イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「仏像のこころ」読了

2014年01月10日 | 読書
梅原猛 「仏像のこころ」読了

1965年の著作。もう50年近く前の著作になる。
仏像ごとのもつ意味合い、時代背景が著者の理論に元づいて展開されている。

日本に入ってきた仏像への信仰は、釈迦如来→薬師如来→大日如来→阿弥陀如来とうつろっていったそうだ。
現世は苦しみに満ちている、それを修行によって乗り越えろという釈迦の教えとして日本に入ってきた仏教はそれより手っ取り早くご利益をくれる薬師如来の人気が高くなり、平安の世になって密教が政治に色濃く影響をする時代では難しい大日如来は人気が出なかったが配下の菩薩や天、明王の人気が上がった。飢饉や戦が耐えなかった時代には、もうこの世は嫌だからあの世で楽しませてくれというので阿弥陀如来が人気を博し、現在に至っている。
なるほどと納得させられる内容だ。

こう見てみると、仏教は苦しみや死への恐怖から逃れるために人間が必死になって新しいものを創造していったのだということがよくわかる。知恵によってそういうものを知り、知恵によってそれを克服しなければならない。
現代では自らの知恵によって増やすことができたそのエネルギーを使って寿命を伸ばし、必死で死の恐怖から逃れようとしている。
これを、“知ることの苦しみ”というのかもしれないが、なんとも滑稽な話に聞こえてくる。ぼくもその人間の一人であるわけだけれども・・・。

動物や魚の写真なんかを見ていると、本当に澄んだ目をしているなと思うことがあるが、彼らは迫り来る死というものを意識していないからあんな目を持つことができるのかと妙に納得をしてしまった。
コメント (1)
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