ミーロの日記

日々の出来事をつれづれなるままに書き綴っています。

ご飯があれば

2021-07-28 20:45:21 | 日記

庭の草木に水やりをしていたら「こんにちは」と声がした。

振り返ったら近所に住む中国人のワンさんが笑顔で立っていた。

ワンさんに会うと、いつも立ち話をする。

しばらくお互いの近況報告などし合った後、「そう言えば、中国の水害被害は大変でしたね。ご実家の方は大丈夫ですか?」と聞いてみた。

「実家は大丈夫でした。でも水害には慣れてます。子どもの頃は、腰まで水が来る水害が、年に一度はありましたから」とおっしゃった。

腰までの水と言ったら、相当な被害を受ける。

家の中だって泥水が入って、家具や電化製品などは駄目になってしまうだろう。

すると、ワンさんが言った。

「それは大丈夫。貧乏だったから、家具なんてほとんど無いですね。有るのは、少しの鍋と茶碗と箸だけ。だから簡単に上にあげられる。電気も来ていなかったから、壊れる物は、何も無い」

「でも水がひいた後、家の中に泥が入って掃除が大変でしょう?」

「それも大丈夫。水が乾いたら掃き出せばいいからね。もともと家の中は砂や土がいっぱいでしたよ。靴が無かったから、家も外も、みんな裸足で過ごしていたから、家の中は外と同じ」

初めて聞いたワンさんの話は、かなり衝撃的だった。

正確に年齢を聞いたことは無いが、たぶんワンさんは私より2〜3歳下だろうか。

自分の子どもの頃を思い出しても、さすがに靴が無くて裸足で外を歩いている子はいなかった。

ワンさんが、子どもの頃に、そのような暮らしをしていたとは知らなかった。

それにしてもワンさんは、中国で医師をしていたと言っていたので、階級社会の中国では上の方の人なのかと思っていた。

「私のお父さん、革命でやられたです。それで家を盗られて、家族で借家に住んだ。だから貧乏になった」

最初はワンさんの日本語がよく分からず、革命でやられたとは、どう言う意味なのかわからなかったが、話しているうちに少しずつわかってきた。

たぶん革命と言うのは、中国で1966年から10年間続いた文化大革命のことだろう。

文化大革命は、資本主義化による封建的政治腐敗を正し、人民による社会主義文化を創り上げるという大義名分で、当時の知識人や政治家の数多くが、弾圧を受けたそうだ。

ある程度の地位にあったワンさんのお父さんが家を盗られて、田舎へ追いやられたというのもわかる。

ちょうどワンさんが大学へ行く年齢から、これまで若者は必ず働きに行かなければならなかった農村へ行かなくても良くなり、大学へ行ける様になったそうだ。

そして、勉強のできたワンさんは大学へ行って医師になれたそうだ。

「子どもの頃、とても貧しかったけど、みんな同じだったから、つらいと思った事は無かったです。だから、今でも同じ生活に戻れる自信あります。おかず無くても、ご飯があれば幸せですね」

そう言って笑うワンさんは、前から思っていたが、やっぱり強いなと思った。

遠い昔に歴史で習ったことがある中国の文化大革命。

自分とは、まったく関わりのない遠い世界の話だと思っていたが、当たり前だが、実際に関わって生きてきた人がいたんだというのは、やっぱり衝撃的だった。

ご飯があれば幸せ、、、自分は今そう思えるだろうかと、ちょっと考えてしまった。

 


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