サナア近郊の観光名所、ダール・ル・ハジャル(石の家)
思い返せば去年の8月後半、つまりちょうど今の時期、私はイエメン共和国の首都サナアに、2週間の観光旅行に行ったのだった。元来忘れっぽい性質なので、あれから一年のあいだに、旅の思い出は記憶の地層の奥深くに沈んでしまったのだが、完全に忘れてしまう前にちょいと頑張って、無理やり掘り起こしてみようと思う。
そもそもなんでイエメンに行くことにしたんだっけ・・・?
当時私はエジプトのカイロに住んでいた。
カイロの夏は暑い。しかもなぜか湿気がある。もちろん日本には遠く及ばないが、カイロも意外に蒸し暑くて、室内にいてもじんわり汗をかくのである。やることもなくアパートの自室に引きこもって退屈し、暑さにうんざりしていた私は、イエメンに避暑に行くことを思いついた。天気予報でみると、サナアの最高気温はせいぜい20度くらい。涼しそうじゃないですか!サナアには日本人の友人が留学して、アラビア語を勉強しているので、久しぶりに彼女に会うのも楽しみだった。
イエメンではアルコール類の製造・販売がご法度である。
そのせいで、今まで私はイエメンを敬遠していた。酒の飲めないところなんて、行きたくないもん!
しかし、おりしもラマダーンである。
カイロでは普段酒に困ることはないが、ラマダーンの間だけは酒屋が閉まるのだ(酒屋のおっちゃんたちによると、そういう法律があるらしい)。それに備えて、いちおう私はビールやアラク(アニス風味の蒸留酒)を買いだめしておいたのだが、とても1ヶ月もちそうにない。エジプトで禁酒もイエメンで禁酒も同じこと、2週間病院に入院したと思って我慢して、我慢できないこともなかろうよ。
というわけで、私は今回この問題には目をつぶって、思い切って出かけることにしたのだ。
イエメン旅行に必要なものはなんでしょう?
日本人がイエメン共和国に入国するには、ビザが必要である。
以前はサナア空港到着時に簡単に取れたらしいが、治安が悪化したせいか、それができなくなっており、出発前にカイロのイエメン大使館で取っておく必要があった。ビザ申請には日本大使館からのレターが必要なので、まず日本大使館に行く。
イエメンに観光旅行に行きたいので、ビザ申請に必要なレターをくださいな、と窓口で頼むと、「えっ、・・・イエメンですか?あの、外務省から注意勧告が出ているのはご存知ですよね?」と係りの男の人は微妙に顔を曇らせ、外務省危険情報ファイルのイエメン共和国のページを開き、私に差し出す。
もちろん私はご存知だった。
イエメンは日本と違って、治安の良さを自慢にしている国ではなく、どちらかというとその逆である。「十分に注意してください」という一番ゆるい注意勧告ですんでいるのは、首都サナアと南部の都市アデン周辺、それにソコトラ島だけで、残りの地域は「渡航の是非を検討してください」、「渡航の延期をお勧めします」など、より厳しい勧告が出されている。北部でシーア派の一派・ザイーディのホウシ軍と、政府の間で激しい戦闘が行われていたのは記憶に新しいし、それ以外にも、身代金目当ての外国人の誘拐、南部での独立運動、アルカイダの支部の活動(詳細は不明だが)など、不安材料が盛りだくさんなのである。
とはいえ、前述の友人によると、サナアにいる限り大丈夫らしいので、私はあまり心配していなかった。結局私は日本大使館で、「イエメン共和国に関して、外務省から注意勧告がいっぱい出ているのを承知のうえで、物好きにもわざわざ旅行します」という(ような趣旨の)文書にサインさせられたうえ、「サナア以外のところに足を踏み入れません」と一筆書いた。翌日ようやくレターを受け取って、その足でイエメン大使館に向かう。イエメン大使館では、意外に(失礼)効率よく事務が行われているようで、その翌日にはつつがなくビザを受け取ることができた。
その3日後、私はエジプト・エアでアラビア半島の南の果ての国、イエメンへ飛んだのだ。
今現在のイエメンに関する危険情報はというと・・・
イエメンでは今年の1月に反体制運動が始まり、日本領事館はサナアから撤退してしまったそうだ。カイロのイエメン大使館でも、今ではビザの発給を受け付けていない。
日本外務省の海外安全ホームページのイエメンの地図を見ると、全土がまっかっかに塗られており、渡航延期・退避勧告が出されている。どうやら去年行っておいて正解だったようだ。
ちなみにシリアの地図も今ではまっかっかで、全土に渡航延期・退避勧告が出されている。私が住んでいたころは平和そのものだったのに・・・。
中東で危険な国というと、アフガニスタンとイラクがまず思い浮かぶが、意外にイラクは全域が真っ赤ではなく、退避勧告や渡航延期勧告が出ていない地域が複数存在する。アフガニスタンのほうは完全にまっかっかだけどね。
思い返せば去年の8月後半、つまりちょうど今の時期、私はイエメン共和国の首都サナアに、2週間の観光旅行に行ったのだった。元来忘れっぽい性質なので、あれから一年のあいだに、旅の思い出は記憶の地層の奥深くに沈んでしまったのだが、完全に忘れてしまう前にちょいと頑張って、無理やり掘り起こしてみようと思う。
そもそもなんでイエメンに行くことにしたんだっけ・・・?
当時私はエジプトのカイロに住んでいた。
カイロの夏は暑い。しかもなぜか湿気がある。もちろん日本には遠く及ばないが、カイロも意外に蒸し暑くて、室内にいてもじんわり汗をかくのである。やることもなくアパートの自室に引きこもって退屈し、暑さにうんざりしていた私は、イエメンに避暑に行くことを思いついた。天気予報でみると、サナアの最高気温はせいぜい20度くらい。涼しそうじゃないですか!サナアには日本人の友人が留学して、アラビア語を勉強しているので、久しぶりに彼女に会うのも楽しみだった。
イエメンではアルコール類の製造・販売がご法度である。
そのせいで、今まで私はイエメンを敬遠していた。酒の飲めないところなんて、行きたくないもん!
しかし、おりしもラマダーンである。
カイロでは普段酒に困ることはないが、ラマダーンの間だけは酒屋が閉まるのだ(酒屋のおっちゃんたちによると、そういう法律があるらしい)。それに備えて、いちおう私はビールやアラク(アニス風味の蒸留酒)を買いだめしておいたのだが、とても1ヶ月もちそうにない。エジプトで禁酒もイエメンで禁酒も同じこと、2週間病院に入院したと思って我慢して、我慢できないこともなかろうよ。
というわけで、私は今回この問題には目をつぶって、思い切って出かけることにしたのだ。
イエメン旅行に必要なものはなんでしょう?
日本人がイエメン共和国に入国するには、ビザが必要である。
以前はサナア空港到着時に簡単に取れたらしいが、治安が悪化したせいか、それができなくなっており、出発前にカイロのイエメン大使館で取っておく必要があった。ビザ申請には日本大使館からのレターが必要なので、まず日本大使館に行く。
イエメンに観光旅行に行きたいので、ビザ申請に必要なレターをくださいな、と窓口で頼むと、「えっ、・・・イエメンですか?あの、外務省から注意勧告が出ているのはご存知ですよね?」と係りの男の人は微妙に顔を曇らせ、外務省危険情報ファイルのイエメン共和国のページを開き、私に差し出す。
もちろん私はご存知だった。
イエメンは日本と違って、治安の良さを自慢にしている国ではなく、どちらかというとその逆である。「十分に注意してください」という一番ゆるい注意勧告ですんでいるのは、首都サナアと南部の都市アデン周辺、それにソコトラ島だけで、残りの地域は「渡航の是非を検討してください」、「渡航の延期をお勧めします」など、より厳しい勧告が出されている。北部でシーア派の一派・ザイーディのホウシ軍と、政府の間で激しい戦闘が行われていたのは記憶に新しいし、それ以外にも、身代金目当ての外国人の誘拐、南部での独立運動、アルカイダの支部の活動(詳細は不明だが)など、不安材料が盛りだくさんなのである。
とはいえ、前述の友人によると、サナアにいる限り大丈夫らしいので、私はあまり心配していなかった。結局私は日本大使館で、「イエメン共和国に関して、外務省から注意勧告がいっぱい出ているのを承知のうえで、物好きにもわざわざ旅行します」という(ような趣旨の)文書にサインさせられたうえ、「サナア以外のところに足を踏み入れません」と一筆書いた。翌日ようやくレターを受け取って、その足でイエメン大使館に向かう。イエメン大使館では、意外に(失礼)効率よく事務が行われているようで、その翌日にはつつがなくビザを受け取ることができた。
その3日後、私はエジプト・エアでアラビア半島の南の果ての国、イエメンへ飛んだのだ。
今現在のイエメンに関する危険情報はというと・・・
イエメンでは今年の1月に反体制運動が始まり、日本領事館はサナアから撤退してしまったそうだ。カイロのイエメン大使館でも、今ではビザの発給を受け付けていない。
日本外務省の海外安全ホームページのイエメンの地図を見ると、全土がまっかっかに塗られており、渡航延期・退避勧告が出されている。どうやら去年行っておいて正解だったようだ。
ちなみにシリアの地図も今ではまっかっかで、全土に渡航延期・退避勧告が出されている。私が住んでいたころは平和そのものだったのに・・・。
中東で危険な国というと、アフガニスタンとイラクがまず思い浮かぶが、意外にイラクは全域が真っ赤ではなく、退避勧告や渡航延期勧告が出ていない地域が複数存在する。アフガニスタンのほうは完全にまっかっかだけどね。
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