石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(7)消費量1

2023-08-06 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量

(2-1) 2022年の国別消費量

(石油の二大爆食国、米国と中国!)

(2-1-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01a.pdf参照)

 2022年の世界の石油消費量は9,731万B/Dであり、前年の9,437万B/Dを3%上回った。国別で石油消費量が最も多いのは米国の1,914万B/Dであり、世界全体の20%を占めている。これに次ぐのが中国の1,430万B/D、シェア15%である。消費量が1千万B/Dを超えるのはこの2カ国だけであり、3位インド(519万B/D)と比べると米国は4倍、中国は3倍の消費量を誇っている。米国と中国は石油の爆食国であると言えよう。

 

 世界4位はサウジアラビア(388万B/D)、5位ロシア(357万B/D)、6位日本(334万B/D)である。7位から10位までの各国の順位と消費量は以下のとおりである。

 

 7位韓国(286万B/D)、8位ブラジル(251万B/D)、9位カナダ(229万B/D)、10位メキシコ(210万B/D)。

 

(世界の天然ガスの22%を消費する米国!)

(2-1-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01b.pdf参照)

 2022年の世界の天然ガス生産量は年産3兆9,400億立法メートル(㎥)であり前年(2021年)より3%少なかった。

 

 天然ガスの最大の消費国は米国であり、消費量は8,800億㎥、世界全体の22%を占める。同国は石油消費量も世界1位でありエネルギー消費大国である。2位はロシアの4,100億㎥、3位は中国の3,800億㎥である。これら3か国の世界シェア合計は4割を超える。4位はイラン、5位はカナダであり、6位サウジアラビアに続いて7位を日本が占めている。以上7カ国が消費量1千億㎥を超えている。その他10位までの国はメキシコ、ドイツ及び英国である。

 

 これら上位10カ国の顔触れを上記の石油と比較すると、米国、ロシア、中国、カナダ、サウジアラビア及び日本の6カ国は両方に顔を出しているが、イラン、ドイツ、韓国及び英国の4か国は石油または天然ガスいずれかの消費上位10カ国に入っていない。

 

(2022年の石油・天然ガス合計消費量は石油換算で1日当たり1.65億バレル!)

(2-1-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01c.pdf参照)

 2022年の天然ガス消費量生産量3兆9,400億㎥を原油に換算すると6,790万B/Dとなり、石油と合わせた消費量は1億6,500万B/Dであった。石油と天然ガスの比率は59対41で石油の方が多い。

 

 上述のとおり米国は石油及び天然ガスそれぞれの消費量が世界一であり、従って合計消費量も世界一である。同国の天然ガス消費量8,800億㎥を原油に換算すると1,520万B/Dであり、米国の石油・天然ガスの合計消費量は3,430万B/Dとなり、全世界に占めるシェアは21%に達する。米国に次ぐのが中国である。同国は石油消費量では世界2位、天然ガス消費量は世界3位であり、合計消費量は原油換算2,100万B/Dである。第3位はロシアで合計消費量は1,100万B/Dである。因みに石油と天然ガスの比率は米国の場合石油56%、天然ガス44%であるのに対して中国は石油69%、天然ガス31%、ロシアは石油34%、天然ガス66%である。米国は石油が天然ガスを少し上っているのに対して、中国は石油が全体の7割を占め、ロシアは逆に天然ガスが消費量の7割を占め3か国の消費形態は対照的である。

 

 4位以下の国と石油・天然ガス合計生産量(原油換算)は以下のとおりである。

 4位インド(619万B/D)、5位サウジアラビア(595万B/D)、6位イラン(586万B/D)、7位日本(507万B/D)、8位カナダ(438万B/D)、9位韓国(393万B/D)、10位メキシコ(376万B/D)

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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利益、売上が前期比、前年同期比で大きく後退:2023年4-6月期五大国際石油企業決算速報(2)

2023-08-05 | 今日のニュース

I. 各社の業績概要(続き)

表1-D-4-22a「2023年4-6月期国際石油企業の業績(売上、損益)」参照。

表1-D-4-22b「2023年4-6月期国際石油企業の業績(キャッシュフロー、設備投資)」参照。

表1-D-4-22c「2023年4-6月期国際石油企業の業績(原油・天然ガス生産量)」参照。

 

(利益は前年同期比6分の1、それでもフリーキャッシュフローは121億ドル!)

2. Shell

プレスリリース:

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2023/second-quarter-2023-results-announcement.html

(1)売上・利益・利益率

 Shellの2023年4-6月期は売上高746億ドル、利益31億ドルで売上高利益率は4.2%であった。前期(1-3月期)との比較では、売上高は▲14%減、利益は▲64%減であり、また前年同期(2022年4-6月期)比では売上高は▲26%減、利益は▲83%減である。

 

(2)キャッシュフロー及び設備投資

 今期の営業キャッシュフローは151億ドル、投資キャッシュフローは▲30億ドルであり、フリーキャッシュフローは121億ドルであった。また財務キャッシュフローは▲90億ドルであり、この結果、6月末のキャッシュフロー残高は451億ドルとなっており、(残高が明示されていないChevronを除く)4社の中では最も多い。

 Shellの4-6月期設備投資は46億ドルであった。

 

(3)原油・天然ガス生産量

 Shellの1-3月期原油・天然ガスの生産量は、日量平均で原油128万B/D、天然ガス24億立法フィート(cfd)であった。天然ガスを原油に換算した原油・天然ガス合計生産量は170万B/Dである。

 

(続く)

 

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石油と中東のニュース(8月5日)

2023-08-05 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・協調減産継続で原油価格上昇。Brent $85.45, WTI $81.87

・OPEC+閣僚級モニタリング会議開催。現行生産体制維持を確認

・サウジ、100万B/D追加減産を9月も継続

・アブダビADNOC、アゼルバイジャンのガス田権益30%獲得

(中東関連ニュース)

・イスラム国、シリアでの指導者死亡を公表。新指導者にAbu Hafs任命

・レバノン、港湾爆破事件から3年。真相解明求め街頭デモ

・サウジ政府、自国民にレバノンからの退去を勧告

・中国とサウジ、ETF(上場投資信託)の相互上場を協議:ロイター電

 

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今週の各社プレスリリースから(7/30-8/5)

2023-08-05 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/1 出光興産

人事異動に関するお知らせ

https://www.idemitsu.com/jp/content/100043315.pdf

 

8/1 bp

Second quarter 2023 results

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/second-quarter-2023-results.html

 

8/2 ENEOS/出光興産

アラムコ、出光興産との三社間による合成燃料協業について ~日サウジ両国政府立会のもと、覚書を締結~

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20230802_01_02_1080097.pdf

 

8/2 石油連盟

2023年度潤滑油需要見通しについて

https://www.paj.gr.jp/news/733

 

8/3 コスモエネルギーホールディングス

当社株券等の大規模買付行為等に係る情報リスト交付に関するお知らせ

https://www.cosmo-energy.co.jp/content/dam/corp/jp/ja/news/2023/08/03-2/pdf/230803jp_02.pdf

 

8/4 TotalEnergides

Azerbaijan: TotalEnergies Sells a 15% Interest in Absheron Gas Field to ADNOC

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/azerbaijan-totalenergies-sells-15-interest-absheron-gas-field-adnoc

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IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(4完)

2023-08-04 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

3. 2023年GDP成長率見直しの推移(続き)

(OPEC+の盟主サウジとロシアに明暗、インドは6%の高度成長!)

3-1 ロシアとサウジアラビアとインド

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03b.pdf 参照)

 サウジアラビアとロシアは米国と並ぶ三大産油国であり、両国はOPEC+(プラス)の盟主として最近は協調減産体制により石油価格の下落を抑え込んでいる。昨年4月時点では2023年の成長率見通しはサウジアラビア3.6%、ロシア▲2.3%であり、同年2月のウクライナ紛争ぼっ発が両国の明暗を分けた形であった。

 

 紛争により石油価格が急騰したことは輸出国のサウジアラビアに大きな追い風となった一方、紛争当事者のロシアは制裁の影響を受け経済に深刻な懸念が生まれた。2022年10月までの両国の成長率予測はほぼ同じ水準で維持されてきた。しかし今年1月はロシアの成長率が0.3%とプラスに見直された一方、サウジアラビアの成長率は2.6%に下方修正され、両者の格差は縮小した。さらに今回7月にはサウジアラビア1.9%、ロシア1.5%に見直され両国の格差はさらに縮小している。

 

米国を中心とする先進国による経済制裁が続いているにも関わらずロシアの成長率が上方修正されていることは、インド、中国をはじめとするグローバルサウスの国々が欧米先進国と共同歩調を取らず、或いはこれを奇貨としてロシアから安価なエネルギーを輸入し続けている現状を反映したものとみられる。

 

 アジアの経済大国であるインドの2023年のGDP成長率予測の推移は、6.9%(2022年4月時点)→6.1%(7月)→6.1%(10月)→6.1%(本年1月)→5.9%(4月)→5.9%(7月時点)である。昨年7月に下方修正され今回に至っているが、それでもインドの今年の成長率は世界平均を大きく上回る見通しである。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(34)

2023-08-04 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第1章 民族主義と社会主義のうねり(18)

 

034.ナクバ(大災厄)で覚醒した青年将校(1/2)

 ユダヤ人国家イスラエルの独立宣言に対し黙っていられないのがパレスチナに住むアラブ人たちであり、さらにエジプト、ヨルダンなどの周辺アラブ諸国であった。人口規模で言えば独立宣言時のユダヤ人の数は60~70万人程度。一方、周辺のエジプトなどに住むアラブ人は優に100倍を超えていた。旧約聖書の神話に例えればそれはまさにダビデと巨人ゴリアテの戦いに見えた。実際アラブ側の戦争計画者たちは11日以内にユダヤ軍を殲滅すると予告したほどである。

 

 にもかかわらず1948年から1949年にかけてアラブ諸国とイスラエルが戦った第一次中東戦争は、ユダヤ人国家の独立戦争と位置付けたイスラエルの圧倒的勝利に終わりアラブは惨敗した。その理由は兵力と戦意の差であった。確かに人口比率だけで見ればアラブ人はユダヤ人の百倍以上であったが、実際に周辺アラブ諸国が戦場に送り込んだ兵力はエジプトが約1万人、ヨルダンが4,500人、イラク3千人、シリア2千人、レバノン千人、アラブ諸国からの義勇兵2千人のほかパレスチナ人戦闘員を加えても総勢2万3千人にすぎない。これに対してユダヤ側は正規のハガナ軍だけでも約3万5千人でこのほかにイルグンなどの軍事組織及び武装した入植者が数千人いたのである[1]。さらに装備の面でも欧米のユダヤ人同胞からの最新兵器と豊富な資金を得ており彼我の兵力の差は明白であった。

 

 さらに兵士の士気にも雲泥の差があった。ユダヤ人たちは独立の意気に燃え戦意が高い。それよりも万一戦争に敗れるようなことがあれば彼らには再び「ディアスポラ(離散)」の運命が待ち構えている。ユダヤ人たちにとっては何としても負けられない戦争だった。男はもとより女たちも武器を取って立ち上がった。因みにイスラエルは今でも女性に兵役義務がある。現在の世界各国の兵役は志願制度であり徴兵制の国は多くない。韓国のような徴兵が義務付けられた国でも対象は男性だけであり、イスラエルのように女性にも兵役義務がある国は珍しい。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

 

[1] 臼杵陽著「イスラエル」P82他

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石油と中東のニュース(8月3日)

2023-08-03 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・米石油備蓄減で原油価格上昇。Brent $85.67, WTI $82.13

(中東関連ニュース)

・露大統領、近くトルコ訪問。穀物協定延長を協議

・イラン、米軍監視下で係争地アブムーサ島で軍事演習

・UAE大統領、ヨルダン訪問。国王と地域情勢協議

・連日40度を超える酷熱のイラン、2,3両日を休日に

・米国、2021年以来空席の駐UAE大使に女性外交官指名

・イラン:テヘラン大学、科学技術協力で相川大使と会談

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利益、売上が前期比、前年同期比で大きく後退:2023年4-6月期五大国際石油企業決算速報(1)

2023-08-03 | 海外・国内石油企業の業績

 スーパーメジャーと呼ばれる五大国際石油企業(ExxonMobil、Shell、bp、TotalEnergies及びChevron)の4-6月期決算が相次いで発表された。ここでは売上高、利益、売上高利益率、設備投資、キャッシュフロー及び石油・天然ガス生産量について各社の業績を横並びで比較するとともに過去2年間の各社四半期決算の推移を検証する。

 

 なお過去の四半期業績及び2010年から2022年までの通年の業績比較は下記レポートを参照されたい。

http://mylibrary.maeda1.jp/SuperMajors.html

http://mylibrary.maeda1.jp/oil.html

 

  1. 各社の業績概要

表1-D-4-22a「2023年4-6月期国際石油企業の業績(売上、損益)」参照。

表1-D-4-22b「2023年4-6月期国際石油企業の業績(キャッシュフロー、設備投資)」参照。

表1-D-4-22c「2023年4-6月期国際石油企業の業績(原油・天然ガス生産量)」参照。

 

(利益は前年同期比6割減の79億ドル、群を抜く生産量!)

  1. ExxonMobil

プレスリリース:

https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2023/0728_exxonmobil-announces-second-quarter-2023-results

(1)売上・利益・利益率

 ExxonMobilの2023年4-6月期は売上高829億ドル、利益79億ドルで売上高利益率は9.5%であった。前期(2023年1-3月期)との比較では、売上高は▲4.2%減、利益は▲31.1%減であり、また前年同期(2022年4-6月期)比では売上は▲28.3%、利益は▲55.9%といずれも大幅に減少している。

 

 売上高の減少は石油価格の下落によるものである。因みに今年4-6月のBrent 原油平均価格は1バレル78ドルであり、前期(1-3月)の81ドルから▲3.8%下落しており、また前年同期(114ドル)比では▲31.5%の下落であり、ExxonMobilの売上、利益の減少幅とほぼ近似している。

 

(2)キャッシュフロー及び設備投資

 今期の営業キャッシュフローは94億ドル、投資キャッシュフローは▲44億ドルであり、フリーキャッシュフローは50億ドルであった。また財務キャッシュフローは▲82億ドルであり、この結果、6月末のキャッシュフロー残高は296億ドルとなっている。

 ExxonMobilの4-6月期設備投資は62億ドルであった。

 

(3)原油・天然ガス生産量

 ExxonMobilの4-6月期原油・天然ガスの生産量は、日量平均で原油235万B/D、天然ガス75億立法フィート(cfd)であった。天然ガスを原油に換算した原油・天然ガス合計生産量は361万B/Dである。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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IMF世界経済見通し:群を抜き6%以上の高成長を続けるインド(3)

2023-08-02 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0582ImfWeoJuly2023.pdf

 

3. 2023年GDP成長率見直しの推移

 IMFの世界経済見通しは毎年4月、10月に全世界200弱の国について成長率の見直しが行われ、さらに1月及び7月には主要な国と経済圏の成長率が発表されている。主要な国と経済圏については3カ月ごとに検証されていることになる。

 最近の特徴はコロナ禍、ウクライナ紛争、エネルギー価格の高騰など国際経済を取り巻く環境の不透明感が増していることである。このためIMFの成長率見通しも3カ月ごとに大きく変動すると言う特徴が見られる。

 ここでは直近6回(2022年4月、7月、10月、2023年1月、4月及び今回7月)のレポートで今年の成長率がどのように見直されたかを検証する。

 

(5%前後で推移する中国、1%台に据え置かれる日本!)

3-1 全世界及び日本、米国、中国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03a.pdf 参照)

 直近6回のIMF経済見通しにおける2023年の世界のGDP成長率は2022年4月見通しでは3.6%であったが、その後7月には2.9%、10月は2.7%と下方修正され、今年1月に2.9%、7月には3.0%と見直されている。

 

 米国は2.3%→1.0%→1.0%→1.4%→1.6%→1.8%と変化している。2022年7月には大きく下方修正されたが、今年は年初から3回続けて上方修正されている。中国の場合は、5.1%→4.6%→4.4%→5.2%→5.2%→5.2%であり、昨年4月から2回連続して成長率が下落したものの、今年は一転して5%台の成長率が想定されており、世界に先駆けて景気回復に向かうものと見込まれている。

 

 日本の2023年成長率の過去1年間の数値は2.3%→1.7%→1.6%→1.8%→1.3%→1.4%と見直されている。昨年4月に成長率が1%台に下方修正された後、現在まで低い成長率が据え置かれている。エネルギー価格の急騰は日本経済のアキレス腱であり、このことが早期の成長率回復の障害になっているようである。

 

以上

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(33)

2023-08-02 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第1章 民族主義と社会主義のうねり(17)

 

033.イスラエル独立(その4):対英テロ活動を経てついに独立(3/3)

独立の好機到来とばかりハガナーやイルグンなどは対英・対アラブのテロ活動を強化した。ハガナーの主要メンバーには後に首相となりノーベル平和賞を受賞するイツハク・レビン、隻眼の軍人として数々の武勇伝を持つモシェ・ダヤン等が、またイルグンにはこれも首相になったメナハム・ベギンがいた。

 

そしてユダヤ人たちは英国の委任統治終了の日に独立を宣言した。独立の指導者ベン・グリオンはこの日、「イスラエルの地はユダヤ人誕生の地である」と言う書き出しに始まる独立宣言を読み上げた。周辺アラブ諸国はイスラエルの独立を認めず軍事介入に踏み切る。これが第一次中東戦争である。

 

1949年3月、紅海につながるアカバ湾の最奥部にある港町エイラートも戦場となりイスラエル軍が占領した。この時イスラエル軍は近くのホテルのシーツに青いインクでにわかづくりの国旗を作り港に掲揚した。これが「インクの旗」と呼ばれるものであるが、その時の写真は第一次中東戦争を象徴するものとして今も語り継がれている。それはまさに太平洋戦争の激戦地硫黄島で米軍が掲げた星条旗の写真とうり二つである。こうしてイスラエルは地中海に加え紅海側にも出口を確保したのである。

 

 同じ年エイラートの町の郊外のパレスチナ人農家ザハラ家に男の子が生まれている。この戦闘ではザハラ家は戦火を免れ細々とではあるが平穏な暮らしを続けることができた。しかしその平和な生活がいつまでも続くという保証はなかった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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