石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(9)

2022-03-17 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

. ナタンズ爆撃()

 「エリート」は「マフィア」の放ったレーザー誘導爆弾「バンカーバスター」2発が目標地点を正確にとらえたことを確認した。しかし2回の爆発からは土煙しか上がらなかった。地中を数十フィート、強化コンクリートなら数フィートを貫通すると言われる「バンカーバスター」も地下施設までは着弾しなかったようである。

 

「エリート」は直ちに第二次攻撃体制に入り「マフィア」と同じ航跡をたどり同じ高度と距離から同じように2発のミサイルを続けて発射した。発射と同時に機首を立て直し急上昇モードに入った。「エリート」は急上昇から左旋回し、目標を視認できる態勢をとった。砂塵が少し納まり地上に噴火口のような穴が現れ、中心から白煙が上がっている。砂煙とは明らかに異なり地下で火災が発生していることを示す白煙である。

 

三番機の「アブダラー」から、赤外線レーダーが白い砂埃の奥に熱線を感知した、との報告が入った。後は止めを刺すだけである。「エリート」はしんがりの「アブダラー」に攻撃を命じた。アブダッラーが発射した5発目の「バンカーバスター」が白い航跡を引いて噴火口に吸い込まれていく。次の瞬間そこから真っ赤な火柱が飛びだした。噴火口の周囲数カ所から次々と人間が飛び出してくる。まるで巣から這い出る蟻を見ているようである。5発のバンカーバスターでナタンズの施設は完全に破壊された。

 

三番機には胴体内部にバンカーバスター1基のほかにもう一基「バンカーバスター」をはるかに上回る破壊力を持った究極のミサイルが発射されないまま残っていた。究極のミサイルは「バンカーバスター」の攻撃でも敵の施設を破壊できない場合に限って発射されることになっていた。この究極のミサイルを発射すれば施設が完全に壊滅することは間違いなかった。それは施設に働く人間の全滅を意味し、また周辺地域もその後長期にわたり深刻な被害を受けることは必至である。即ち放射能汚染と言う被害である。究極のミサイルこそ小型核弾頭を搭載したミサイルであった。

 

小型核ミサイルはイスラエル国内の極秘の地下貯蔵庫に眠っている核弾頭をもとにピンポイント爆弾として開発したものである。イスラエルが核ミサイルを使用すれば国際問題となるのは陽の目を見るよりも明らかである。しかしその時は、放射能汚染はナタンズの核物質によるものであり、それこそイランが核濃縮を行っていた証拠だ、と言い張るつもりであった。強弁とこじつけはイスラエルの得意とするところである。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

データベース更新のお知らせ

2022-03-16 | データベース追加・更新

下記データベースを更新しましたのでご利用ください。

 

・OPECとその加盟国及び米露の原油生産量推移(2019年1月~)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(3月16日)

2022-03-16 | 今日のニュース

(参考)原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

(石油関連ニュース)

・ウクライナ紛争終息観測と中国のコロナ禍再発で石油価格下落。WTIは100ドル割る

・OPEC月例レポート:世界の石油需要、第3四半期に1億バレル突破、但しウクライナ紛争で増加幅減少

・英首相、サウジへ油乞い訪問

(中東関連ニュース)

・アブダビ皇太子、エネルギー安定供給を岸田首相に確約。 *

*首相官邸HP「ムハンマド・アラブ首長国連邦皇太子殿下との電話会談についての会見」参照。

・イラン外相、モスクワで露外相と会談。米国がイラン露貿易を保証

・月末にリヤドでイエメン紛争調停会議開催予定。オマーンが仲介役

・イラク:26日に大統領選出の議会投票

・エミレーツ航空、6/23からテル・アビブ便運航開始。 *

*レポート「和平合意で急速に深まるイスラエルと UAE の関係」(2020年11月)参照。

・ドバイで初の公社民営化。DEWA株式6.5%をIPO

・エジプト:ロシア、ウクライナから小麦12.6万トン買付け

・エジプト:昨年の海外からの出稼ぎ送金、前年比6%増の315億ドルに

・エジプト:ナイル河畔の遊歩道開通

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(3月14日)

2022-03-14 | 今日のニュース

(参考)原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

(石油関連ニュース)

・ウクライナ経由EU向けのロシア産ガス、大きな変化見られず

・独、カタールとエネルギー協力討議。ロシア依存脱却目指す。 *

*レポート「ロシアの天然ガスはどこに流れているのか?」参照。

(中東関連ニュース)

・トルコ大統領とギリシャ首相が歴史的な会談。両国関係に変化の兆し

・イラン、イラククルド人地区のErbilをミサイル攻撃、米領事館標的か?

・サウジ、1日で81人の大量死刑執行

・イラン、サウジの大量死刑執行に反発、二国間秘密交渉を中止

・カタールにチャド内戦当事者集まり停戦交渉開始

・英首相、今週サウジ訪問か?:Times報道

・ヨルダン国王、ノルウェー訪問。首相と会談、合同軍事訓練視察

・GCCと中国通商関係拡大の現状

・オマーン、外国人の株式100%取得認可

・トルコ、無人のジェット戦闘機開発。ヘリコプター艦からの発射可能。 *

*レポート「中東に広まるドローンの開発と軍事利用」参照。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

データベース更新のお知らせ

2022-03-13 | データベース追加・更新

下記データベースを更新しましたのでご利用ください。

・クウェイト政府閣僚名簿(2022.3.8現在)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(3月12日)

2022-03-12 | 今日のニュース

(参考)原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

(石油関連ニュース)

・ウクライナ情勢巡り原油価格乱高下。Brent $109.43, WTI $106.25

(中東関連ニュース)

・合意直前にロシアが無理難題。イラン核協議中断

・トルコ、ロシアとルーブル建て貿易を検討

・アフガニスタン/カタール/米がトルコで三者会談

・エジプト、ノルウェー企業と50億ドルでグリーンアンモニア合弁生産

・サウジ:リヤド製油所にドローン攻撃、被害軽微

・中国盤錦でサウジと30万B/D合弁製油所・石化プラント建設。21万B/Dはサウジが供給

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(3/6-3/12)

2022-03-12 | 今週のエネルギー関連新聞発表

3/8 コスモエネルギーホールディングス

コスモエネルギーホールディングスと岩谷産業、水素事業での協業検討に関する基本合意書を締結

https://ceh.cosmo-oil.co.jp/press/p_220308/index.html

 

3/8 Shell

Shell announces intent to withdraw from Russian oil and gas

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-announces-intent-to-withdraw-from-russian-oil-and-gas.html

 

3/8 Aramco

Aramco and Sinopec strengthen ties with potential downstream collaboration in China

https://www.aramco.com/en/news-media/news/2022/aramco-and-sinopec-strengthen-ties-with-potential-collaborations-in-china

 

3/9 コスモエネルギーホールディングス

株式の海外売出し並びに主要株主、主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ  

https://ceh.cosmo-oil.co.jp/press/p_220309/pdf/220309jp_01.pdf

 

3/10 経済産業省

国際エネルギー機関(IEA)加盟国による石油備蓄放出の協調行動として民間備蓄義務量を引き下げました

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220310005/20220310005.html

 

3/10 ENEOS

国内4ヵ所における太陽光発電事業への参画について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20220310_01_01_2008355.pdf

 

3/10 石油連盟

石油連盟会長コメント IEAの協調行動への協力について

https://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2022/03/10-001961.html

 

3/10 Aramco

Aramco JV to develop major refinery and petrochemical complex in China

https://www.aramco.com/en/news-media/news/2022/aramco-jv-to-develop-major-refinery-and-petrochemical-complex-in-china

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

前年の悪夢から脱した五大国際石油企業:2021年度業績速報シリーズ(13完)

2022-03-11 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0557OilMajor2021.pdf

 

IV. 8カ年(2014-2021年)業績推移の比較(続き)

4.設備投資[1]

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-23.pdf 参照)

 2014年の設備投資額はChevronが403億ドルで最も多く、次いでExxonMobil(385億ドル)、Shell(317億ドル)、TotalEnergies(241億ドル)でbpが最も少ない238億ドルであった。2015年、16年の2年間は各社とも連続して減少している。その後ExxonMobilは増加に転じたが、他社は横ばいまたは減少を続けた結果、2019年の設備投資額はExxonMobilが311億ドルと2015年の水準に戻ったが、他社は2016年以降ほぼ横ばいの状態にとどまった。

 

 2020年は業績悪化の影響を受けてExxonMobilが前年より100億ドル近く設備投資を削り、その他各社も軒並み削減している。2021年の設備投資は各社によって対応が異なり、ExxonMobil、bp、Chevronが前年よりさらに削減した一方、Shell及びTotalEnergiesは増加している。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行

 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

        Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

        E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] 「設備投資」は各社決算資料から下記項目を抽出している。

ExxonMobil:        Capital and Exploration Expenditures

Shell:     Capital expenditure, Consolidated Statement of Cash Flow

bp:         Capital expenditure

TotalEnergies:     12. Net investments

Chevron:             Capital & Exploratory Expenditure, Worldwide

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(3月10日)

2022-03-10 | 今日のニュース

(参考)原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

(石油関連ニュース)

・ウクライナ情報めぐり原油価格$130から$125に下落。WTIは$120.51

・米ヒューストンのCERAWeek会議で石油企業CEO、アフリカ低開発国出席者が持論展開

(中東関連ニュース)

・イスラエル大統領、トルコ訪問。関係改善のスタート

・エジプト大統領、サウジ訪問。国王と会談、共同声明発表

・ヨルダン:ハムザ王子、クーデタ疑惑を詫び状を国王に提出。 *

*「ヨルダン王家に何が起こったのか?」(2021年5月)参照。

・イラン、人工衛星第2号発射

・クウェイト:内務相及び国防相を任命。共に王族、副首相兼務。 *

*参照「クウェイト内閣閣僚名簿

・サウジアラムコ、中国Sinopecと中国市場協力の覚書締結

・サウジPetro Rabigh、市場好転で売上倍増、黒字に転換

・アラビア音楽を日本語歌詞で歌う歌姫子安奈穂美「日本のファイルーズ」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SF小説:「新・ナクバの東」(8)

2022-03-10 | 今日のニュース

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年3月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

8.ナタンズ爆撃(2)

 ちょうどそのころ幹線道路から分かれナタンズに向かう軍用道路をトラックが土煙を上げながら走っていた。荷台にはイスファハンの市場で仕入れた野菜や果物、肉類など食料品が山積みである。モスクから朗々と流れる夜明けの祈りの声を後に出発して数時間。目的地まであとわずかである。太陽がじりじりと照りつけるこの時間、往来の車がほとんどない荒野の直線道路は睡魔が襲ってくる。彼はCDプレーヤーのボリュームを眼一杯上げ、メロディーに合わせて大声を出しながらハンドルを握っていた。

 

その時フロントグラスの斜め、ペルシャン・ブルーそのままの碧空にきらりと物体が光った。ハンドルに両手を預け身を乗り出してその方角を見ると、3本の矢が真っ直ぐこちらに向かってくる。3本の矢がやがて一本の巨大な槍に変身したとき、運転手はそれが3機のジェット戦闘機であることに気がついた。イスファハン郊外の空軍基地から飛び立つジェット機を見慣れた運転手も、このような辺鄙な場所で急降下する戦闘機を見るのは初めてである。彼は眠気も忘れ固唾をのんで凝視した。

 

 先頭のジェット機から一筋の白く細い煙が立ち上り、すぐに二筋目の煙があがった。小さな物体が地上の建物に猛スピードで突っ込んでいった。巨大な砂煙があがり大きな爆発音が連続して聞こえた。道路が脈動しトラックは危うく路肩をはずれそうになった。運転手はあわててハンドルにかじりつきブレーキを踏んで急停車した。様子を確かめようと窓を開けた運転手の顔を熱風と砂塵が襲いかかった。砂煙の中から戦闘機が急上昇するのを運転手は茫然と眺めていた。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする