引っ越しをお願いした○帽のおじさんとは、引っ越しをしながら世間話も少しした。
私が榛名神社へ行った時、風が強くて寒かったという話をすると、おじさんは「からっ風は群馬の名物だから」とおっしゃった。
からっ風、つまり赤城山を始めとする山々から強い風が吹き下ろしてくることから、そう呼ばれるようになったのだとか。
さらに「上州名物は、かかあ天下とからっ風っていうんだよ」とも教えてくれた。
「かかあ天下ですか?」と聞くと、群馬県がかかあ天下になった意味も教えてくれた。
諸説あるのかもしれないが、とりあえずおじさんが教えてくれた話はこうだ。
「群馬にはギャンブル場が多かったんだよ。パチンコを始め、競馬場やオートレース場があってね。
男はギャンブルにうつつを抜かすわけ。男がそんなんだから、女は家庭を守るためによく働いてね、必然的に女の人が強くなったんだ」
多分おじさんもギャンブルにハマった口だったのでは?と思ったが、それはもちろん言わず口にしっかりチャック・・・
さて話は飛ぶが、帰りは時間に余裕があり、また窓からの景色が見たかったので、群馬から上野まで新幹線は使わず普通列車で行くことにした。
本当のことを言うと時間のかかる普通列車ではなく、せめて特急にしたかったのだが、列車の時間を事前に調べていなかったので駅員さんに聞くと「今から出る普通に乗るといいです」と言われて、停まっていた普通列車に飛び乗ってしまった。
飛び乗ってしまったのはいいが果たして本当にこの列車でいいのか?上野方面ではなくて長野とか新潟とかへ行く列車だったのではないのか?などなどの不安が頭をよぎりはじめた。
そこで誰かに聞こうと周囲を見回すと、すこし離れた席に60代とおぼしき女性が座っていた。
その女性の所に行って「この列車は上野まで行きますか?」と聞くと「行きますよ」と笑顔で教えてくれた。
やれやれ、ひと安心。
ホッとしながらチェリーと二人で座っていると、先ほどの女性がにこにこしながら近づいてきて「横に座ってもいいですか?」とおっしゃった。
「どうぞ」と言うと、私の横に座って「私も普通列車で行くのは初めてなんです。いつもは新幹線なんですけど、今日は時間があったので普通に乗ってみたんです」と教えてくれた。
列車に乗っている長い時間をおしゃべりがしたかったようで、わざわざ席を移ってこられたようだった。
その女性は群馬の方で、その日は用事があって東京に行くとおっしゃった。
また私も娘の引っ越しで来て、これから帰るところだという話をした。
とても朗らかな方だった。
それぞれの故郷の話、桜の話などの他愛のない話だが、列車に乗っている間、その方とおしゃべりをしてあっという間に時間が過ぎた。
そんな会話の中で、とても印象的なことを女性がおっしゃった。
「運命だと思って一緒になると、石の嵐が吹くことが多いのですよ」
一瞬、なんのことをおっしゃっているのか分からず「石の嵐ですか?」と聞き返すと、「そう。たくさんの小石が混ざった強い向かい風が吹くの。その中を歩かなければいけないから痛いし大変よ」と女性は言った。
たしか私の娘が結婚する年齢になったら・・・というようなことを話していた時に出たお話だったと思う。
もしかしたらこの女性はご自分のことをお話しされているのだろうかと思ったが、すでに女性が降りる駅に列車が入ってしまった。
「からっ風と聞いたら、私のことを思い出してね」
最後に女性はそう言い残して、笑顔で手を振りながら列車を降りて行った。
「かかあ天下とからっ風」
その言葉と一緒に○帽のおじさんの顔が浮かんだ。
そうか、あの女性は「私はかかあ天下よ」と言いたかったのか。
まさかご夫婦ってわけはないでしょうが、群馬で出会った男性と女性のそれぞれから聞いた「かかあ天下とからっ風」の話でした。
私が榛名神社へ行った時、風が強くて寒かったという話をすると、おじさんは「からっ風は群馬の名物だから」とおっしゃった。
からっ風、つまり赤城山を始めとする山々から強い風が吹き下ろしてくることから、そう呼ばれるようになったのだとか。
さらに「上州名物は、かかあ天下とからっ風っていうんだよ」とも教えてくれた。
「かかあ天下ですか?」と聞くと、群馬県がかかあ天下になった意味も教えてくれた。
諸説あるのかもしれないが、とりあえずおじさんが教えてくれた話はこうだ。
「群馬にはギャンブル場が多かったんだよ。パチンコを始め、競馬場やオートレース場があってね。
男はギャンブルにうつつを抜かすわけ。男がそんなんだから、女は家庭を守るためによく働いてね、必然的に女の人が強くなったんだ」
多分おじさんもギャンブルにハマった口だったのでは?と思ったが、それはもちろん言わず口にしっかりチャック・・・
さて話は飛ぶが、帰りは時間に余裕があり、また窓からの景色が見たかったので、群馬から上野まで新幹線は使わず普通列車で行くことにした。
本当のことを言うと時間のかかる普通列車ではなく、せめて特急にしたかったのだが、列車の時間を事前に調べていなかったので駅員さんに聞くと「今から出る普通に乗るといいです」と言われて、停まっていた普通列車に飛び乗ってしまった。
飛び乗ってしまったのはいいが果たして本当にこの列車でいいのか?上野方面ではなくて長野とか新潟とかへ行く列車だったのではないのか?などなどの不安が頭をよぎりはじめた。
そこで誰かに聞こうと周囲を見回すと、すこし離れた席に60代とおぼしき女性が座っていた。
その女性の所に行って「この列車は上野まで行きますか?」と聞くと「行きますよ」と笑顔で教えてくれた。
やれやれ、ひと安心。
ホッとしながらチェリーと二人で座っていると、先ほどの女性がにこにこしながら近づいてきて「横に座ってもいいですか?」とおっしゃった。
「どうぞ」と言うと、私の横に座って「私も普通列車で行くのは初めてなんです。いつもは新幹線なんですけど、今日は時間があったので普通に乗ってみたんです」と教えてくれた。
列車に乗っている長い時間をおしゃべりがしたかったようで、わざわざ席を移ってこられたようだった。
その女性は群馬の方で、その日は用事があって東京に行くとおっしゃった。
また私も娘の引っ越しで来て、これから帰るところだという話をした。
とても朗らかな方だった。
それぞれの故郷の話、桜の話などの他愛のない話だが、列車に乗っている間、その方とおしゃべりをしてあっという間に時間が過ぎた。
そんな会話の中で、とても印象的なことを女性がおっしゃった。
「運命だと思って一緒になると、石の嵐が吹くことが多いのですよ」
一瞬、なんのことをおっしゃっているのか分からず「石の嵐ですか?」と聞き返すと、「そう。たくさんの小石が混ざった強い向かい風が吹くの。その中を歩かなければいけないから痛いし大変よ」と女性は言った。
たしか私の娘が結婚する年齢になったら・・・というようなことを話していた時に出たお話だったと思う。
もしかしたらこの女性はご自分のことをお話しされているのだろうかと思ったが、すでに女性が降りる駅に列車が入ってしまった。
「からっ風と聞いたら、私のことを思い出してね」
最後に女性はそう言い残して、笑顔で手を振りながら列車を降りて行った。
「かかあ天下とからっ風」
その言葉と一緒に○帽のおじさんの顔が浮かんだ。
そうか、あの女性は「私はかかあ天下よ」と言いたかったのか。
まさかご夫婦ってわけはないでしょうが、群馬で出会った男性と女性のそれぞれから聞いた「かかあ天下とからっ風」の話でした。