場所:初島沖
条件:中潮 3:26満潮
釣果:ブリ 1匹
昨日は夏至、今日も夜明けが早いがこれからはみるみるうちに夜明けが遅くなってゆく。これも地球の神秘だ。今年の夏至直後の夜明けも見納めである。
この前、和歌浦漁港でタコ釣りのまねごとをしていた時、菊新丸さんにもお会いした。彼の情報では、初島方面で飲ませ釣りが始まったとのこと。
去年、新しい竿を買ったものの、飲ませ釣りではまったく釣果がなく、はたして僕はこの釣法で魚を釣り上げることができるのだろうかと不安ではあるのだが、とにかくやり続けなければ釣れるはずの魚も釣れない。魚が釣れなくても誰も困る人がいるわけではなく、そこは適当だ。
ただ、この釣行記も2回ボウズが続いている。そういう意味ではなんとかボウズだけは避けたいと思い、保険にチョクリ釣りの仕掛けを持っていくことにする。この時期、この釣法ではまず空振りということはないだろう。
最初に書いた通り、1年で一番夜明けが早い日、出港は午前4時過ぎでも辺りはすっかり明るくなってしまっている。

一路沖ノ島を目指しながらマルアジの反応を見る。しかし、保険であるはずがまったく反応を見つけることができない。きちんと機能的に作られた船なら、操船しながら魚探を見ることができるけれども、エンジン場の奥にしか設置できないこの船では、魚探を見ながら船を走らせることができないのでけっこう見落としてしまう。そこは運に頼らねばならないのが残念でもある。都度、魚探のモニターを外に出して運転している目の前に設置できるようにするという方法もあるのだろうが、改造するのも面倒だし、やっぱり魚が釣れなくても誰も困る人がいるわけではないのだ。
魚の群れを探している間に初島到着。

沖ノ島のさらに沖に行くとマルアジが居るのかもしれないが、そこまで追いかける気はない。今日は限りなくボウズだと覚悟しながら今度はベイトの群れを探す。
菊新丸さんの情報のとおり、ベイトはすぐに見つかった。それもかなり厚い反応だ。水面下20メートル近くまでベイトがびっしりと映っている。

さっそく仕掛けを準備し落としてみる。
今日は仕掛けづくりに気を使ってみた。枝素はナイロンの8号を使っているのだが、この糸、父親が使っていたものをいまだに使っている。こんな太さの糸なんてめったに使うことがないので600メートルもあると2世代でも使いきれないのだ。
直径の小さなボビンに巻かれているので20年以上経つとかなりの巻き癖がついている。今までは何も考えずそのまま使っていたが、カールしているものをドライヤーの熱で真っすぐに整えてみるというひと手間を加えた。
それのおかげだろうか、ベイトはけっこう掛かってくれる。(これは単にベイトがサバだったということだけかもしれないが・・)
2、3回目の流しだっただろうか、セオリー通りにベイトが暴れ出した。これはひょっとして本当に食ってくるかもしれないと身構えていると、竿先が跳ね上がった瞬間に今度は一気に竿先を持っていかれた。
確実に魚が掛かった。それも大きい。魚も自分が騙されたと知ったか、その引きはどんどん強くなる。30号の鉛でもけっこう竿先がお辞儀するような竿なので、もう、根元から曲がっている。いったいどれほどの大きさの魚が掛かっているのか・・。
少し落ち着いて水深と糸が引き出された長さを見てみると水深以上に出てしまっている。これ以上道糸を引き出されると根に取られてしまうかもしれない。ドラグを少し締めて強引にリールを巻き始めるがリールを巻いた分だけまた引き出されていく。8号の糸とはいえフロロカーボンではなくナイロンだ。傷がついていさえしなけばそれなりの強度はあるはずだが、こんな大物とはやりとりをしたことはない。不安はあるけれども運を天に任せるしかない。
そんなに長時間のやり取りではなかったはずだが、僕には10分にも20分にも思えた。道糸が残り5メートルくらいになってきて、魚の姿が見えてきた。魚も船の影に怯えたか、この期に及んでもまだ道糸を引き出してゆく。
水面下に現れた魚の姿を見ると確かに大きい。タモの直径は60センチあるかないかなので一瞬掬えないかと思うほどだ。船の上には僕一人だけだ。手伝ってくれるひとはいない。うまく頭から入れないと暴れた拍子に鉤はずれということも十分にあり得る。ここまできたらなんとしても取りたい。狭い座席を離れて前のデッキへ移動し、万が一に備える。魚も少しは疲れてきたか、その隙を狙ってタモ入れ。一度は失敗したが2度目でうまく頭を引き込むことができた。体の三分の一ははみ出しているが一気にデッキに引き上げた。
大きい。こんなに大きな魚を釣ったのは初めてだ。いちいちメジャーで計るなどという無粋なことはしないが、おそらく90センチ前後はあるのではないだろうか。とりあえず生け簀に入れてみたが窮屈そうだ。

ちょっと弱っているし、最後まで生きているかが心配だがすぐに絞めるわけにもいかない。小物釣り師である僕のクーラーボックスにはどう見ても入りそうにないのだ。
魚の様子を見ながら釣りを続ける。
相変わらずベイトの反応はあり、うまく鉤に乗ってくれる。
たまに竿先を持ち上げる反応がある。さっきの感じだとこれもアタリのようだ。小鯖が30号の錘を持ち上げることはなかろう、大物が食いあげているのかもしれない。試しに引き上げてみるとくっきりと歯型が・・。

ヒラメはエサを食べるのが下手と聞くが、これはヒラメの歯型なのだろうか。うまく1匹釣り上げたので期待と妄想はどんどん膨らんでゆくのだ。
午前6時を過ぎたころからベイトの反応がなくなってきた。島の上から日が昇ってきたからだろうか。
生け簀の中の獲物も息絶え絶えを通り越してすでに昇天してしまっている。鮮度を保ったまま持ち帰るのが先決だと思いそのまま終了とした。
しかし、鮮度を保ったまま持ち帰ると言っても、どうしよう・・・。
一応、むちゃくちゃ釣れたときのためにと発泡スチロールの箱を積んでいるのでそれを取り出してきたがやっぱり入りそうにない。
どうしたものか・・。少なくとも頭を外す必要があるのは確かだ。とりあえずデッキの上で解体作業を始める。
頭を落として内臓を取り除き、発泡スチロールの箱に収めてみるがやっぱり尾びれがはみ出る。尾びれを落とすとあとでさばくのが難しくなるし、せっかくの大物の見栄えが悪くなる。尾びれを切る代わりに蓋を切ってやるととりあえず収まった。保冷力は落ちるだろうが仕方がない。

その後は急いで港へ向けて舵を切る。
帰り支度を済ませて叔父さんの家へ。今日の獲物は1匹だけだがこれは絶対に食べてもらいたい。叔母さんに出刃包丁とまな板を借りて農業の作業場で2枚におろして片身を手渡した。
今日も円卓会議はおこなわれており、少しだけ自慢にもなったのだ。
この釣りは確かに面白い。生きた魚を生贄にするというのは少々残酷ではあるのだがそこは見ないことにしてまた行ってみようと思うのだ。
条件:中潮 3:26満潮
釣果:ブリ 1匹
昨日は夏至、今日も夜明けが早いがこれからはみるみるうちに夜明けが遅くなってゆく。これも地球の神秘だ。今年の夏至直後の夜明けも見納めである。
この前、和歌浦漁港でタコ釣りのまねごとをしていた時、菊新丸さんにもお会いした。彼の情報では、初島方面で飲ませ釣りが始まったとのこと。
去年、新しい竿を買ったものの、飲ませ釣りではまったく釣果がなく、はたして僕はこの釣法で魚を釣り上げることができるのだろうかと不安ではあるのだが、とにかくやり続けなければ釣れるはずの魚も釣れない。魚が釣れなくても誰も困る人がいるわけではなく、そこは適当だ。
ただ、この釣行記も2回ボウズが続いている。そういう意味ではなんとかボウズだけは避けたいと思い、保険にチョクリ釣りの仕掛けを持っていくことにする。この時期、この釣法ではまず空振りということはないだろう。
最初に書いた通り、1年で一番夜明けが早い日、出港は午前4時過ぎでも辺りはすっかり明るくなってしまっている。

一路沖ノ島を目指しながらマルアジの反応を見る。しかし、保険であるはずがまったく反応を見つけることができない。きちんと機能的に作られた船なら、操船しながら魚探を見ることができるけれども、エンジン場の奥にしか設置できないこの船では、魚探を見ながら船を走らせることができないのでけっこう見落としてしまう。そこは運に頼らねばならないのが残念でもある。都度、魚探のモニターを外に出して運転している目の前に設置できるようにするという方法もあるのだろうが、改造するのも面倒だし、やっぱり魚が釣れなくても誰も困る人がいるわけではないのだ。
魚の群れを探している間に初島到着。

沖ノ島のさらに沖に行くとマルアジが居るのかもしれないが、そこまで追いかける気はない。今日は限りなくボウズだと覚悟しながら今度はベイトの群れを探す。
菊新丸さんの情報のとおり、ベイトはすぐに見つかった。それもかなり厚い反応だ。水面下20メートル近くまでベイトがびっしりと映っている。

さっそく仕掛けを準備し落としてみる。
今日は仕掛けづくりに気を使ってみた。枝素はナイロンの8号を使っているのだが、この糸、父親が使っていたものをいまだに使っている。こんな太さの糸なんてめったに使うことがないので600メートルもあると2世代でも使いきれないのだ。
直径の小さなボビンに巻かれているので20年以上経つとかなりの巻き癖がついている。今までは何も考えずそのまま使っていたが、カールしているものをドライヤーの熱で真っすぐに整えてみるというひと手間を加えた。
それのおかげだろうか、ベイトはけっこう掛かってくれる。(これは単にベイトがサバだったということだけかもしれないが・・)
2、3回目の流しだっただろうか、セオリー通りにベイトが暴れ出した。これはひょっとして本当に食ってくるかもしれないと身構えていると、竿先が跳ね上がった瞬間に今度は一気に竿先を持っていかれた。
確実に魚が掛かった。それも大きい。魚も自分が騙されたと知ったか、その引きはどんどん強くなる。30号の鉛でもけっこう竿先がお辞儀するような竿なので、もう、根元から曲がっている。いったいどれほどの大きさの魚が掛かっているのか・・。
少し落ち着いて水深と糸が引き出された長さを見てみると水深以上に出てしまっている。これ以上道糸を引き出されると根に取られてしまうかもしれない。ドラグを少し締めて強引にリールを巻き始めるがリールを巻いた分だけまた引き出されていく。8号の糸とはいえフロロカーボンではなくナイロンだ。傷がついていさえしなけばそれなりの強度はあるはずだが、こんな大物とはやりとりをしたことはない。不安はあるけれども運を天に任せるしかない。
そんなに長時間のやり取りではなかったはずだが、僕には10分にも20分にも思えた。道糸が残り5メートルくらいになってきて、魚の姿が見えてきた。魚も船の影に怯えたか、この期に及んでもまだ道糸を引き出してゆく。
水面下に現れた魚の姿を見ると確かに大きい。タモの直径は60センチあるかないかなので一瞬掬えないかと思うほどだ。船の上には僕一人だけだ。手伝ってくれるひとはいない。うまく頭から入れないと暴れた拍子に鉤はずれということも十分にあり得る。ここまできたらなんとしても取りたい。狭い座席を離れて前のデッキへ移動し、万が一に備える。魚も少しは疲れてきたか、その隙を狙ってタモ入れ。一度は失敗したが2度目でうまく頭を引き込むことができた。体の三分の一ははみ出しているが一気にデッキに引き上げた。
大きい。こんなに大きな魚を釣ったのは初めてだ。いちいちメジャーで計るなどという無粋なことはしないが、おそらく90センチ前後はあるのではないだろうか。とりあえず生け簀に入れてみたが窮屈そうだ。

ちょっと弱っているし、最後まで生きているかが心配だがすぐに絞めるわけにもいかない。小物釣り師である僕のクーラーボックスにはどう見ても入りそうにないのだ。
魚の様子を見ながら釣りを続ける。
相変わらずベイトの反応はあり、うまく鉤に乗ってくれる。
たまに竿先を持ち上げる反応がある。さっきの感じだとこれもアタリのようだ。小鯖が30号の錘を持ち上げることはなかろう、大物が食いあげているのかもしれない。試しに引き上げてみるとくっきりと歯型が・・。

ヒラメはエサを食べるのが下手と聞くが、これはヒラメの歯型なのだろうか。うまく1匹釣り上げたので期待と妄想はどんどん膨らんでゆくのだ。
午前6時を過ぎたころからベイトの反応がなくなってきた。島の上から日が昇ってきたからだろうか。
生け簀の中の獲物も息絶え絶えを通り越してすでに昇天してしまっている。鮮度を保ったまま持ち帰るのが先決だと思いそのまま終了とした。
しかし、鮮度を保ったまま持ち帰ると言っても、どうしよう・・・。
一応、むちゃくちゃ釣れたときのためにと発泡スチロールの箱を積んでいるのでそれを取り出してきたがやっぱり入りそうにない。
どうしたものか・・。少なくとも頭を外す必要があるのは確かだ。とりあえずデッキの上で解体作業を始める。
頭を落として内臓を取り除き、発泡スチロールの箱に収めてみるがやっぱり尾びれがはみ出る。尾びれを落とすとあとでさばくのが難しくなるし、せっかくの大物の見栄えが悪くなる。尾びれを切る代わりに蓋を切ってやるととりあえず収まった。保冷力は落ちるだろうが仕方がない。

その後は急いで港へ向けて舵を切る。
帰り支度を済ませて叔父さんの家へ。今日の獲物は1匹だけだがこれは絶対に食べてもらいたい。叔母さんに出刃包丁とまな板を借りて農業の作業場で2枚におろして片身を手渡した。
今日も円卓会議はおこなわれており、少しだけ自慢にもなったのだ。
この釣りは確かに面白い。生きた魚を生贄にするというのは少々残酷ではあるのだがそこは見ないことにしてまた行ってみようと思うのだ。