長女の仕事が休みだったので、家の近くのポストに郵便物を出しに行くついでに二人で散歩をすることにした。
今日の気温は氷点下。粉雪が降っていたが、吹雪じゃないのでこれくらいなら大丈夫。
長女に聞くと「散歩に行きたい」と言うので、寒くないようにがっちりまかなって(もしや方言?着込んで・・という意味です)出かけた。
ポストに郵便を出してから、もうすこし歩きたいので山の方へ行くことにした。
例年ならば雪が深くて行くことが無理な場所だが、今年は雪が少ないので歩けるだろう。
山の入口からは、人が歩いた跡が道になっているのが見えた。
普段は熊が怖いので一人では行かないのだが、今日は娘と二人なので大声で話しながら歩けば大丈夫だろうと思って入った。
上の写真のようにわりと歩きやすい道が続いていたのだが、途中から道が無くなってきた。
確かに一人か二人ほどの足跡は残っているのだが、道になっていないので歩きにくいことこの上ない。
この山は、住宅地に近いので奥地に入り込まない限り、道に迷うとか雪崩に遭うといった危険はない。
ただいつだったか、家の中であまりにヘリコプターの音がうるさいので二階のベランダに出て見たら、乗っている人と目が合うくらいの至近距離に飛びながら止まっているヘリがいて驚いたことがあった。
目の前にヘリコプターがいるというのは、生まれて初めての経験だった。
あとでわかったのだが、山岳救助隊のヘリで山菜取りで山に入って行方不明になった人の捜索をしていたそうだ。
「なめたらあかん、なめたらあかん~♪」
山道を歩きながら、のど飴のコマーシャルソングがずっと頭の中を流れていた。
戻れ、戻れという警報音が鳴っている気がした。
これ以上行くのは大変ということで、途中で引き返すことにしたのだが、来た道を戻るより山を抜けた方が、家へ帰るのは断然早い。
しかし山を抜けるには、雪のない季節と違って道なき道を歩かなければいけない。
「家に帰るには山を行った方が早いけど道が無いから、遠くなるけど来た道を戻ろうか?」と長女に聞くと、一刻も早く家に帰りたい長女は「山を通って帰る」と言う。(どうやらこの時、長女はトイレに行きたかったそうだ・・・)
そこで道なき道を歩き雪山をよじ登って家に向かったのだが、これが想像以上に大変だった。
もうこの時点で、すでに散歩ではなくて登山になっていた。
雪山には野生動物の足跡しかなく、その上を歩くとずぶずぶと雪の中に足が埋まる。
歩くのもままならず、両手も使って四つん這いになって進んだりしたのだが、先月59歳になったばかりの身体には結構きつい。途中で息が上がってくる。
すると、後ろにいた長女が背中を支えてくれながら「大丈夫?」と気遣ってくれてうれしかった。
さほど息も上がっていない長女に「先に行っていいよ」と言うと、長女は軽々と雪の上を歩き、あっという間に姿が見えなくなった。
なんという身軽さ、そして驚きの体力。
長女は小さい頃から病弱ですぐに熱を出していた。発熱して意識不明になり救急車で運ばれたこともある。
小さい頃からずっと、そしてこれから先も、私と夫が元気なうちは長女を支えて守って行かなければいけないと思っていたが、いつの間にか支えてもらう側になっていることを気づかされる。
やっと家が見えてきて、私を待っていてくれた長女が、最後の雪山をひょいと乗り越えて行ったのが見えた。
この雪山を登ればもう家・・・最後に雪山に手をかけてひょいと乗り越える予定だったのだが・・・えっ?えっ?おかしい、登れない~~
大声で長女を呼び戻すと、手を引っ張ってもらってようやく乗り越えることができた。
「なめたらあかん、なめたらあかん~♪」
冬の散歩コースは、よく考えてから行くべきと心から思いました。