イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学」読了

2020年04月20日 | 2020読書
成田憲保 「地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学」読了

NHK BSに、「コズミックフロント」というテレビ番組がある。そこでも何回か取り上げられていたけれども、惑星系というのは、地球がある太陽系だけでなく、ほかの恒星にもある。そういう惑星のことを「系外惑星」という。観測精度があがってきてそれらを見つけることができるようになってきた。
この本は、そういう系外惑星についての話だ。
はるかかなたにあって、むちゃくちゃ小さくておまけに自分で光っていない星をよくぞ見つけることができるものだと思う。人間の能力というのはすごい。

まずは発見方法だが、それには系外惑星を直接観測する直接法と様々な観測データから存在を確かめる間接法というものがある。
直接法とは、恒星の光っている部分を隠して、恒星の光を反射しながら周りを回っている惑星を観測するものだ。これには恒星を隠す「コロナグラフ」、大気による画像の乱れを補正するための「補償工学」というものを駆使しておこなわれる。あまりにも小さい星はさすがに見ることができず、木星くらいのかなり大きな惑星しかみつけることができないらしい。

間接法には4種類の観測方法がある。
アストロメトリ法は、恒星の位置の変化を観測するものだ。惑星にも引力があり、その影響で恒星も揺さぶられる。そこにできるわずかな位置の変化を観測して惑星の存在を確かめるものだ。
視線速度法とは、光のドップラー効果を観測する。惑星の引力に引かれて恒星が動くと地球に届く恒星の光にドップラー効果の影響が出る。それを観測する。
トランジット法とは、恒星の前を惑星が通過すると恒星の光が遮られることでわずかだが暗くなる。その暗くなり加減を観測して惑星の大きさやいくつあるかなどを観測する。
マイクロレンズ法は重力レンズの効果を利用する。観測したい恒星の真後ろにもうひとつ恒星があると重力レンズの効果で見えないはずの恒星が見えるのだが、惑星が存在する場合とない場合で見え方が異なる。
それぞれ一長一短があり、アストロメトリ法は主星から遠い重い星を見つけることができ、公転周期、軌道、質量がわかる。視線速度法は主星のそばにある重い星を見つけやすい。トランジット法は惑星の半径を測定できる唯一の方法である。マイクロレンズ法はスノーライン(水が凍る境目)付近の惑星を見つけやすい。

太陽系の星の並びは、内側に地球や火星のような岩石惑星が並び、その外側に木星や土星の岩石惑星、その外側にもう少し小さいガス惑星が並んでいる。これは太陽に近い内側の岩石惑星は大気のほとんどを太陽風で吹き飛ばされ、木星や土星はそれがなかったので惑星の種の周りに多くのガスを引き寄せることができた。それより外の海王星や天王星は原料となるガスが木星と土星に取られてしまってあまり大きくなれなかった。
惑星が大きくなれるかどうかはスノーラインの内側か外側かどちらで惑星の種ができたかどうかで決まる。氷があるところでは惑星の材料がたくさんあるということで大きくなれる。地球の10倍くらいまで大きくなれたら周りのガスを引き寄せて巨大ガス惑星に成長できるそうだ。
これは京都モデルと呼ばれ、日本人が考えたモデルだ。どの星でも大体こんな並びだと思われていたけれども観測結果からどうもそうではないということがわかってきた。
他の星系では、木星クラスの巨大な惑星が主星のすぐそばの軌道にあったりする。これは他の惑星とともに重力の影響を及ぼしあうことが原因だが、コズミックフロントでは太陽系でも木星はかつてはもっと内側の軌道を回っていたけれども、徐々に今の軌道まで移動したというようなことを言っていた。その過程で地球に害を及ぼすような隕石のもとになる小惑星を蹴散らし、大量絶滅につながるような隕石の衝突が少なかったそうだ。といっても、6500万年前の隕石衝突のようにないこともないのが宇宙である。

しかし、どれも光の点にしか見えないあまりにも遠い向こうの現象である。恒星の位置が変化するといっても、写真に撮ったとき、1ミクロンほどの動きくらいのものらしい。そんなものをよく観測できるなというのと、そもそも、そんなものを観測しようという気になったというのがすごいと思うのだ。そして、そんなことを知りたいと思う気持ちというのは人間の本能なのだろうか。
そして、精密な観測をしようとするとひとつのプロジェクトで数千億から1兆円規模の予算が必要らしい。
現在見つかっている、ハビタブルゾーン(水が液体でいられる範囲。内側だと温度が高すぎて気体に、低すぎると氷になる。生物が存在するためには水が液体でいられる環境が必須である。)に岩石惑星がありそうないちばん近い恒星系でも地球から40光年はなれているそうだ。(それは、トラピスト1と呼ばれ、ハビタブルゾーンに3個の惑星が存在し、合計7個あるそうだ。)
現在、一番地球に環境が似ているかもしれない系外惑星はケプラー452bという惑星で、1400光年も離れているそうだ(大きさは地球の1.6倍 公転周期は385日)
惑星が反射している光の成分を分析することで、大気があるかどうか、そしてその大気の成分まで知ることもできるらしい。酸素があるかどうかも。
多分、そういうことを知ったからといって、それを実際に見に行くというのは不可能に近い。それとも、遠い将来ではあるけれども、人間はそんな遠いところまで行くことができる技術力を獲得するのだろうか。
そしてその目的はやはり単なる知的欲求を超えて将来の移住先を見つけるための無意識な行動なのだろうか。しかし、技術が確立されたとしても、経済的な問題、人間の生物としての寿命を超えることはできるのだろうか。超時空要塞マクロスを作るにはいったいどれくらいのお金が要るのだろうか。ひょっとしたら世界中のGDPをすべてつぎ込んでも無理なんじゃないだろうか。もし、建造できたとして、地球が存亡の危機に陥った時、それに誰が乗るのかということころでもめにもめて出発前に大戦争が起こるのではないだろうか。
そして、ワープ航法はどうも物理的には実現が非常に無理そうだから40光年の旅といえば下手をすると数千年の旅になる。何世代も引き継いでの旅だ。ウイルス1個で右往左往する人類にそんな旅ができるのだろうか。
また、そんな星を見つけられたとして、先住生物がいたら、それらを駆逐して移り住むのだろうか。それが知的生物だったとしたらそこでも戦争ということになる。そんなことが許されるのだろうか。

これから先の系外惑星の捜索は宇宙に望遠鏡を打ち上げて赤色矮星という温度が低くて目立たない星を中心に探る計画だそうだ。そういう星は地球からもっと近いところにあり、岩石惑星を伴っている可能性も高いらしい。
ひょっとしたらそこまでは数十年で行けるようになるのかもしれない。しかし、その世界は薄暗くて赤い光線で満たされている世界らしい。
系外惑星がはじめて見つかったのが1995年、それからたった20数年でここまで観測技術が進歩したのだから十分高速で宇宙旅行をする技術も見つかるのかもしれない。特にやんごとなき人でなくても宇宙を旅する時代に生きることができたなら、一度はそんな世界を肉眼で見てみたいとは思うけれども、なんだかそんなところでは暮らしたくはないなと思うのである。

ちょっとしたトリビアであるが、こういった惑星の名前はどうやって付けられるかというと、主星には見つけた望遠鏡の名前の次に順番がつけられ、惑星は見つかった順にbからアルファベットが振られるらしい。だからaという名前の付く惑星は存在しないことになる。
トラピスト1はチリのトラピスト望遠鏡が最初に見つけた恒星系だからトラピスト1で、ケプラー452bはケプラー宇宙望遠鏡が452番目に見つけた恒星系で最初に見つけられた惑星ということになる。
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