イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「ナカスイ!海なし県の水産列車 」読了

2024年12月10日 | 2024読書
村崎なぎこ 「ナカスイ!海なし県の水産列車 」読了

こういうタイプの小説はライトノベルと言われるそうである。ネットで調べてみると、『小説の分類の一つ。SFやホラー、ミステリー、ファンタジー、恋愛などの要素を、軽い文体でわかりやすく書いた若者向けの娯楽小説をいうが、明確な定義はない。英語のlight(軽い)とnovel(小説)を組み合わせた和製英語であるが、「軽い」という訳については異論もある。略してラノベともいう。文庫版や新書版の判型をとった比較的安価な本が多いことが特徴の一つで、アニメのような絵が表紙や挿絵にふんだんに使われていることが多い。』
と説明されている。
要するに、僕のような年齢の人間が読む本ではないのである。表紙を見た時、そんな予感はしていた・・。
しかし、小説の舞台が水産高校というので読んでみることにした。海のない栃木県に水産高校ではないが水産科がある高校というのは本当にあるらしく、著者はここでたくさんの取材をしてプロットを作ったらしい。

ライトノベルというくらいのライトさの故か、老人界に片足を突っ込んでいる人間には何の感動もなかった。クライマックスくらいには少しくらい涙するかと思ったがそれもなかった。
代わりに、自らの高校時代のことを思い出していた。近眼、肥満、頭悪いという三重苦のなか、どうしたことか県内トップの進学校に合格してしまったことで僕の青春時代は劣等感の塊であった。だから満喫どころではなかった。ダラダラと過ごした三年後、迎えた共通一次試験は得点率が50%程度。ギリギリ地元の国立大学に行けるかどうか、それも二次試験で高得点を取らねばならないという条件付きであった。自分の得点で合格できそうな大学はあるのだろうかと調べてみると三重大学の農学部水産学科というところがあった。理系だし、この本の扉に書かれていたマークトゥエインの名言『今から20年後 君は「やったこと」よりも「やらなかったこと」に後悔するだろう 舫を解き放ち 安穏な港から旅立とう 航路への風を君の帆でつかんで 探し求め 夢を見て そして見つけ出すのだ』というような心持はみじんもなく、地元を離れる勇気はまったくなかった。

今思えば、釣りが好きならこんな選択肢もあったのかもしれなかった。しかし、その先、何をしたいということがなにもなければそんな選択をしても意味がなかったであろう。
主人公のように夢を持つためにはどんなきっかけが必要なのか、今もってそれがわからない。

この小説の最後にはサムエル・ウルマンの「青春」という詩が出てくる。
 『青春とは人生のある期間ではなく、
 心の持ちかたを言う。
 薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
 たくましい意思、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。
 青春とは人生の深い泉の清新さをいう。
 青春とは臆病さを退ける勇気、
 安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。
 ときには、20歳の成年より60歳の人に青春がある。
 年を重ねただけで人は老いない。
 理想を失うとき初めて老いる。』
僕はすでにあの時から老いていた・・。

きっとライトノベルに感動できないのは、年齢のためではなくそのきっかけを見つけられなかったのが原因であるに違いない・・。





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