鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『オレンジとレモン・坂田靖子・著』~爽やかなエロさ・・・。

2012-03-16 22:51:21 | Weblog
穏やかに晴れた金曜日。


坂田靖子さんの作品に出会ったのは、1980年代の後半だった思う。
多分・・・黒目(瞳)を描かなかった最初の少女漫画家さんだったのではないだろうか?

古いところでは、『ベルサイユのバラ』のマリー・ワントワネットを世に送り出した池田理代子さんだとか、もっと古いところでは、『アタックNo.1』の鮎原こずえを描いた浦野千賀子さん(?だったかな)とか、とにかく、少女漫画の主人公達は、瞳に銀河をもっていた。
それも超ド級のキラキラな星だらけの瞳だった。
だから・・・少女漫画の登場人物は、顔の2/3は、瞳で、物語っていた。
それ以外、たぶん、認めてもらえなかったのだろうと思うし、世の中の男性諸兄には、グロテスクに映ったのかもしれないけれど・・・。

いつまでも少女漫画を読んでいたダメな大人の私も、いつまでも少女漫画なんか、読んいるから、人間がダメなんだなよな・・・という自覚のもと、漫画とは、決別(一部を除く)した時代でもあった。
そんな中で、シンプルな描写で、一種、不思議系のどうしても、少女漫画とはある一線を画す・・・或る意味、哲学的な・・・そんな物語の展開をみせる坂田靖子さんに出会った。
一冊か二冊・・・読んだきりで、そのまま、現在に、来てしまったので、出会いは古いけれど、随分、ブランクできてしまった。

この『オレンジとレモン』は、短編集で、テーマは、メンズ・ラブ(ボーイズ・ラブ系とは、どう違うのか、寡聞にして、わからないのだれど)ということらしい。
男性同士の恋愛というか、恋愛でもないのか・・・???やはり、このヘンが、この作家さんの不思議テイスト一杯で、普通とは、ちょっと違うようである。

ちょこっとエロくて、しかも、何故か、爽やか。
お題も『オレンジとレモン』と標榜されているように、柑橘(シトロン)系の爽やかなテイストで、シュワシュワな炭酸水で、柑橘類を食べているようなそんな読後感のある作品集。

ツンデレの王様と妻子ある庭師の紆余曲折の恋(こういう設定を考えつくあたり、普通じゃない)。
扉絵を含めて4ページで完結してしまう摩訶不思議な『召還』、やはり4ページで、登場人物ひとりの『常夜燈』は、かのベケットの『ゴドーを待ちながら』を連想させるし、ハムレットが、ハムレットになるまえの不良王子時代を描いた『鴨池』。修道僧と貴族の息子の物語『それぞれの幸福』など、この少ないページ数で、完全完結してしまえるのは、ひとえに、短編作家としての特出した才能が、物語っている。

爽やかなエロさ・・・を、ご堪能あれ。