネルギー政策は市場重視型に:深谷通産大臣
(続く)
(追記)本シリーズ(1)~(30)は下記で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0278BankaAoc.pdf
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Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0297JapanAbuDhabi.pdf
3.アブダビの増産計画とINPEXの陸上鉱区参入の可能性
UAEの2012年の石油生産量は338万B/Dで世界第7位である 。その殆どをアブダビが占めているが、そのアブダビでは現在の生産能力280万B/Dを2017年前後までに350万B/Dに拡大する計画が進められている 。これを主要油田毎に見るとBu Hasa油田(陸上、現有生産能力55万B/D→目標生産量73万B/D、時期2017年、以下同じ)、Bab油田(陸上、35万→43万B/D、2017年)、上部ザクム油田(海上、55万→75万B/D、2016年)、下部ザクム油田(海上、30万→42.5万B/D、2016年)、ウムルル海上油田(0→10.5万B/D、2016年)などである(数値はいずれもJOGMEC「石油・天然ガス レビュー2013年11月号より」)。
海上油田についてはいずれも利権更新期限が2018年以降であるため、上記の増産工事はADMA-OPCO、ZADCOなどいずれも現在のコンソーシアムで実施することになる。しかし陸上油田は事業主体であるADCOの利権が今年1月で失効しており、しかも上記2 IIで触れたとおり、鉱区が4分割される見込みのため個々の新しい事業体が決まるまで本格的な増産工事に着手できないであろう。
そのような状況下で現在国際石油企業(IOCs)10社による提案が検討中である。これら10社は大きく分けると、(1)操業経験のあるExxonMobil、BP、Shell、Totalの国際石油企業4社、(2)アブダビの操業経験は無いが欧米系国際石油企業のEni(伊)、Statoil (ノルウェー)、Occidental(米)、そして(3)CNPC、INPEX、韓国石油公社のアジア勢3社、(このうちINPEXは海上油田で操業実績を有しているが、CNPC及び韓国石油公社は経験が無い)の三つに分類できよう。
これら10社のいずれがADNOCの事業相手に選ばれるかは予断を許さない(鉱区四分割で各鉱区1社ずつと言う報道の通りであれば10社中の4社となる)。利権パートナーの選定は技術的な知識と経験の有無だけではなく、政治力の介入する余地が大きいからである。あえて応札各社の長所短所を考察すると以下の点が指摘できそうである。
まず技術的な知識と経験の面で見ると現在陸上鉱区で操業中の上記(1)の4社が有利であることは否めない。また(2)の欧米グループ及び(3)のINPEXとCNPCも豊富な国際経験がありパートナーとしての資格に問題はなさそうである。韓国石油公社だけが経験不足を問題視されるであろう。しかし今回の増産プロジェクトでは一部油田への地下水・海水あるいはガス圧入による二次回収(tertiary recovery)が予定されている 。生産がピークを過ぎ生産量が減退している油田では二次回収が必須である。この点では長い操業経験のある欧米企業が有利であろう。
参入意欲の面ではメジャーと呼ばれるグループ(1)の国際石油企業群の意欲が人一倍強いと言えそうである。何故ならここ数年の各社の業績資料を見ると各社とも自社権益の石油生産量がじり貧だからである。原油価格の高騰により売上、利益はいずれも最高水準であるものの、生産量は毎年下落する一方なのである 。原因は近年産油国が石油利権から外国企業を締め出したり(ベネズエラの例)、或いは単なる操業請負業者にとどまるケース(イラクの例)が殆どであり、国際石油企業は自社権益の生産量が減少しているからである。この点アブダビの場合は従来通り外国企業に40%の利権が与えられる見込みであり(残り60%はADNOC)その分を自社原油にカウントすることができる。利益の大半を上流部門(原油生産)に頼る国際石油企業にとって自社原油を減らさないことは死活的に重要な問題と言えよう。
一方、アブダビ側の政治的判断を考えると問題は微妙である。まず国際政治力学の面で見ると、ペルシャ湾情勢は日常的に緊迫しておりアブダビ(UAE)のような軍事的に非力な小国は欧米(特に米国)の庇護が不可欠であろう。米国のオバマ政権は中東ペルシャ湾から太平洋への外交シフトを打ち出しているが、やはりバハレーン、カタールに米軍が駐留していることは大きな重しであり、UAEも米国に連れないそぶりはできないであろう。また利権更新にからみ英国首相或いはフランス大統領がトップセールスをかけた場合、UAEとしてもむげにはねつけられないことも考えられる。
ただ経済的側面から考えるとアブダビとしては今後間違いなく最大の顧客となる中国に加え、日本、韓国に対する供給ルートを拡大したいはずである。また現在アブダビは中日韓に対する石油販売をExxonMobilなど国際石油企業に依存しており余分な手数料を負担しているが、もしADNOCが直接これら極東3カ国に販売できるようになれば、手数料負担が軽減されアブダビと日中韓3カ国はウィン・ウィンの関係になる 。従ってアブダビとしては3カ国のいずれかにも利権を与えたいと考えるはずである。その場合は既に海上油田で実績のあるINPEXに有利な判断が働くのか、それとも新たに中国及び(又は)韓国を新たなパートナーに抱き込むのか、アブダビは微妙な判断を迫られることになる。
以上を総合的に判断すると今回のアブダビ陸上油田の新規利権獲得交渉はExxonMobil, BPが最右翼で、Shell, Total, Occidentalの欧米勢とINPEX, CNPCの日中勢の5社がこれに続くと考えるが果たして結果はどうであろうか?
(続く)
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